↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
59/83

そんな結末もアリか

裕里!

速く支度しなさいってのに!!

友理奈ちゃん待ってるわよ!!


ゴメンゴメーン!

行ってきまーす!!


ちょっと!ハンカチハンカチ!


ああっそうだった!ごめんママ!

んじゃ行ってきます!


はいはい。

騒がしいんだからもう。


ゴメンゴメン、寝坊しちゃった。


またぁ?

ひょっとして、また恐竜映画?


んー、まあね。

海外の未翻訳作品が手に入ってさ。

じっくり観てたら、ほぼ徹夜よ。


威張って言う事じゃないでしょ。

どうしてそこまで恐竜が好きなの?


さあ、こればっかりは分かんない。

小っちゃい頃からずっとだからね。


色気がないなあホントに。

彼氏できないよ?


いいのいいの色気なんて。

あたしはあなたと結婚するから。


ちょいちょい!

結婚ってか、ヒモ宣言でしょそれ?


あ、バレた?


いいからもう。走るよ!


あー、待ってよ友理奈ぁ!!


……………


================================

================================


「…いま何て言いました?」


訊き直さずにはいられなかった。

目の前の平手さんからの言葉を。

だけどその表情も口調も、限りなく正気そのものだった。


「わしもご一緒したいと」

「つまり、信長と一緒に転生?」


まったく遠慮のないミナの言葉に、平手さんは迷いなく大きく頷いた。

聞き間違いでも何でもない。そこに翻意の気配も全く感じない。



この人、本気だ。


================================


「このまま若が行方知れずになるとすれば、傅役であるわしはその科で

腹を切る事になるでしょう。それはもう、是非もない事なのです」

「それはその…」

「本当に行方知れずになったなら、なおのこと是非もない。しかし若が

遠い世界に赴いたと知る身で、腹を切っても意味がない。それならば、

ご一緒するのがわしの務めです」

「…………」


返す言葉が思いつかなかった。

確かに嫡男である信長が行方不明となれば、責任は全てこの人が負う。

切腹も当然の差配だろう。だけど、自刃したという伝承が残る人だけに

何とも言えない重みがある。

結局、この人の運命はそういう形で帰結するのかと。


だけど。

一緒に転生って、それいいのかな?


『ま、前例が無いわけじゃないよ』


リプネリスさんはあっさりしてる。いや、そんな簡単に決めていいの?


「本当にいいんですか?」

『大勢でと言われると厳しいけど、一人くらいどうとでもなるって事』

「いいんだ…」


大らかだなあ、転生のシステムは。まあ過去の改変とかじゃないから、

人が一人消えるくらい大した問題にならないってのは分かるんだけど。


「よろしいか?」

「ええ、まあいいみたいです」

「かたじけない!」


深々と頭を下げる平手さんの姿に、侍の忠心を垣間見た気がした。

予想外の展開ではあるけど、本当にそうするのなら応援したいよね。


『じゃあ、何か要望ってあります?親子になりたいとか、そういう…』

「可能であれば、わしもおなごに」

『へ?』

「へ?」


スマホの向こうのリプネリスさんと間抜け声がきれいに重なった。

ミナもあいちゃんも、目が点だよ。そんなあたしたちの動揺や困惑など

一顧だにせず、平手さんは告げる。


「同じ齢くらいのおなごであれば、若を長く見守ってゆけるでしょう。

男ではどうしても、傍にいる事への理由が必要になりますゆえ」

「ええー……」


どんな気持ちで聞けばいいんだこの決意宣言は。理解を超えてるよ。

ミナもあいちゃんも同じく、表情と感情が完全に行方不明になってる。


挿絵(By みてみん)


献身って、こういうのを言うのか。さすがは戦国の忠臣と言うべきで…


『キマシタワー!』


いらん事ほざくな女神!!

ああもう!

そんな風に見ちゃうじゃんかよォ!

いろんな意味で台無しだっての!!


…いいや、もう。

世界の崩壊が防げるのなら、多少のあれこれは黙ってスルーしよう。

うん、そうしよう。



後はよろしく、リプネリスさん。


================================



『あ、バレた?』

『いいからもう。走るよ!』

『あー、待ってよ友理奈ぁ!!』


………


「仕事中に何やってんのかしらね、丑三ツちゃん?」


背後から声をかけられたあたしは、ゆっくりと振り返った。そこには、

意味ありげに笑う柳橋さんがいた。


何日ぶりかのデスクワークである。

あたしはパソコンモニターで、ある映像に見入っていた。そこには、

仲良し女子高生二人の姿があった。


「もしかして、百合ゲーに目覚めてプレイしてたとか」

「いや違うって!」

「いいねえ、そのツッコミ気質!」


何だか久々だなあ、こういう益体のないやり取り。

ついこの間の戦国時代が、とっても遠い記憶に思えてしまう。


「アフターケアの一環ですよ」

「覗き見が?」

「そうです」

「開き直ってるねえ」

「心配なのは事実ですから」

「はは、いい心がけだねぇ」


そこで柳橋さんは、愉快そうに笑いモニターに目を向ける。


「で、これが信長なのよね。んで、こっちのお友だちが…」

「平手政秀さんです」

「仲良さそうだねえ。記憶なんて、ほとんど残ってないだろうに」

「愛の成せるわざですよ」

「へー…」


開き直ったあたしのそんな即答に、柳橋さんもちょっと目を見開く。

こういうのは引いたら負けですよ。確かにアレな結末ではあるけれど、

平手さんの献身は本物なんだから。幸せになってくれればそれでいい。


「染まってきたね丑三ツちゃん!」

「自分でもそう思います」

「何よりです!」


嬉しそうに言い放った柳橋さんは、そのまま笑顔で席に戻っていく。

あたしも笑っていた。


初めての織田信長案件だったけど。

初めてのチームの出向だったけど。

まずまずの結果は出せたと信じる。


元の世界はそれなりに大変だろう。信長の失踪と恐竜の出現。控え目に

言って、まだまだ被害も出るだろうと思う。これはどうしようもない。

あたしたちが干渉すべき事でもないだろうし、頑張ってと願うだけだ。


裕里ちゃん。

友理奈ちゃん。



存分に青春してくれたまえ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。