17話 獣弾
数は力!
振り返るなんて考えられない。
俺達は開き放しになっていたドアへ飛び込み、ルシルがドアを閉めた。
ドン!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!
大雨がトタン屋根を叩く様な。
鉄パイプでドラム缶を乱打する様な。
決して日常で耳にすることが無いであろう
乱打音が響き、鉄製のドアの全面が一瞬で凹みだらけになる。
「マジか!」
ネズミの体当たりで鉄のドアが凹むだと?
ガタン
ドアポストから音がして揺れる。
そこから入れるのか?
何の躊躇も無くルシルがフルスイングでラクロススティックを振り切った。
鉄の郵便受けがボッコリ凹み血が隙間から飛び散る。
くぐもった嫌な鳴き声が漏れ隙間から血が滴り落ちる。
うお…グロい…
ってかそのスティック何で出来てんだ?
「逃げますよ!」
窓に向かって走る。
部屋に散乱する家具を蹴散らし走る。
後ではネズミの声が聞こえる。
既に凹んだドアの隙間から部屋への侵入が始まっているのだ。
ベランダから躊躇なく電線に足を
かけ、浮かぶボートにまずルシルが飛び乗る。
俺はおっかなびっくり電線に足をかけボートに飛んでしがみついた。
木が裂ける音がして振り向くと床を食い破り何匹かネズミが入りこんで来ている。
同時にドアが内側に倒れ、大量のネズミが氾濫する河の様にこちらに流れこんでくる。
「ルシル、紐切れ!」
俺に言われるまでもなくルシルは既に紐を解いていた。
「せーのおっ!」
俺は電線をルシルはベランダの柵を蹴り飛ばす。
勢いをつけボートは反対側の電線まで流れた。
同時にネズミの群れはベランダに殺到しこちらに飛びかかってくるが届かず空へ。
さらに大量のネズミ達が後ろから押し出されるように下へ落ちていった。
「危ねぇ…」
後ちょっとで骨も残さず食われるとこだった。
「いえまだよ。」
「え?」
ルシルがボートに捕まる俺に向かってスティックをフルスイングしてきた。
殺される…
本気で命を諦めたがスティックは俺の頭の上を横切り鈍い音と共に何かを弾き飛ばした。
「一匹元気な子が届いたみたいですね。」
「命助けてもらっといてなんだけど、俺を見つめながら振り抜くとか止めてね。」
「みっ…見つめてなどいません!」
「なぜテレる?」
見れば迂回しながらも電線を伝いネズミ達は未だにこちらに来ようとしている。
「元来た方へ行くか?」
「いえ、あっちにはカラスがいます。
このままこの通りを抜けましょう。」
「了解!」
俺はボートに這い上がると座ったまま電線を斜めに蹴る。
ボートは再び加速し始め、ルシルはそれにあわせて団扇を扇いだ。
極力通りの真中をキープするように進む。
時折飛びかかってくるネズミもルシルが叩き落とし、残りもまだ追ってこようとするが
電線を進むのは限界があるようで、
徐々に数は減り動きを止め建物に戻り始めた。
「もう大丈夫かな?」
「おそらく…」
俺達はボートの挙動に気を配りつつも
やっと一息ついた。
「ありゃなんだ?俺の知ってるネズミはあんな狂暴なイメージ無いんだが。」
「それにあんな破壊力や生命力がある生き物でも無いでしょうね。」
そーいや首がグリグリ動いてたな。
キモい。
「これじゃこの辺の建物何処も入れないな。」
「別に全部が全部あーでは無いでしょうけどね。リスクは高いです。」
確かにあの数はここら辺のネズミが集まってるからなんだろうが、あーゆー群れが1つとは限らないしな。
「どこか落ち着ける場所は無いのかよ?」
「そうね…一軒家とか住宅街の方が害獣のたぐいは少ないんじゃないでしょうか?」
なんか本質的なことを見落としている気がするが、特に否定する要素はない。
「わかったそうしよう。」
俺達は方針を決めると、この辺で一番大きな住宅街を目指すことにした。
あっ…飯が食えてないんだ…
弱敵のつもりで出したんですが
思いの外主人公達弱いです。
殲滅系の広範囲魔法とか使えるといいんですが
ありません。
とりあえず尻をたたきます。




