32.エリさんの入院
エリを救出してから3日が過ぎた、ノーチラスの破片の処理も何とか片付き
リオグランデも整備のため軌道リング内のドックに入り点検を受けている
エリは軍医の診察の結果、重度のやけどを負っており速やかに医療設備の充実した施設での治療が必要と判断され直ぐに軍病院に搬送され現在は入院中である
リオグランデの格納庫内ではサラとハイザー准尉がエリが乗っていた脱出ポッドの調査作業に立ち会っていた
「これは凄いですね良く持ったものだ、脱出のタイミングも良かったんでしょうね」
年代物のコンピューター端末のモニターに表示された脱出ポッドの記録データを見ながら整備班長が感想を述べた
エリが脱出に使った脱出ポッドはノーチラス同様に旧式な物なので規格が合うコンピューター端末が既に無くこのリオグランデの格納庫の奥から引っ張り出してきた旧式の端末でもアダプターをいくつか介して無理やり接続している
「このグラフを見てください、まず最初の振動がこれです、規模の大きさからこれは恐らくギャラルホルンの爆発の衝撃波です、続いてこの比較的小さな振動、これはノーチラス内部に残されたミサイルが誘爆していく振動ですね、そしてその直後に記録されてるこの振動が脱出ポッドが射出された時の振動です」
ここまで整備員の説明を聞いてあの瞬間ノーチラスの中で何が起こっていたか理解したハイザー准尉が頷く
「なるほどギャラルホルンの衝撃波をノーチラス内でやり過ごした後ノーチラス内の弾薬の誘爆に巻き込まれる寸前に脱出したのか」
整備員もハイザー准尉と同じ見解らしく大きく頷く、
「そうです、これ以上はないというぐらい完璧なタイミングで脱出しています、しかも手動で」
大した度胸だと思った、あのノーチラスの装甲すら耐えられるかわからない凄まじい衝撃波の通過を艦内で耐えながら機会をうかがい正しい判断で脱出している、よくパニックにならず冷静に対処できたものだとハイザー准尉はうなった
次に整備員は横においてあった脱出ポッド内から取り外された操作パネルを取り上げる
「救難信号の電波は脱出ポッドが射出時に自動的に発するビーコン発信装置を改造してこの部分の電極どうしを接触させることでモールスを発信できるようにしてありました、元から故障していてビーコンが発信されない状態だったので改造したみたいですね」
改造箇所を指で示しながら整備班長は説明した
「ポッド内の電源は?」
ノーチラスが消息を絶った頃からずっと放置されていたとすれば内部のバッテリーはとっくに使えなくなっているはずである、現に脱出ポッド射出後はノーチラス側からの電力供給が途絶えて記録が残っていない
「それは艦長が着ていた船外作業服の予備電池を使ったみたいですね、規格も違う電池の端子とポッドの電源装置を器用に接続してありました、本当に大したものですよ艦長は」
ベテランの整備班長は驚きを隠せなかった、自分よりはるかに年下の実戦経験も少ない若者がこれだけの事をやったのだ
「脱出ポッドの調査が終わったら内容を報告書にまとめて下さい」
サラは整備班長に指示を出すとその場を離れた、整備班長がその背中を敬礼して見送った
(やっぱりエリさんにはかなわないですね...)
サラは自嘲気味につぶやいた、この調査であらためて最後までエリが諦めなかった事を知ったと同時に諦めてしまった自分が情けなくなる
エリは自分で運命に抗いそして生存を勝ち取ったのだ自分が同じ立場ならここまで出来ただろうか
自室に戻ったサラは艦隊司令部に提出するための戦闘詳報の作成をしていた
当時記録された様々なデータを元に時間と行動をわかりやすくまとめる作業を続けているうちにサラはだんだん恐ろしくなってきていた
もしあの時、エリが救難信号を発信できなかったら?通信士が電波を発している物体に気がつかなかったら?となりの宙域を担当していた駆逐艦ドニエプルがリオグランテのように小さな破片まで排除する方針を採っていたら?
