表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/31

普通じゃない通常業務

非常に衝撃的かつ、割と大雑把でもあった異世界でのお仕事を終え。

あたしは、いよいよ本格的に会社の業務に携わる事と相成った。


とは言っても、あれから異世界へと赴いた事は一度もない。かれこれ、

3週間は経ってるんだけど。じゃあ何してるのかと言えば、事務仕事。

社内にやっと専用の机が用意され、せっせとデスクワークをしてます。

うーん…


地味だ。


================================


とは言っても、業務内容に関してはやっぱり普通とはまったく異なる。

この間の異世界転生とも地続きの、きわめてファンタジーなお仕事だ。


今にして思い返せば、あの日の仕事は異業種体験と言えるものだった。

要するに、事務の人が営業の仕事に一日だけついて行く…みたいなね。

そこまで明確な区別があるわけじゃないだろうけど、現時点であたしに

ああいう出向系業務は来ていない。まあ、まだまだ経験不足だろうし、

それ以外でマスターすべき事も色々あると思うから、文句は言わない。


そんなわけで、今のあたし。


転生者の事後管理をやってます。


================================


転生者がどんな経緯で発生するか。それは既に柳橋さんから聞いてる。

それぞれの世界の妄想エネルギーが飽和し、一人の人間の中に溜まる。

そうなってしまうと、いずれ世界はその人物「モエビト」を中心として

歪んでいってしまう。大抵の場合はいわゆるダンジョンが世界に現れ、

魔物がうじゃうじゃ湧き出す終末が訪れてしまう。救いが無いなあ。


だからそのモエビトを捜し出して、割と強制的に異世界に転生させる。

このプロセスを経る事で、その人の体内に淀んでいた「モエルギー」は

本人の力として安定して定着する。まあいわゆるチート能力って奴だ。

ひとりの人間が抱えるにはあまりに大きな力だけど、少なくともこれで

世界が歪むような懸念はなくなる。本人も殺されるわけじゃないから、

やむを得ない選択と思えって事だ。まあ、納得するしかないだろうね。


さて、ここでひとつ問題。


当社がこれまでに関わってきた転生者って何人くらいだと思います?

…………………


はい、ハズレ。

正解は、こないだのサラリーマンで312人目になります。その内訳は

男性が267人で、女性が45人。偏ってるなあ。


いや、それより何より。



単純に数が多いな!!


================================


まあ会社として事業化してる以上、そんな人数にもなるんだろうけど。

それにしても多過ぎません?


