2-10話 その星は世界樹に愛されて
「マジかよ。アシュルリヒター、倒しちまった」
呆然としているシャルを見ていると、アシュルリヒターだった灰をステラが掬い上げた。
「む~、ソルさん素材」
「無茶言うな、これでもいっぱいいっぱいだったんだ。灰が残っただけでもよしとしよう」
しかしその灰も風に吹かれて空に舞っていく。
これでアシュルリヒターがいたということも証明できなくなったか。
さて、これはどう報告すべきか考えていると、シャルとアンナが俺とステラを呆れたように見ていた。
「いや、ステラちゃん? 説明してもらっていいかな」
「え?」
ニコと可憐に微笑むステラに、アンナが耳を立て指差した。
「あ~っ、はぐらかす気だぁ。ウチに黙って課題を有利に進める気だなぁ」、
「あっ、アンナちゃんはちょっと黙ってようか」
そんなやり取りをする2人に、ステラがおかしそうに笑っている。そろそろ俺も参戦するか。
「シャル、ステラの力を聞いてどうするつもりだ? 別にちょっとすごい錬金術師というだけだろう」
「ちょっとすごいの範疇を超えてんのよ。いや、俺も別にステラちゃんの力を言いふらすつもりもないし、それでどうこうしようなんて考えているわけじゃない。ただ知らないと、俺はこれからステラちゃんについて問われた時、なんて答えればいいんだよ」
「なるほど確かにそれはそうだな。俺なんてこの間教師たちから聞かれた時、さんそって連呼しておいたぞ」
「こえぇよ!」
シャルの言う通り、口裏を合わせるために情報は持っておきたい気もするが、まあそれはステラ次第だろう。
俺がそっと彼女に目をやると、ステラは微笑み、傍にあった岩に腰を下ろし杖を振った。
「以前から、アンナにはクラスはなにかと聞かれていましたね」
「うん、だってステちゃん、明らかに天道一段のスキル使ってたことあったし、でも確か学校には人道四段って言われてるしで、気になってたんだよ」
「あら、アンナの前で使ったことなんてありましたっけ?」
「爆弾作ってた時だよぅ。あの時ステちゃん、面倒ですねとかって言って素材の力、ブーストしてたじゃん」
「あ~……あまりにも時間がかかって眠かったからつい使ってしまった時ですね」
うん? 学園では人道四段。ステラの言い方ではそうではないようだが、それなら一体どうやってごまかしているのか。
シャルも同じ疑問を抱いたのか、ステラに目をやっていた。
「あっ、別に僕自身がごまかしているわけではないのですよ。学校が勝手に、いえ教会もですが、勘違いしているだけなので」
「勘違い?」
「はい、正確には既存のクラス判別道具では僕のクラスを測定できない。です」
俺もシャルもアンナも首を傾げると、ステラがポシェットから手作りだろうパンを幾つか取り出し、俺たちに手渡すと、水筒から人数分のカップに茶を注ぎ淹れた。
「クラスとは文字通り、僕たちのジョブが所属する組み分けです。その人の才能、その人の素質、それによって決定付けられるもの。今あるクラスを判別する道具は、簡単に言うとその教室にいるその人を測定し、この教室にいるからこのクラス。と、観測することでクラスを判別しています」
「つまり後出しなわけだな? このクラスにいるからお前はこのクラス。と」
「はい、それでジョブを発現させるとき、もちろん僕は何のクラスかわかっていません。でも今にして思えば、あの時僕はどこのクラスにも所属していなかったのだと」
「どこにも?」
「ええ、だからこそ勘違いが起きた。どこにも所属していないからと言って、どこかに所属させなければならない。クラスとはそういうものです。クラス分けされているのだからどこかに所属させる必要があり、それで僕の中にある最も普遍的な素質を抽出して、人道四段に収まったというわけです」
「……いや待って。普遍的な素質? まるで何個も素質があるみたいな言い方だけれど」
「う~ん、何個もというのは少し語弊がありますね。何個も、ではなく、全て、です」
「うん?」
そう言うことか。
その可能性について考えなかったわけではない。だがそれはあり得ない。
それはおとぎ話で、都市伝説で、神話の一節だ。
観測されたなんて話は聞いたこともないし、そんな人がいるのならもっと大々的に話になるだろう。
故にそんなクラスを持った人は存在しなかった。
だがステラは違う。その素質を持った。
「僕は全ての素質を持つ、クラス・『世界樹の福音』です」