どれ一つ欠けてもエリは死んでいた、彼女が生きていたのは本当に奇跡だったのだ、そしてそれは最後まで彼女が諦めなかったからこそ掴み取れた奇跡だった
報告書をまとめる作業をしているとそれを実感する、本当に良かった助ける事ができた、でももしあの時...それを考えるたびサラは恐ろしさで震え、助ける事が出来た安堵で涙が出た
突然サラの携帯端末の着信音がなった
画面を見ると病院でまだ治療中のはずのエリからの通信だった
「艦長?!」
サラが慌てて通信に出ると画面に出てきたのは頭から腕の辺りまで全身に包帯を巻いて顔だけ出したミイラみたいな姿のエリだった
包帯を巻いた隙間から見える地肌の皮膚がただれたような火傷が痛々しい、背景を見るとどうやら病院の病室のようでベッドの周りには雑菌に感染しないようビニールのシートがかけられている
「あ、サラちゃん元気?」
画面の中で大変な姿になっているエリがにっこり笑う、顔の火傷のせいで痛むのか少し引きつったような笑顔だった、その姿で元気?はないだろうとサラは思った
「艦長!大丈夫なんですか?」
あまりの状態にサラはうろたえる
「大丈夫だよ昨日の午後ぐらいに意識が戻ったんだけどもう大丈夫だから」
全身火傷で昨日意識が戻ったばかりの状態を大丈夫とは言わない、何か言いたかったが言葉が見つからず口をパクパクしているサラとは対照的にエリはどんどん喋りだした
「サラちゃんあの時泣いてたじゃない?なんか気になっちゃってさ、病院の先生に言ったら短時間ならいいって言われたから連絡したんだよ...」
こんな姿になっているのに他人の心配をしているエリにサラは何故かカッとなった
「私なんかの心配より自分の心配をしてください!」
サラは思わず大きな声を出してしまった、画面の中でエリが驚いている
「どうしてエリさんはいつもそうなんです?今一番ひどい状態なのはエリさんなのに何でそんな時に私なんかの心配してるんですか?少しは自分の体のことも考えてください...」
後半は涙声だった、サラは以前エリの妹の美咲と話した事を思い出した、自分が一番大変な時でもエリはまず人の心配をする、放っておけばいいのに手を差しのべる、それがエリを大切に思っている者をどうしようもなく苛立たせるのだ
「あー...えーっと...心配かけて本当にごめんね、でも私の事はこのとおり元気だから心配ないよ、病院の先生が言ってたんだけど、えーっと何だっけ...確か遺伝子培養治療とか...そういうのやるんだって、なんか体細胞の遺伝情報から各部位の特質に合わせた皮膚を培養してどうこう言ってた、火傷のあとも全く残らず治療できるって何かすごいね、えーっとだからサラちゃんが気にする必要なんて全く無いんだからね...」
サラに怒られたと思ったのかエリは自分のことは大丈夫、怪我は治るので心配いらないと繰り返し説明した、大声を出してしまったサラは何も言えずただ俯いてエリの話を聞いていた
エリはあの地球に落下していく脱出ポッドの中で、どれだけの不安と戦っていたのだろう?窓が割れて高温の大気が吹き込んできた瞬間に船外作業服の冷却が追いつかないほどの高温の中で体を焼かれながら何を思ったのだろう?
