05 いざ、トグ王国へ潜入 前半
「リリア、その服装だと旅商人に見えない」
いきなりダメ出しされた。
真っ黒なノースリーブのワンピース。悪魔としてふさわしい服で気に入っているのに。
「リリア殿は喪に服しているのでしょうが、旅商人の服装としては目立ちすぎますし似つかわしくないですぞ」
ゴワンドにも追い打ちをかけられた。
「旅商人の服装ってよくわからないんですよ。へへ」
愛想笑いして逃げようとした。
「よく考えたら俺も知らないな」
「では、このゴワンドにお任せあれ」
そんなわけで街の服飾店を訪ねることとなった。
「戦災で家財一切を失ったが、これを機会に旅商人を始めようと思ってね」
ゴワンドは店の主人とそんな話をしながら服を選んだ。
王子は身元がばれる恐れがあるので留守番である。
王子用の男性の服は似たようなものばかりだったのですぐに決まったようだ。
問題はわたしの服で、そもそも旅商人として働く女性はあまりいないので、既存の服を組み合わせてそれっぽくするしかなくて。
「リリア殿は肌が白いからきっと何を着ても似合うかと」
ゴワンドがほめてくれた。お世辞かもしれないけど嬉しい。
「これなんてどうでしょうか?」
フリルが付いたゆるふわ系のパステルカラーのブラウスをどこからか探してきた。
「リリア殿にはこれもお似合いかと思いますぞ」
ゴワンドがいろいろ勧めてくれる。
ん~、私のイメージはこんな風なのかな?
店の入り口からカランコロンと音がして、女の子が入ってきた。10歳くらいかな。
「おや、おかえり」
「あら、お客さんね。いらっしゃいませ」
「うちの娘なんですよ」
店の主人の娘さんは、私たちの前を通り過ぎ……私をちらっと見て……じっと視線をこっちに向けて……通り過ぎようとして止まった。
「お人形さんみたい!」
「これ、お客さんに失礼なことを言うもんじゃないよ。どうもすみません」
「いえいえ、お気になさらず」
ひきつった笑顔で答えた。
「わたしもこのお姉さんの着せ替えして遊びた……違う、コーディネートを提案したいわ。ねぇ、パパ、いいでしょ?」
店の店主が娘の背中をぐぐっと押して、奥の方に下がらせようとする。
彼女は振り向きながら言った。
「お姉さんの服を選ぶのに女性の意見も必要なんじゃないかしら?」
「「あー」」
男性陣が納得の声を上げた。
「お姉さんは色白で肌がきれいだから、肩まで出した方がいいわ」
薄緑色のノースリーブを勧めてきた。
「こちらのお客さんは旅商人用の服をお探しだよ」
「なんだ、そうだったの。じゃあこれを上から羽織ればいいわ」
悪魔の園では「お客様にお似合いです」とわたしにはとても着られないような服を店員さんに勧められたことがよくあったけど、大丈夫かしら。
「リリア殿、害虫が街道沿いにはたくさんいますからなるべく肌は出さない方がよろしいですな」
省略するけど、お店の娘さんときゃあきゃあいいながら10着は試着した。
最初はコメントを言ってくれてた男性陣も最後の方は無口になって魂が抜けたような顔をしていたわ。実際に魂を受け取る時ってあんな顔をするのかしら。
結局長いキュロットスカート、ノースリーブのシャツ、その上から羽織るもの、そして王子となぜかおそろいの首の周りを守るネックカバー。首の空いたところから虫が入りやすいからだそうだ。
正直露出度ゼロ。見せびらかすものは持ってないからいいんだけどね
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