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06 いざ、トグ王国へ潜入 後半

ようやく準備がそろい、トグ王国に向かって出発することになった。ゴワンドは反乱軍を組織としてつくりあげるため、旧イグザット王国領に残るとのことだ。


王子と私は二人でラクダ馬車に並んで座って、街道をゆく。王子が手綱をひいている。


そうだ、契約の話をしっかりしなくちゃ。



「悪魔式王国再興サポート、どうですか?」



「どう、とは?」



「契約する気になったのではないですか?王子がひとりで反乱を計画していたら、今頃処刑台の上ですよ」



「たしかに。そのほうの働きは見事であると思う。ただ、魂の契約となると、確実でないとな」



そう言いながらターレント王子は腕を伸ばして私の肩を抱いた。さわやかな笑顔だ。でもよく見ると頬が赤い。



「夫婦を装っているから、こうしていた方が自然だ」



王子は照れ隠しのように言った。


それにしてもイケメンが近すぎる。肩に手を回すのも自然で慣れてるんじゃないの?


やばい、このまま王子の方に吸い込まれてしまいそうになる。


私のからだはカチンコチンに固まってた。


ラクダ馬車に並んで座っていると逃げ場がない。いや、逃げ場があっても固まってしまって動けない。


緊張しすぎてまばたきの仕方もわからないくらいだ


私は偉大なる悪魔で魂を持って帰りたいだけのはずだ。どうしよう。


ラクダの足音、ラクダ馬車の車輪の音だけがひびく。


20分くらいずっとそのままだった。


私にはイケメン耐性というか男の子に対する耐性が無いのでこういう時にどうしていいかわからない。


使い魔のピピがポケットから顔を出したが、しばらくあたふたして再び中に潜っていった。


さすが私の使い魔、全く役に立たない!



「そう、そうだ!後ろの積み荷を確認しないと。悪魔は事前準備を怠らないのよ」


なんとか理由をみつけて王子のイケメン攻撃を華麗? にかわした私は、積み荷をごそごそと確認した。


頭がぼおっとして顔が熱い


。積み荷は香辛料、砂糖、染料に香料、かさばらないが高価なものばかりだ。


偽装しているだけなので、積み荷は軽い方がいい。


準備したのはゴワンド。さすがね。



旧イグザット王国領での反乱準備のためにゴワンドを残してくる必要があったのは正直痛い。


王子と二人きりだと私の精神力が持ちそうにないよ。


悪魔の園で14年間まったく恋愛に縁が無かったんだぞ。



王子の後姿を見ている。


こっそり後から見るのは楽しい。


そっと近づいて斜め後ろから眺める。


うなじや耳や頬に視線が吸い付く。


そっと背中を触ってみたくなるのを我慢した。



このまま荷台にずっといるのも変だし失礼かな。


私は思い切って王子の隣に戻った。



「積み荷は問題なかった?」



「え?あ、はい、大丈夫でした」



積み荷の確認を理由に荷室に逃げたのを忘れてた。



「戻ってきてくれてよかった。嫌われたかと思った」



「王子のことを嫌うわけないじゃないですか。そもそも、王子のことを嫌いになる女の子はイグザット王国とトグ王国にはいないと思いますよ?」



「イグザット王国が滅びる前は、私と結婚すれば将来のお妃だったからね。そういった意味では狙われる立場にはあったけど、ひとりの男としてみた場合はどうだかわからないね。誰も本当のことを言うわけないし」



王宮のお世辞やおべっかだらけの世界で生きてきたから、褒められても警戒する性格になってしまうのだろうか。


相手の女性の目の輝き具合でわかりそうなものだけど。



「王子は女の子の好みというか、趣味が変わっていると言われたことはありませんか?」



うわ、私何言ってんだろう。



「偏っていると言われたことはある」



やっぱり。



「視野が狭いとも言われたことがある」



私が入ってるから広いんじゃないですかね。



「好みとずれていても広く受け入れろと言われてきたけど、無理だな」



王子はわたしの方を向いて尋ねた。



「リリアはどのような男が好きなんだ?」



その質問、答えないといけないの? 


王子、あなたが好きです……言えるかぁ!


悪魔は人間と付き合うとかだめだし、結婚とかあり得ないし、好きになるなんておかしいし。


自分のもてなさ具合は悪魔の園で実感しているので、王子が正気に返ってやっぱりやめとくって言われるのも怖い。



「秘密です」



にっこり微笑みながら答えた。



どどどどどっと地鳴りがする。


「なにかが追ってくるわ。確認してくる」


幌の後ろから街道を見ると、ラクダに乗ったゴワンドが砂煙を上げて近づいてきている。



「王子、ラクダ馬車を止めて!」



「どうした?」



急いでラクダ馬車を止めた。ゴワンドがラクダをラクダ馬車に並べた。


ターレント王子の身の安全が心配で、居ても立ってもいられなくなって追いかけてきたのだそうな。


私のことはただの魔法使いにしか思っていないから仕方がないか。


悪魔だと知れば安心するかな?



「殿下の護衛もですが、敵領内で手足になって動くものが必要でございます」



ゴワンドは自信満々であった。


私はゴワンドに救われた。ありがとうゴワンド、本当にありがとう。



街の入り口の門の衛兵はしっかり仕事をしていた。


不審者は通さぬぞという意気込みを感じた。


積み荷もしっかり調べられたし、滞在期間や訪問先まで聞かれた。


ここは堕落させてずたぼろにしておきたいところだ。


悪魔の私の本領発揮ね。



「ターレント王子、門番たちにお酒を時々届けましょう」



「突然どうした」



「門番の衛兵たちを酒浸りにして士気を下げるのです。反乱時には容易に門を破って突入できるはずです」



「なるほど。さっそくゴワンドに手配させよう。旅商人からの差し入れという口実がよかろう」



「それと……いいにくいことなんですが……」



わたしはもじもじしながら話をつづけた。



「えっと……いかがわしい女性を彼らに近付けてですね、骨抜きにしておくとさらによろしいかと」



「酒をとどけるときに同伴させて知り合いにさせることはできるな。知り合いになった後、具体的にどんなことをさせればいいんだ?」



ターレント王子がにやにやしながら訊いてくる。



「だから……男の人と女の人のごにょごにょで……」



こいつ絶対いじめっこだ。そんな恥ずかしいこと言えないよ。耳が熱くなってる。


ゴワンドが助け舟を出してくれた。



「方針が決まったら、具体的なことは私にお任せください」



ゴワンドありがとう!イグザット王国の良心だよ。


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