そんな恐ろしい体験をしていながらエリは自分はもう大丈夫、気にするなと言ってサラを気遣っている、
「え?サラちゃんどうしたの?泣いてるけど私何か変なこと言ってた?」
画面の中のエリが慌てている、サラの目からいつの間にか涙が流れていた、サラは涙を拭うと頭を左右に振る
「いいえ、違うんです...ただエリさんは強い人だなと思ったんです、怖れを知らずでどんな状況でも人を思いやれる強い人だなって...」
ひどい火傷を負う地獄を見てなおも人を気遣える、本当に強い人だとサラは思ったしかし画面の中のエリはサラの本心からの言葉を聞いて素っ頓狂な声を上げた
「えーっ?そんな事ないよ、明日から検査と細胞のサンプルとって、その後に培養した皮膚の移植手術やるんだよ、めちゃくちゃ怖いんだけど、先生は全身麻酔で眠ってる間に終わるって言っているだけど、それがまた怖くて...」
サラは思わず吹き出してしまった、要塞すら破壊するミサイルの爆発それに伴う戦艦の弾薬庫の誘爆、大気圏突入の熱で焼けていく小さな脱出ポッドの中で来るかどうかも判らない助けをひたすら待つ、何度も死が迫っている恐怖を体験しているはずなのに、エリは病院の手術が怖いと言った、サラは気がついたら声を出して笑っていた
「ひどい、そんなに笑わなくてもいいでしょ、本当に怖いんだから」
エリはふくれっ面で抗議する、エリは子供の頃けがをして腕の良くない医者から傷口を縫われとても痛い思いをした経験があったので手術は怖いものというイメージがあるのだが、それを知らないサラは思わず笑ってしまったのだ
「ごめんなさい、だってあんな怖ろしい目にあっているのに手術が怖いなんて言い出すものだから」
腕や足すら体細胞から培養して移植できるこの時代、皮膚移植はそれほど危険な手術では無い
「でも良かったサラちゃん笑ってくれて、さっき映像がつながった時はすごく辛そうな顔してたから...」
包帯まみれで一番辛そうな姿に見えるエリがにっこりと笑う
サラは屈託の無いエリの笑顔を見てこの人には敵わないなと思うのだった
3週間後
この数週間サラたちリオグランデの乗員は報告書作成や艦の損傷状態の確認、関係各所へ説明やアルバトロスの艦長への礼など多忙を極めていたが、さすがに一ヶ月もたつとかなり落ち着いてきた、そんな折にエリの最後の皮膚移植手術が無事に終わったという連絡が入る、十数回の皮膚移植手術の結果ほぼ傷も後遺症も残らず完治すると聞いてサラはほっとする
二日後に面会が可能になったのでサラとハイザー准尉は軌道リング上の軍病院に入院しているエリの見舞いに行くことにした
軍病院の施設は第1艦隊司令部の2ブロック隣に位置しており二人は艦隊司令部に報告書の補足説明をしたついでに訪れた
受付で重力区画内にある一般病棟のエリが入院している病室を教えてもらい二人は向かう
エリの病室がある階でエレベーターを降り廊下を歩いているとコートを羽織った老人が前から歩いてきたコートの下には連邦宇宙軍の第一種軍装を着ていて勲章をいくつかぶら下げているサラは誰だろう?と一瞬考えたが、すぐに以前写真で見たことのある人物を思い出し直立不動の姿勢をとり敬礼した、ハイザー准尉もサラに従って敬礼する
「君たちはリオグランデの関係者かね?」
老人はサラ達に答礼しながら質問してきた
「はい、駆逐艦リオグランデ副長のサラ アルメイダ中尉であります」
「駆逐艦リオグランデ掌帆長のロナルド ハイザー准尉であります」
敬礼しながら名乗るサラに倣ってハイザー准尉も名乗った、軍の支給の外套ではなく市販品のコートを軍服の上から羽織っているため階級章が見えないがサラの態度からするとかなり上の階級らしい
「キシカワ少佐の見舞いかね」
サラは驚いた何故この人がエリの事を知っているのだろうか
「艦長のお知り合いなのですか?」
同じ疑問を思ったらしくハイザー准尉が老人に質問した
「私は彼女が通信省の訓練生をしていた時の教官でね、私も先ほど見舞いに行ってきたところだ、君たちのこともキシカワ少佐から聞いたよ、彼女をよく支えてくれているようだね、ありがとう」
そういって老人はサラ達に微笑んだ
「艦長の教官...」
サラが驚いた表情でつぶやく
「なかなか不思議な子だったよ学科はいつも落第点ギリギリだったが面白い特技があってね」
「特技と言いますと?」
サラの表情でエリがどんな生徒だったか知りたがっていると思ったのか老人はエリの訓練生時代の事を語りだした
