やっぱりSSランク
さて。
そんなこんなで、やって来ましたよゴブリンの森。展開速いなあ。
まあ、20時間限定だもの。余計な事をやってる時間はないって話だ。
貧乏なツアー旅行みたいになってるけど、せっかくの異世界ですから。
あまり引っかき回さないレベルで、見聞を広げようと思った次第です。
あたしって、社員の鑑かもね。
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探すほどもなく、冒険者ギルド的な斡旋施設はすぐに見つかりました。
聖女召喚の世界とはいえ、基本的な立て付けはどこも同じって話よね。
多様性の乏しさを嘆くよりは、今の自分には好都合だと喜んでおこう。
うん、前向き前向き。
さらに都合のいい事に、この街では冒険者登録の手続きが不要だった。
自己責任が徹底されているらしく、誰でも自由に仕事が受けられる。
もちろん怪我したり死んだりというリスク込みですね。お金をかければ
保険らしきものはかけられるけど、原則的にギルドは責任を負わない。
まあ何と言うか、下手にランク付けするよりよっぽど現実的だろう。
ああいう評価ってどうしても主観が混ざるし、あてにならないからね。
いかに自分の技量を正確に見極め、見合ったラインの仕事を受けるか。
そんな客観性も、冒険者には必要なスキルって事でしょうね。
地に足のついた、いい異世界だよ。
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…などと、偉そうに語ってますが。
じゃあお前はその見極めはどうだと聞かれると、全然自信ないですね。
そもそもあたし、本職はOLです。仕事も事務系がメインですので。
QRコード操作で最強クラスの力を得ただけのデタラメチート仕様は、
まだまだ全然使いこなせていない。使う機会もほどんど巡って来ない。
日々の鍛錬で実力を磨いてる本物の冒険者さんには、頭が上がらない。
すみません本当に。
そうは言っても、何もしないというワケにはいかない。ここに来た以上
それなりの依頼をこなして、お金を稼ぐところまでは行きたい。んで、
ちょっと買い食いをしてみたい。
ささやかではあるけど、とりあえずそれをミッションとして己に課す。
そのくらいなら、後から柳橋さんに怒られたりはしないだろう。
何事も経験です。特にこんな仕事をしている以上はね。さあ前向きに。
ええと、とりあえず討伐依頼はと…うん、あったあったゴブリン退治。
森のゴブリンが増えすぎて、街道で人を襲う事件が頻発してるらしい。
個々の脅威は大した事ないものの、とにかく数が多いのが難点だとか。
つまり、討伐にはそれなりの規模のパーティー編成が必要…って事だ。
ちょうどいいじゃないですか。
狩った数に応じて報酬が出る完全な歩合制だから、やり過ぎとかそんな
疑念を抱かせる心配がない。何なら怪しまれない分だけ持ち帰るという
選択肢もあるだろう。ゴブリンなら腕試し相手に最適。無理なようなら
即行で逃げましょう。うん、決定。
思い立ったらすぐ赴けるのも、この街の討伐発注システムのいい所だ。
ゴブリンは害虫駆除みたいな不特定多数の駆除対象だから、特定個人が
根絶させ得るような相手じゃない。増えては減らし、増えては減らしの
繰り返しだ。だからいちいち討伐に向かうと手続きをする必要がない。
不正が横行しそうなシステムだとは思うけど、そこは対策してるよねと
信じるだけ。あたしには関係ない。
いざ行かん、ゴブリンの森へ!
そして、今に至ります。
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いや、多いって。
1体も見つけられず帰ってくる事もあるらしいのに、何なのこの数は。
変なフェロモンでも出てるんですかこの姿は。人間にモテた事なんて、
これまで一度もないってのに…
「グギィィィィッ!!」
ギィン!
嘆く間もあればこそ、最前列にいた個体が一気に襲い掛かってきた。
あえてそれをかわさずに、かざした手のひらで長い爪の刺突を受ける。
パキンという小さな破壊音と共に、目の前に尖った破片が舞い散った。
「ギイィィィッ!?」
飛び離れたゴブリンの指先の爪は、1本残らず折れてしまっていた。
何の感触もなかった。予感を抱いて手のひらを返すと、刺し傷はおろか
何かが触れた跡すらもない。ああ、やっぱりこんな結果になりますか。
…何となく肌感で分かってたけど、あのロックサイクロプスと比較して
はるかに弱い。いやゴブリンだから当然なんだけども、手応えからして
マトモな戦いにならないというのは確信できてしまった。
SSランク、伊達じゃない。
じゃあ、どうしようかしら。
とりあえず…
「火球!!」
ドオォォォォォォォォン!!