「まあ、世界は無限に存在しているワケですからねえ」


あたしの疑問に答えてくれたのは、同じく社内勤務が専門の社長。

別に創業者とかではなく、原則的に会社にいる人が社長をやってる方が

何かと都合がいいからって人事だ。だからこの社長ー辻本さんが社内で

いちばん偉い人ってワケじゃない。むしろ全体を仕切るのは柳橋さん。

別に肩書きは重要じゃないんだね。そんなわけで、辻本社長はあたしの

直属の上司、もとい先輩という事になっている。


話が逸れたけど、そんな社長いわく転生者はいくらでもいるんだとか。

と言うか、人間社会が営まれる限りモエルギーは発生し続けるらしい。

それこそ、どこの世界でも同じだ。だから、モエビトも発生し続ける。

うーん…そのプロセスは理解できるけど、それにしても…


「さすがに、ひとつの世界に何人も現れる事はほぼありませんよ」


納得には遠い表情のあたしに対し、辻本さんはそう言いながら笑った。


「適材適所と言うと少し変ですが、受け皿になる世界は必ずあります。

それを管理する仕事の存在は、まあ必然なんですよ」

「そういうもんなんですね」

「はい」


いいや、もう。

今さら並行世界の存在を疑うような段階じゃないし、あると理解すれば

こんな風にあっちからこっちというシステムも何とか受け入れられる。

世界の均衡を保つため、この会社が存在しているんだと考えれば。


うん、有意義なお仕事ですよね。



受け入れて頑張ろうと思う次第よ。


================================


で、現在。

専用パソコンで、転生者が存在する世界の現状管理を受け持ってます。

と言っても、実際にそこに干渉する訳じゃない。把握するってだけね。

あのQRコードの基盤になっている女神ネットワークは、様々な世界の

情報をインターネットブラウザ的な方式で共有している。現地の人には

全く縁のない代物だけど、外部から調査する場合は非常に都合がいい。


ちなみに、それぞれの世界の一部の人間が「ステータスオープン」で

情報を閲覧できるのは、この女神のネットワークにアクセスする権限を

部分的に取得しているからだって。なるほど、だから主人公たちだけが

見れたりするって事なのね。いやあよく出来てますね。


あたしが任されたのは、それぞれの世界の状況を手軽にチェックできる

総合ファイルの作成とその管理だ。以前にいた会社でも似たような事を

やってたからお手のもの。転生者が現在進行形で何をしてるかも含め、

大まかな流れをチェックしていく。単調なデスクワークではあるけど、

扱う情報がぶっ飛んでるから退屈はしない。してる暇がない。それこそ

興味深い情報はいくらでもあるよ。


「あまり根を詰めないようにね」


熱中するあまり、社長に心配される事もしばしばだ。…前の職場では、

そんな助言は一度もなかったなぁ。つくづく転職してよかったと思う。

思うからこそ、ほどほどにしっかり仕事しようと思う次第です。


================================


仕事に疲れたら、休憩がてら検索。これもまたひとつの楽しみだ。


例えば、先日のあの世界で討伐したロックサイクロプス。あの時はほぼ

余裕が無かったから気にしなかったけど、最終的にはあの4体の合計で

368万円になったらしい。いや、高いか安いか全然分からないけど。

ちなみに、現在はレートがちょっと変動している。合計380万円だ。

異世界の討伐報酬がどうして日本の円相場と連動するのか不明だけど、

まあ気にしたら負けですね。会社の維持には十分な金額だったし。


さすがに、対象の異世界を覗き見るような機能はない。ってか、普通に

アウトですよねその行為。異世界と言っても、最低限のプライバシーは

尊重しないとマズい。だから基本、情報はネットワークから取得する。



ネットリテラシーは大切に。


================================


それにしても、まあー多彩な世界があるもんだねホント。


基本的に、今いる世界と変わらない世界を「並行世界」と呼んでいる。

転生者となるモエビトは、原則的にここで発生する。カテゴリー的には

ローファンタジーになるだろうね。

で、明らかに時代や世界観が異なる世界を「異世界」と呼ぶ。もちろん

こっち系の世界が転生者にとっての受け皿だ。ハイファンタジーだね。

剣と魔法とモンスターってのが定番だけど、もっとSF的なのもある。

いずれにせよ、妄想のエネルギーを満タンにして赴くにはもってこいの

ゴキゲンな世界だ。あたし的には、ちょっと永住は遠慮したいけどね。


だけど、いくら世界が無限にあると言っても、受け皿がない事もある。

つまり、転生者の特性にマッチする世界が存在しないというケースだ。

無理にあてがうとすぐに破綻する。じゃあどうすればいいのだろうか。


「その時は新しい世界を創るだけ」


事もなげにそう言い放つ柳橋さんの迷いの無さに、すんなり納得した。

創世神が本当に存在するのならば、時に応じて世界を創るというのも

あり得る話だろう。まあスケールがでか過ぎて、想像も出来ないけど。

実際、管理物件の中にはそういった創造世界もいくつか含まれていた。


モエビトが転生をするためだけに、新しい世界が創られる。創作として

ありがちな展開だけど、いざ実際に成されていると考えるとビビるよ。

自分もそうして生まれたのかもと、無意味な心配をするのもまた一興。

ま、気にしても仕方ないからね。


だけど、そういうカスタムメイドの天地創造ってのも興味あるなあ。

さすがに現地で観てみたいとまでは言いませんけど、プロセスくらいは

見せてもらえないかしら…



そんな益体もない願いは

ある日、あっさり実現した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