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20/32

やっぱりSSランク

さて。

そんなこんなで、やって来ましたよゴブリンの森。展開速いなあ。

まあ、20時間限定だもの。余計な事をやってる時間はないって話だ。

貧乏なツアー旅行みたいになってるけど、せっかくの異世界ですから。

あまり引っかき回さないレベルで、見聞を広げようと思った次第です。


あたしって、社員の鑑かもね。


================================


探すほどもなく、冒険者ギルド的な斡旋施設はすぐに見つかりました。

聖女召喚の世界とはいえ、基本的な立て付けはどこも同じって話よね。

多様性の乏しさを嘆くよりは、今の自分には好都合だと喜んでおこう。

うん、前向き前向き。


さらに都合のいい事に、この街では冒険者登録の手続きが不要だった。

自己責任が徹底されているらしく、誰でも自由に仕事が受けられる。

もちろん怪我したり死んだりというリスク込みですね。お金をかければ

保険らしきものはかけられるけど、原則的にギルドは責任を負わない。

まあ何と言うか、下手にランク付けするよりよっぽど現実的だろう。

ああいう評価ってどうしても主観が混ざるし、あてにならないからね。


いかに自分の技量を正確に見極め、見合ったラインの仕事を受けるか。

そんな客観性も、冒険者には必要なスキルって事でしょうね。



地に足のついた、いい異世界だよ。


================================


…などと、偉そうに語ってますが。

じゃあお前はその見極めはどうだと聞かれると、全然自信ないですね。


そもそもあたし、本職はOLです。仕事も事務系がメインですので。

QRコード操作で最強クラスの力を得ただけのデタラメチート仕様は、

まだまだ全然使いこなせていない。使う機会もほどんど巡って来ない。

日々の鍛錬で実力を磨いてる本物の冒険者さんには、頭が上がらない。

すみません本当に。


そうは言っても、何もしないというワケにはいかない。ここに来た以上

それなりの依頼をこなして、お金を稼ぐところまでは行きたい。んで、

ちょっと買い食いをしてみたい。

ささやかではあるけど、とりあえずそれをミッションとして己に課す。

そのくらいなら、後から柳橋さんに怒られたりはしないだろう。

何事も経験です。特にこんな仕事をしている以上はね。さあ前向きに。


ええと、とりあえず討伐依頼はと…うん、あったあったゴブリン退治。

森のゴブリンが増えすぎて、街道で人を襲う事件が頻発してるらしい。

個々の脅威は大した事ないものの、とにかく数が多いのが難点だとか。

つまり、討伐にはそれなりの規模のパーティー編成が必要…って事だ。


ちょうどいいじゃないですか。

狩った数に応じて報酬が出る完全な歩合制だから、やり過ぎとかそんな

疑念を抱かせる心配がない。何なら怪しまれない分だけ持ち帰るという

選択肢もあるだろう。ゴブリンなら腕試し相手に最適。無理なようなら

即行で逃げましょう。うん、決定。


思い立ったらすぐ赴けるのも、この街の討伐発注システムのいい所だ。

ゴブリンは害虫駆除みたいな不特定多数の駆除対象だから、特定個人が

根絶させ得るような相手じゃない。増えては減らし、増えては減らしの

繰り返しだ。だからいちいち討伐に向かうと手続きをする必要がない。

不正が横行しそうなシステムだとは思うけど、そこは対策してるよねと

信じるだけ。あたしには関係ない。


いざ行かん、ゴブリンの森へ!



そして、今に至ります。


================================


挿絵(By みてみん)


いや、多いって。


1体も見つけられず帰ってくる事もあるらしいのに、何なのこの数は。

変なフェロモンでも出てるんですかこの姿は。人間にモテた事なんて、

これまで一度もないってのに…


「グギィィィィッ!!」


ギィン!