無詠唱かつノータイムで飛び出したでっかい火の玉が、ゴブリンたちを
容赦なく呑み込む。悲鳴すらなく、あっという間に何体ものゴブリンが
物言わぬ消し炭になっていく。
いや、もういいって!
消えてってば!
あーもう、状況のバランス悪い!!
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鬱蒼としていた木の梢が、きれいな円形で奥まで吹っ飛ばされていた。
念じた事により火球は消えたけど、ほっとけばどこまで飛んだんだろ。
考えるのも怖い。
そしてゴブリンは、見渡す限りでは半分以上が焼失してしまっていた。
ってか、ここまで焼いたら討伐した証明ができないじゃん!下手かよ!
「ギイィィィィィアァ!!」
おっと。
これほどのジェノサイドを目にした直後でも、残りのゴブリンたちには
逃げる気配がない。そのメンタルは見習いたい。そして都合がいい。
とは言え、何事にも限度がある。
あたしが今、倒していいゴブリンの個体数は、見えてる限りが上限だ。
全滅させるのは論外だし、そもそも同業者に対する配慮も必要だろう。
あくまでもこれは仕事なんだから。魚でもキノコでも、取り尽くしたら
絶対に深刻な問題が生じる。
どんな結果に終わろうと、目の前のゴブリンを一掃した時点で終了だ。
よし、じゃあ別の手で行こう。
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にらみ合いの時間は短かった。
「ギイィッ!!」
多重音声の声が重なり、木の枝から飛び降りた数体が、異なる方向から
一斉に襲い掛かってくる。なるほど狙いを絞らせないか。いい手だね。
じゃあ…
「空斬!!」
ザシュッ!!
雑な掛け声と共に手を横に振ると、軌道の延長上の空間が「切れ」た。
襲い来たゴブリンの体が両断され、ついでに背後の木も切れて倒れる。
ドオォォォォォォォォン!!
ただでさえ火球で削れていた木が、まとめて倒れた事で視界が開ける。
鬱蒼としていたはずの目の前の空間が、いつの間にか明るく開けてる。
…いや、自然破壊だこんな暴挙は!ってか、両断もやり過ぎだっての!
ええっと、残りは…10体か。あ、さすがに逃げ腰になっちゃってる…
どうすんのコレ。消し炭と両断じゃ持ち帰るのキツイ。どうにかして、
原形保ったまま倒さないと…って、ちょっと待って逃げるなオイ!
ええいままよ!
「れ、レーザービームっ!!」
キュイン!キュイン!キュイン!
あ、出た。
当たった。
落ちた。
いや、あんな雑な指示でもきっちり発動するの、魔術って?
SSランク、恐るべしである。
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自然破壊とジェノサイドの結果。
どうにか10体分のゴブリン確保。これを戦果として持ち帰ろう。
キュイン!
これまた定番の収納魔法発動です。いやあ、まさかこれを使えるとは。
ただし容量制限がある。設定だと、きっちり10tが限度なんだとか。
無限でないあたりちょっとリアル。まあ10tも大概ぶっ壊れだけど。
あと、内部の時間停止という性能も未実装だ。ほっといたら腐ります。
だから早く持って帰らないとね。
いずれにせよ、これで状況終了だ。…ハッキリ言って、雑でしたよね。
命がけの戦いなら体裁など気にしてられないだろうけど、あたしの場合
攻撃されてもケガすらしないというチート設定。だったらもうちょっと
スマートにやれよと思ってしまう。……うん、反省して後に活かそう。
何事も経験だ。
復元魔法も時間逆行魔法も使えないから、荒らした森はそのままです。
後で来た人からすれば、謎の魔物が暴れた跡に見えるんだろうなあ…。
すみません、大目に見て下さい。
さ、冒険者ギルドに戻りましょう。