「今まで多くの生徒達を育成してきたが、何と言うか経験で培われたカンみたいなもの、こればかりは教えても経験をつまないとなかなか理解できない...彼女はそれを理解する事が出来る特技があった、他にも学科や実技で優秀な生徒はいくらでも居たんだがそれを理解した生徒は彼女だけだったよ」
それにはサラにも思い当たる節があった、以前の休暇の時に士官学校の知識をエリに教えていた時にも自分が実地訓練で習得した経験などを自分の経験のように吸収する姿を見ていたからだ
「私が言うのも何だが、あの子は今まで私が教育した中である意味一番優秀な生徒だ、しかし指揮官としての資質に欠ける、これからも迷惑をかけるかも知れんがどうか支えてやってくれ」
「はい、もちろんです」
サラは敬礼すると老人も嬉しそうに答礼した
「それでは私は失礼するよ、呼び止めてすまなかったね」
そう言うと老人は去っていった、二人は敬礼したまま老人を見送った
「あの方は?」
老人の背中を見送りながらハイザー准尉が小声で聞く
「ロジャー スチムソン准将です」
「あの方が?」
名前を聞いてハイザー准尉は驚いた、宇宙空間における電子戦を考案した人物だったのだ、レーダーや通信の妨害下における戦闘や敵の妨害を逆手に取った戦術など彼が考案し体系化した多くの電子戦術は現在でも地球連邦宇宙軍の重要な基本戦術として士官学校でも教育されているという謂わば伝説の人物だった
士官学校の教官時代の教育方針は徹底した実践主義、教科書を理解した後は常に教科書を疑えというのが口癖だったと聞く
「あのスチムソン准将の教え子ですか、なるほど艦長が凄いのも納得できます」
ハイザー准尉は今までの疑問が解けた気分だった、あの誰が何と言おうと自分が納得するレベルにならない限り絶対に合格判定を出さないと言われたスチムソン教官から直接教えを受けている以上、エリの実力は相当なもののはずだ
「しかし驚きましたな、スチムソン准将は決して自分の生徒を褒めることはないと聞いていましたので」
「そうですね私も驚きました、それだけ艦長が優秀だったということでしょう」
病室に入るとその優秀な生徒であるはずのエリがベッドの上で顔をうなだれていた、顔の前の方にたれた髪の毛のせいで表情までは見えないが、かなり落ち込んでいるような雰囲気が感じられる
「艦長...?」
サラが声をかけるとゆっくりとエリが振り向く、顔は今にも泣きそうな顔をしていた
「...あ、サラちゃん...」
サラを見たエリは力なく返事をした
「どうしたんですか?」
エリのあまりの落ち込みように心配になったサラが聞いた
「さっき通信省の訓練生時代の教官がお見舞いに来てくれたんだけど、すごく怒られちゃって...」
エリが言っているのは先ほど話したスチムソン准将の事だろう、先ほどまで話していたどこか誇らしげにエリの事を語っていた人物の顔が思い浮かぶ
「何で怒られてたんですか?」
「私が連絡艇でノーチラスの状態を確認に行った話をしたら現場の最高指揮官が危険な行動してどうするんだってずっと怒られて...」
横で話を聞いていたハイザー准尉は、それは仕方ないなと思った
「まあそれは仕方ないですな、現場の最高指揮官が居なくなれば現場はたちまち混乱をきたします、あの時はだれか部下を派遣するべきでした...」
極論すれば下っ端の兵士なら死んでも替えは利くが指揮官は替えが利かない
今回は乗員がベテラン揃いだったという事と現場の最高指揮官であるエリとの連絡がほぼ途切れずノーチラスがかつての地球連邦所属艦で詳しい資料がありAIによる自律戦闘がある程度予測できた事など特殊な条件だったから乗り切れたのだ
「ごめんなさい、私の身勝手で皆さんに苦労かけて...」
話を聞いていたエリがどんどん落ち込んでいくのを見てハイザー准尉は少々慌てる仮にも彼女は上官である、しかも自分が言った程度の事はすでにスチムソン准将から散々言われているだろう
「自分も少々言い過ぎました、申し訳ありません」
そう言うと姿勢を正す
「解ってはいるんです、でもどうしても自分の感覚で確認したくて...何と言うかとても感覚的なものなので実際に見て触れてみないと、映像とかだとどうしても伝わらないんですよね」
「それで何か判ったのですか?」
ハイザー准尉の質問にエリは首を左右に振る
「正直表面処理が新しくなっていた以外は何も...ただノーチラスの表面に施されていたレーダー反射層の処理が小惑星連合のそれとはちょっと違う感じがしました...」
