35.
「なんで!なんでよ!!アイツらは厄災を全て貴方のせいにして貴方を殺そうとしたのよ!!?」
「君はともかく、人間達にとって俺の力は脅威だったのだろう。仕方がない事だ。むしろもっと早くに距離を置くべきだったんだ」
「違う違う違う!!悪いのは全部人間よ!!私もゼノスも悪くなんてないもの!!!今の私の行動は間違ってなんかない」
「いいや、間違っている。傷付けられたからと言って、同じ様に傷付けようとするのはおかしい」
あまりにも予想外の事態に、クロエはすぐにこの状況を理解できなかった。
男神が女神を止めようとしている?女神の記憶を見た時、人間側がした酷い所業に、クロエも同様酷い怒りを覚えた。実際に経験した者ではなくても、傍観者としての立場でも憤ったのだ。当事者であれば、その感情は計り知れないだろう。
だから確実に男神も人間を恨んでいると思っていたのだ。
「…………も――め」
「……フローリア?」
「偽物め!!貴方はゼノスじゃない。偽物よ!依り代の人間がそう言わせているんでしょう!!?」
「フローリア、俺は本物だ」
「ああ、ゼノス……すぐに救い出してあげるから」
「フローリア!!」
女神が男神に向かって大きな雷を落とす。
救い出すといいつつ、完全に殺すような動きだった。しかし男神側は女神を傷付けないように気遣ってか、ただ防御するのみ。
神であるからこその強大な災害級の攻撃が生みだされ続ける。クロエは避けるだけでも魔力を消耗したが、男神の方は息すら上がっていない。まるで攻撃が当たらないのが当たり前のような顔でそこに立っていた。
男神の方が強い。それはすぐに察せられた。しかし強いからこそ、反撃出来ないのだろう。
これを好機と喜んで、リオンを開放するために男神を攻撃すれば良いのか、それとも男神に味方をしてサポートをすればいいのか分からなかった。
「フローリア!俺は君にこれ以上罪を重ねてほしくないんだ」
「うるさいうるさいうるさい。ゼノスは私のしたことを褒めてくれるはず、私は貴方のためにずっと頑張ってきたんだから」
「……フローリア」
男神の心は女神に届かない。それどころか女神は段々と黒い瘴気のようなものを濃く出し始めていた。
伝えたいのに、伝えられない、伝わらない。
なんだかまるでクロエ自身を見ているようで、歯痒かった。とにかくじれったく感じたのだ。
だから口と手を出してしまった。
「そこの男神!私がフローリアの動きを止める。貴方、女神を説得するんでしょう!!?」
「君は、フローリアの……ああ、頼む!」
男神との奇妙な共闘が始まった――。