嘆く間もあればこそ、最前列にいた個体が一気に襲い掛かってきた。

あえてそれをかわさずに、かざした手のひらで長い爪の刺突を受ける。

パキンという小さな破壊音と共に、目の前に尖った破片が舞い散った。


「ギイィィィッ!?」


飛び離れたゴブリンの指先の爪は、1本残らず折れてしまっていた。

何の感触もなかった。予感を抱いて手のひらを返すと、刺し傷はおろか

何かが触れた跡すらもない。ああ、やっぱりこんな結果になりますか。

…何となく肌感で分かってたけど、あのロックサイクロプスと比較して

はるかに弱い。いやゴブリンだから当然なんだけども、手応えからして

マトモな戦いにならないというのは確信できてしまった。

SSランク、伊達じゃない。


じゃあ、どうしようかしら。

とりあえず…


「火球!!」


ドオォォォォォォォォン!!


無詠唱かつノータイムで飛び出したでっかい火の玉が、ゴブリンたちを

容赦なく呑み込む。悲鳴すらなく、あっという間に何体ものゴブリンが

物言わぬ消し炭になっていく。


いや、もういいって!

消えてってば!



あーもう、状況のバランス悪い!!


================================


鬱蒼としていた木の梢が、きれいな円形で奥まで吹っ飛ばされていた。

念じた事により火球は消えたけど、ほっとけばどこまで飛んだんだろ。

考えるのも怖い。


そしてゴブリンは、見渡す限りでは半分以上が焼失してしまっていた。

ってか、ここまで焼いたら討伐した証明ができないじゃん!下手かよ!


「ギイィィィィィアァ!!」


おっと。

これほどのジェノサイドを目にした直後でも、残りのゴブリンたちには

逃げる気配がない。そのメンタルは見習いたい。そして都合がいい。


とは言え、何事にも限度がある。

あたしが今、倒していいゴブリンの個体数は、見えてる限りが上限だ。

全滅させるのは論外だし、そもそも同業者に対する配慮も必要だろう。

あくまでもこれは仕事なんだから。魚でもキノコでも、取り尽くしたら

絶対に深刻な問題が生じる。


どんな結果に終わろうと、目の前のゴブリンを一掃した時点で終了だ。



よし、じゃあ別の手で行こう。


================================


にらみ合いの時間は短かった。


「ギイィッ!!」


多重音声の声が重なり、木の枝から飛び降りた数体が、異なる方向から

一斉に襲い掛かってくる。なるほど狙いを絞らせないか。いい手だね。

じゃあ…


「空斬!!」


ザシュッ!!


雑な掛け声と共に手を横に振ると、軌道の延長上の空間が「切れ」た。

襲い来たゴブリンの体が両断され、ついでに背後の木も切れて倒れる。


ドオォォォォォォォォン!!


ただでさえ火球で削れていた木が、まとめて倒れた事で視界が開ける。

鬱蒼としていたはずの目の前の空間が、いつの間にか明るく開けてる。


…いや、自然破壊だこんな暴挙は!ってか、両断もやり過ぎだっての!

ええっと、残りは…10体か。あ、さすがに逃げ腰になっちゃってる…


どうすんのコレ。消し炭と両断じゃ持ち帰るのキツイ。どうにかして、

原形保ったまま倒さないと…って、ちょっと待って逃げるなオイ!

ええいままよ!


「れ、レーザービームっ!!」


キュイン!キュイン!キュイン!


あ、出た。

当たった。

落ちた。


いや、あんな雑な指示でもきっちり発動するの、魔術って?



SSランク、恐るべしである。


================================


自然破壊とジェノサイドの結果。

どうにか10体分のゴブリン確保。これを戦果として持ち帰ろう。


キュイン!


これまた定番の収納魔法発動です。いやあ、まさかこれを使えるとは。

ただし容量制限がある。設定だと、きっちり10tが限度なんだとか。

無限でないあたりちょっとリアル。まあ10tも大概ぶっ壊れだけど。

あと、内部の時間停止という性能も未実装だ。ほっといたら腐ります。

だから早く持って帰らないとね。


いずれにせよ、これで状況終了だ。…ハッキリ言って、雑でしたよね。

命がけの戦いなら体裁など気にしてられないだろうけど、あたしの場合

攻撃されてもケガすらしないというチート設定。だったらもうちょっと

スマートにやれよと思ってしまう。……うん、反省して後に活かそう。

何事も経験だ。


復元魔法も時間逆行魔法も使えないから、荒らした森はそのままです。

後で来た人からすれば、謎の魔物が暴れた跡に見えるんだろうなあ…。

すみません、大目に見て下さい。



さ、冒険者ギルドに戻りましょう。

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