突然とんでもない発言をしたエリに二人は驚いた、宇宙軍の調査の結果ノーチラスは長い間漂流していたところを小惑星連合に発見され改装後この攻撃に再利用されたという結論が出ていた、その決め手になったのが表面に施されていたレーダー反射層の追加で、その表面処理は小惑星連合特有のものだったと断定されたからだ
「これも感覚的なもので何となくそんな気がするというだけで、だから報告はしてないんです、言葉じゃうまく説明できないので」
スチムソン教官はエリが長年の経験で培ったカンのようなものを自分の経験のように理解する特技があると言っていた、と言う事はエリは宇宙軍の調査官ですら見落としている何らかの違和感を感じ取っているのだろうか
これは調査してみる必要があるとサラは思った、まずノーチラスの外板のサンプルを入手して...とそこまで考えて今はエリの見舞いに来ているのを思い出した
「まあそんな話は後にして艦長、お見舞い持ってきたんですがもう果物は食べても大丈夫ですか?」
果物と聞いてエリは表情を輝かせる
「ありがとうサラちゃん、もうお医者さんは普通の食事でいいって言っていたから大丈夫だよ」
入院以来ずっと味気ない病院食ばかりでウンザリしていたエリは目を輝かせてサラが持ってきた色々な果物が入ったカゴを見つめる
「では小官が用意しますのでお待ちください横の台をお借りします」
そう言うとハイザー准尉は病室の隅にあるシンクで手を洗うと果物をいくつかカゴから出して切りそろえ始めた中々手つきが様になっている
「上手なんですね」
家事もある程度できるエリが感心したように言う
「新兵時代は軍艦の炊事兵もしておりましたので、休日などは自分で料理もします」
少し照れくさそうにハイザー准尉は笑う、鬼の掌帆長の意外な一面だった
「そう言えばリオグランデはどうなっていますか」
エリはハイザー准尉に尋ねると、ナイフでリンゴの皮を剥いていたハイザーの手が止まる、そのまま黙ってしまったハイザーの代わりにサラが答える
「あの時地球の重力を振り切るため燃焼が終わったブースターを投棄したのですがそのブースターはすでに製造中止になった物で予備が無くリオグランデの復帰は現状では難しいです」
あの時エリを救助に向かったリオグランデは自力で地球の重力を振り切れないほど高度が下がっていた、そこでサラは燃焼が終わって重しになったブースターの投棄を決断する、ちょうど多段式のロケットが次々に切り離して重量を軽くしていくのと原理は同じだ、6基あるリオグランデのブースターのうち4基が投棄された
「現在さまざまな部署にストックが無いか問い合わせてはいるのですが、何しろ古い物でさらに汎用性の無いテネシー級駆逐艦のみで採用されている専用ブースターが4基となると見つかるかどうか」
そこまで言うとサラも黙ってしまった、場が重い空気に包まれる
エリもハイザー准尉がどれだけリオグランデに思い入れがあったのかを知っているので何も言えなかった
「まあ、見つからなかったらその時はその時です、どのみちあと10年もてばいいと言われていた船です、自分もあと少しで定年退官ですからちょうど良かったんですよ、そんなに気にせんでください」
そう言うとハイザー准尉が笑って振り返った、手にはいつの間にか切りそろえて綺麗に皿の上に並べられた果物がありそれをエリに差し出す
「せっかく見舞いに来たのに暗い話はなしです、艦長の全快を喜びましょう」
それでも申し訳なさそうにしているエリにハイザー准尉は付け加える
「艦長、もし船を失う事になっても指揮官は貴女です、部下を統率して船を指揮してその船を生かすも沈めるも全ては貴女の判断次第だ、そしてその判断の結果は全て貴女の責任になる、それだけ重い責任が貴女にはあるのです、船の管理を任されているだけの小官とは背負っているものが違います、小官の感情などは気にしてはいけません」
ハイザー准尉はしっかりとエリの目を見つめそう語った、その表情には今までのどこか子供を見るような所はなく、真剣な上官を見る表情だった
「私は良い指揮官になれるでしょうか...」
エリはハイザー准尉に聞いた
「それはこれからの貴女次第です、小官は貴女ならきっと良い指揮官になれると思います」
自分は指揮官としての自覚をもたなければならない、今はまだ頼りないかもしれないけれど私は艦長なのだから...
「これからもよろしく頼みます」
エリは背筋を伸ばしハイザー准尉に答えた




