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5.戦闘終了

「敵が動きました、3隻程度の小集団3、それぞれE18、A23、X17方向に展開、本艦の前方に回ります」

「面舵、進路A08 12パーセント増速」

「主砲、敵集団112に発砲、取り舵、進路A22」

偽装進路を中継ステーションにとる、敵の攻勢を受ける、逃げるふりをしながら徐々に要塞方面に近づく進路をとる、その繰り返しだった。

敵に中継ステーションへの進路阻止が、うまくいっていると思わせなければならない。

神経をすり減らす戦闘は、30分続いた、

だが、それは唐突に終わった。

「敵の陣形が変わります、集結を始めました」

サラは慌ててモニターの敵の動きを確認する、まずい、火力を集中するための陣形だ、偽装進路に気づかれた、敵はアルバトロスの奪取を完全にあきらめたようだ。

「こんなに早く気づかれるなんて!」

「機関最大出力!進路B06、レーザー拡散幕放出急いで」

「ミサイル斉射、残っている実弾、全て発射してください」

ミサイルの実弾が無くなれば、ミサイルで敵艦を撃沈することは、不可能になる、しかしここで一隻でも減らさなければ、助かる可能性はどんどん低くなる。

12基あるミサイル発射筒に実弾は残り3発、残りは全て模擬弾で発射された。

「続けてミサイル斉射」

今度は全て模擬弾だった、

(せめて一発でも命中してくれれば...)

模擬弾頭のミサイルでも、高速で命中すれば、敵艦を損傷させることは出来る。

この発射で模擬弾も底をついた。

「ミサイル着弾まで、あと30秒」

モニターにはミサイルと敵の配置が映し出されていた、ステルス機能の無い模擬弾を示す点が物凄い勢いで次々に消えていく、敵が迎撃しているのだ。

「まもなく着弾、3,2,1.着弾...」

8隻の敵艦から一気に爆発が起こった。

「え?何故...」

エリとサラはあっけに取られる、爆発は迎撃されずに目標に到達したミサイルより多い。


「友軍の砲撃です!識別信号受信、第6艦隊です!」

戦闘指揮所に歓声が上がった。

「敵艦隊進路変更、撤退していきます」

「敵の電波妨害、止みました、通信回復します」

通信妨害を受けてから、ずっと沈黙していた通信用モニターに、映像が映し出された

「連邦宇宙軍第6艦隊所属、巡洋艦モンテローザ艦長、アンドレ ビエラ中佐です」

モニターに相手側の艦長が映し出される、エリは立ち上がって敬礼する。

「連邦宇宙軍第1艦隊所属、戦艦アルバトロス臨時艦長、エリ キシカワ大尉です」

モンテローザの艦長は、エリを見て、一瞬驚いた表情を見せた。

「失礼ですが、他の将校の方は?」

「上級将校は全員戦死しました、現在本艦の最上級士官は、補給部のジョンソン少佐ですが、負傷して意識不明、他は自分が最上級者です、損害は艦橋部大破、レーダーアンテナの一部に損傷がありますが、通常の航行には支障ありません」

エリは簡単に艦の状況をまとめて報告した

「解りました、それでは本艦がこれから、護衛しますので、後方につけて下さい」

「了解しました」

エリが敬礼すると、モンテローザの艦長も答礼し通信が切れた。


「助かったー」

指揮官席に座り込むとエリは天井を見上げた、戦闘開始から6時間近く緊張を強いられた、精神が一気に緩む。

「やりましたね、見事な決断でした、ありがとうございます」

サラが握手を求める、エリはその手をしっかりと握ると、エリがニヤリと不気味な笑みを浮かべる。

「私にこんな重責せおわせといて、それだけですか?」

サラは冷や汗をかく、戦術の知識を学んでいない、運輸通信省出の通信士官に、階級が上と言う理由だけで、戦艦の艦長をやらせた挙句、あの絶望的な状況で戦わせたのだ、考えてみたらかなりひどいことをしたと思う。

「サラ アルメイダ少尉!」

「はい!」

エリの勢いに、サラは直立不動の姿勢をとった

「艦長命令です、今回の戦いの戦闘報告書の作成を、少尉に一任します」

軍隊とは巨大な官僚組織である、役所と言えば書類仕事だが、軍隊も例外ではない、指揮官の仕事は決断することだが、何故その決断をしたのか、詳細な報告が求められる、戦闘明けの身にはかなりきつい仕事だ。

「か、艦長?」

サラが青ざめる、彼女も戦闘でかなり疲れているのだ、しかもシフト明け直前に戦闘が始まったため、エリよりも長時間勤務が続いている。

「私は仮眠をとりますので、後の指揮は少尉に任せます、ではよろしく」

エリはそういい残すと、もう我慢できないとばかりに、フラフラと戦闘指揮所を出て行ってしまった。

助かった喜びに沸いている戦闘指揮所に残ったサラは、ため息をつき、主の立ち去った指揮官席を見つめた。

「...まぁ、仕方がないですね...」

諦めたようにつぶやくと、サラは報告書の製作にとりかかった。


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