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女神さまとの休日

いい天気だ。


先週の日曜は、異世界ミナの救出に奔走していたっけ。…何だかもう、

かなり過去に思える。この一週間はけっこう平穏だった。ミナに仕事を

依頼する事もなかった。正直言って助かった。勝手かも知れないけど、

少なくとも今週はあまり顔を見たくなかったから。


…うん、勝手だね。

頼まれてもいないのに彼女の世界を探して、その結果にガッカリして。

挙句顔を見たくないなんて、彼女が聞いたら間違いなく怒るだろうな。

何やってんだろうとは思う。

独善と言われれば反論できないし、自己満足と言われても同じだろう。

だけどどうしても、ご家族の心情を思うと割り切る事ができない。


だからこそ、休日を持て余してる。

柳橋さんやリプネリスさんからの、か細い手がかりの連絡を待ってる。



何やってんだろうなあ、あたし。


================================


そろそろお昼の献立考えようかなと思い、のろのろとソファーの上で

身を起こしたその時。


ピンポーン!


チャイムが鳴った。

あれ珍しいな、休日なのに。何か、急ぎの宅配とかだろうか。ってか、

もしかして何か頼んだの忘れてた?そこまでボケてたかしらあたし?

履けなかったスリッパをあきらめ、あたふたとインターホンに向かう。


「はい、どちらさま?」

『うっしみっつちゃぁぁん!』

「へ?」


間抜けな声を上げた瞬間、あたしはモニターに釘付けになっていた。

どう見ても日本の玄関に似合わぬ、荘厳な出で立ちの金髪美人。


どっから見てもリプネリスさんだ。



いや、何やってんのこの人は!?

…もとい、この女神は!?


================================


最初から玄関サンダルをあきらめ、転げるようにしてドアを開けた。

いくら何でも、限度ってもんが…!


「はあい、こんにちは!」


そこに立っていたのは

人間形態のリプネリスさんだった。黒髪の美人さんである。

…いや、え?でもさっき…


「あ、あの、インターホン…」

「あー、あの画面にだけ本当の姿が映るようにしたの。びびった?」

「それはその…まあ…はい」


力が抜けてしまった。


何なんだよもう、この人は。

いや、この女神は。


「サプラァイズ。大成功!」


にこやかな笑顔を向けられ。

あたしは。



怒る気にもなれなかった。


================================


「お邪魔しまーす」

「どうぞ…」


言ってから気付いた。

前もこんな来訪があったなと思ったけど、あれは並行世界の家だった。

つまりリプネリスさんがあたしの家に来たのは、今日が初めてだった!


しまった油断してた!

ってか勘違いしてた!


「あの、ちょっと待っ」

「わー、丑三ツ邸初来訪だ!」


あ、手遅れ。

…まあいいや。



似るなり焼くなり好きにしてくれ!


================================


「それで今日は、どういった…」


熱いマテ茶を出しながら、あたしはふと口調をあらためた。


「もしかしてまた、ミナの世界が」

「いやいや、今日は違う。あれも、そうそう見つからないからさ」

「…ですよね」


さすがにがっつき過ぎたみたいだ。

いや、これでいちいち落胆してたら身が持たない。もっと割り切って…


「せっかくの休日だし、ちょぉっとお出かけにつき合って欲しくてね」

「お出かけ?」


意外過ぎる言葉に、ポカンとした。女神とのお出かけって、つまり…


「…どこか他の世界にですか?」

「そうそう、話が早くて助かるよ」


そう言いながら、リプネリスさんは嬉しそうに笑った。


「ちなみに、どちらに?」

「実は少し前、友だちとの雑談の中であなたの話題がちょっと出てね」

「お友だち…ですか」


どういう友だちなのかが気になる。…やっぱり神さま系だろうか?


「若くて可愛い日本人の女の子って言ったら、ガッツリ食いついてさ」

「え」

「んじゃ、是非とも連れて来てよ!という話になったってワケ」

「いや、あのう」

「向こうはめっちゃ楽しみにしてるから、もう早い方がいいと思って」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」


押しの強い説明を何とか食い止め、あたしはぶんぶんと手を振った。


「日本人ってところはいいとして、そんなハードル上げられると困り」

「いいじゃない可愛いんだし」

「だからッ!」


どう言えばいいんだろうか、これ。

あたしは別に不細工じゃないけど、限りなく地味な見てくれの人間だ。

謙遜でも何でもない。ごく客観的な基準で考えて、納得する結論です。

間違っても「可愛い」と形容すべき人間じゃないんですホントです!!

勝手にそこまでハードル上げられて平気な顔できるほど、図太くない!


「まあまあそこは気にしないで」


相変わらずにこやかな女神。いや、気にしてないのはあんたですやん!


「見た目の話じゃない。とにかく、あなたに会いたいって人がいるの」

「そ…うですか」

「お見合いしろ!とか言ってるわけじゃないし、心配しなくていいよ。

ちょっと茶飲み話したいってだけ」

「…それなら別にいいですけど」

「よし!んじゃ早速行こうか!」

「えっ?」


突然立ち上がったリプネリスさん。…いや、今からすぐにですか!?


「ホラホラ、靴持ってきて!」

「く、靴って…」


つまり外に出ず、このまま室内から異世界へ向かうつもりなのか。

何と言うか、女神だと手順の省略が実にダイナミックで困惑するなあ。

いやいや、そうじゃない。


「あの、出かけるんなら着替えを」

「いいよいいよそのままで」

「それはさすがに…!」


今あたしが着てるの、普段着全開のパーカーである。いくら異世界でも

こんな格好で行くのは抵抗がある。これでも社会人なんですから…!!


「いや、むしろそんな普段着の方が喜ばれるよ。等身大って感じでね」

「………」


等身大のあたしを喜ぶ相手って一体誰だ。正直、想像もつかないです。


だけどまあ、ゴネても仕方がない。リプネリスさんもそんなつまんない

嘘は言わないだろうし。

とにかく、ズボンだけ履き替えた。最低限の外出用ジーンズです。

後はええっと…


「お土産に、駅前でマドレーヌでも買っていきましょうか?」

「あ、それは大丈夫。お土産の類は途中で寄り道して買い揃えるから」

「寄り道?」

「って言うか『寄り世界』だね」

「はぁ…」


つまり目指す世界へ行く前に、また別の世界に寄ってお土産買うのか。

ダイナミックというか何というか、いろんな常識がマヒしてしまうよ。

…何だか、おかしくなってきた。


「お、笑ったね丑三ツちゃん」

「いえ別に」

「んじゃ行きましょう!!」

「はあい」


うん。

もうここまで来たら、あれやこれや振り回されるだけ損ってもんだね。

どうせやる事もない休日。せっかくわざわざ家まで来てくれたんだし、

あたしも明るく臨まないと。


キュイン!!


並んで立つリビングの床に、青色の魔法陣が現出した。そして次の瞬間

視界が真っ白になる。この感覚は、社用車による転移では味わえない。

圧倒的な異世界転移のパワーです。



さあ、まずはレッツ寄り世界!!

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― 新着の感想 ―
お疲れ様です、骨身を惜しまずは3回読みましたが、この作品も間違いなく複数回読むと思います。何処にもない内容で凄く毎日楽しみにしています、登場人物皆に凄く愛着がわきます読ませてもらって勝手言いますが頑張…
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