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イチャつく2人に世界樹の福音を  作者: 筆々
2章 彼は彼女の世界との繋がりを知る。
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2-2話 木漏れ日に照らされる日常風景

「……失礼しました」



 初めての依頼を終えた翌日、俺は教員たちに呼び出され、昨日のことを事細かく話すように……つまり事情聴取だ。

 教員たちの頭には俺ではグシルアを倒せるはずがないという考えが当然あり、何か特殊な出来事が起きたのではないかとひっきりなしに聞かれた。

 だからこそ、ステラのクラスについては触れないように作った嘘……ではないが、それを教員に話したところ一発で解放された。



「ステラが作った爆弾から青い炎が出てきた。これだけで納得するのなら、俺を呼び出す必要なかったんじゃないか?」



 そんなことを呟き、肩を竦ませて校舎を歩いていると、見知った顔が廊下の壁に背を預けており、俺に気が付くと、小指と薬指を閉じ、それ以外の指を開いて横にくっつけた手を振るシャルがいた。



「よっ相棒、散々絞られてきたか?」



「どいつもこいつも、俺の実力じゃどうにも出来ないはずだと話すら聞いてくれなかったな」



「……」



 するとシャルが歯を噛みしめ、険しい顔を浮かべて俺に詰め寄ってきた。



「どうにもできるはずねえんだよ――!」



「シャル?」



 俺の両肩を力強く掴み、睨みつけてくるシャル。

 しかしよくよく見ると彼は体を震わせ、その瞳は揺れていた。



 ああそういえば、昨日はずっと気を失っていて謝罪すらしていなかったな。



「悪かった。心配かけたな」



「……本当だよ。初めての依頼で、ダチなくすとか、シャレになんねえんだよ」



 歯の軋む音を鳴らし、顔を伏せたシャルの頭を俺はポンポンと叩く。

 確かに軽率な行動だったし、もっととれる手段もあったかもしれない。

 それに何より、俺は守護騎士などと呼ばれるアーデルハイドからその役割を横取りしてしまった。

 悔しい思いをさせてしまったのだろうな。



 と、俺がシャルを慰めていると、華のある匂い……女の子の匂いを覚えてしまうというのは相当変態チックではないだろうか?

 そんなことに頭を悩ませつつ、その匂いの下に目を向ける。



「ステラ」



「おはようございますソルさん」



 頬笑みを浮かべるステラに、俺も笑みを返すのだが、ふと彼女の腹部に引っ付いている何かがおり、俺は首を傾げてその物体……うさ耳を生やしたそれの頬を撫でる。



「む~……」



「ずっと離してくれないのですよ。ほらアンナ、ソルさんとシャルさんに挨拶」



「……」



 アンナも相当心配していたようだしな、今日はステラから離れないだろう。

 そう思っていたが、そのアンナがステラから離れ、口を尖らせたまま俺に近づいて来て、そのままくっ付いてきた。



「うぉっ」



「あらら」



 やわっこい感触と、とても高い体温が俺の体に触れ、どうにも戸惑ってしまう。



「……お前も心配してくれたのか、ありがとう」



「ああいう格好つけは、駄目だよぅ」



「ああ二度としないよ」



 俺がアンナを撫でていると、さっきまで俺の肩を掴んでいたシャルが真面目な顔をしてステラに頭を下げた。



「俺の友だちを助けてくれて、本当にありがとう」



「……いいえ。それに僕は少し手伝っただけで、倒したのはソルさんですよ。僕たちはソルさんに守ってもらったのです」



「ほらみろ」



 シャルには頭を、アンナからは腹を無言で引っ叩かれた。



「それでも、俺は本当に感謝しているんだよ……俺は、動けなかったから」



「シャル、俺が動く暇を与えさせなかった。だ」



「……あんまり甘やかすなよな」



「次は期待しているよ相棒」



 シャルが照れながら頭を掻き、そっぽを向いた。

 照れている友人を横目に、俺はくっ付いているアンナを抱き上げ、そのまま高い高いすると、そのまま下ろして頬をこねる。



「な~に~?」



「ステラが怒るアンナを撫でようと言っていたからな、お前の機嫌をとる方法だと理解した」



「そ~ん~な~に~や~す~く~な~い~よぅ」



 そう言うアンナだが耳はピコピコしており、機嫌がいいことが窺えた。

 するとアンナの後ろで、体を屈めたステラが期待するような眼差しで俺を見上げていた。



「……」



「――」



 期待に満ちた星のような黒目と、紅潮した頬を向けてくるステラに俺はため息をつき、その頬に触れた。



「んっ――」



「……満足したか?」



「もう少し」



 アンナより張りのある肌だが、スベスベと柔らかく、頬に触れる度に唇から漏れる吐息にどうにも心かき乱される。

 そうして堪能していると、突如背中をつつかれ、俺は首を傾げて振り向く。



 するとシャルが引き攣った顔で俺を見ており、ハッとしてステラから手を離す。



「なにやっとんソルさんや」



「……いや、うん、俺が悪いのか?」



「ステちゃんが肌を触らせるなんてレアだよぅ。ソルくん、商業科の一期生から命を狙われるかもだよぅ」



 俺が手を離した時、ステラが小さく頬を膨らませたのが見えた。

 俺の手に物足りなさを覚えてくれたのなら、幸いと言うべきかなんというべきか。



 そんな彼女が頭を切り替えたのか手を叩き、ある方向を指差した。



「皆さん揃って遅刻ですね。授業もう始まりますよ」



「だからステちゃんなんでそう言うこと早く言ってくれないのよぅ!」



「って俺たちもマズい! ステラちゃん(・・・・・・)、アンナちゃん、それじゃあまたな!」



「ああ、ステラ、アンナ、また後でな」



「はい、ソルさんもシャルさんも、授業頑張ってください」



「お昼一緒に食べようねぇ」



 俺たちはそれぞれの教室へと駆けだした。

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