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転生テロ令息は盤面を覆す ~悪役令嬢奪還作戦~  作者: 兎波 走


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27 子供たちの交流

 子供たちは先日の祝祭で顔を合わせているためか、俺は王妃と王子への挨拶の後、皆の前で自己紹介をする羽目になった。


 『怒涛の剣聖』の双子の兄と揶揄されるかもしれないと内心思っていたけれど、公爵閣下が後ろにいる状況では流石にそんな馬鹿をやる命知らずは出なかった。一目で目を掛けられてると判る服装の威力は絶大である。

 無事にノーミスで終えた俺に閣下はご満悦、一方の王妃はつまらなさそうな顔。思い通りにならなくてごめんねぇ? こっちは二週間、必死で詰め込んだんだよ。


 主催者の挨拶の後、子供たちは各自好きなテーブルへ、引率の大人たちは少し離れた場所で交流。

 琴音(ネリー)は自由行動になった途端、同じ派閥の女児たちと固まって話と交流に花を咲かせ始め、王子はその様子を遠くからチラチラ見ながら自分に群がる黄色系多めのフリルとレースの山に愛想を振りまく。時々こちらの方も睨んできてるけど、気付かない振りをしておいた。放っておいたらそのうち乳兄弟という名の鉄砲玉を飛ばしてきたりするかな?


 一方、俺はというと、同じ派閥の男の子たちと挨拶したりしていた。

 こちらの様子を窺う別派閥の子もちらほらいる。中立派のヴェルニエ公爵家は特に対立する派閥なんてものはないので、単に挨拶の順番待ちだろう。王国最古の家がどっちかに偏るのは好ましくないから、中立というのは妥当でもある。給仕の大人が聞き耳立ててるのは多分王妃の差し金。


「公女様のエスコートをされての登場とは、驚きました」

「恥ずかしながら、今まで女性のエスコートをする機会に恵まれなかったものですから。丁度良い機会だから経験を積みなさい、と閣下が勧めてくださったのです」

「それで初体験が王家主催のお茶会とは。緊張なさったでしょう?」

「それはもう。公女さまに失礼がなければ良いのですが」


 子供とはいえ、失態は家にも悪影響を与える。最初は会話も互いに探り探りだ。そして皆、言葉遣いもきちんとしている。

 十歳ともなれば、そろそろ「子供のしたことだから」が通じなくなる年齢でもあるし、俺自身は伯爵令息だけど公爵家が後見についている。恐らく、親から色々と言い含められているんだろうな。


「その生地は、公爵閣下がお召しになっているものと同じでは?」


 当たり障りのない会話が続く中、少し興奮気味に話しかけてきた伯爵家の令息に、俺は笑顔を向ける。

 彼の領は絹織物の生産が盛んで、今日の衣裳に使われているのも正にそこから取り寄せたものだ。なるほど、琴音(ネリー)の言っていた「特産品の知識」とは、こういう時に使うんだな。

 俺はそつなく令息の期待に応え、ついでに肌触りの良さとか織模様の緻密さとかもアピールしておく。馬車の中で閣下が生地を褒めておられたのは、今思えばヒントをくれてたんだな。ありがたい。自領のアピールが出来た令息は得意満面でにっこにこである。


 そこに、一人の令息が歩み寄ってきた。


「初めまして、デュマ伯爵令息」

「始めまして。あなたは?」


 友好的な態度だったので、俺も親し気な雰囲気で礼節をもって挨拶を返す。

 王子のお友達の皆様(そっきんこうほ)はどいつもこいつも派手な色合いだったから、初対面でも一目で判るしな。


「僕はナタン・オベール。オベール侯爵家の者だ」


 オベール。というと、第二騎士団長のお家かな? 鳶色の髪に黒い瞳は確かに似ている。侯爵家だったのか。


「第二騎士団長には大変お世話になりました。折角の祝祭でしたのに、弟が騒ぎを起こしたせいで中座をさせてしまって申し訳ありません」


 同い年ってことは、団長は元々、彼の父親として我が子を祝う立場で会場にいたってことだ。息子の成長を寿(ことほ)ぎたかっただろうに、知らなかったとはいえ本当にすまない事をしてしまった。団長にも、目の前の彼にも。


「君のせいではないよ。レオネルと呼んでも?」

「はい、是非」

「では僕のことも、ナタンと。敬語も不要だ。よろしく」

「こちらこそよろしく、ナタン」


 人格もオベール団長に似て、爽やかで気持ちがいい。友達になれると嬉しいな。

 周りにいた男の子たちとも名前で呼び合う約束をし、ぽんぽん追加される情報を頭の中で必死に顔や名前と一致させながら憶えていく。

 社交って大変だ。でも、ここで築いた人脈は後々、俺と公爵家、何より琴音(ネリー)のためになる。

 そしてナタンが俺に近付いてきたのには理由があった。


「実は、父から君に伝言があるんだ。君の弟のラウル令息だが、今朝早くに教会でスキルを封印したそうだ」

「えっ」


 意外だ。あいつと両親なら、最後までスキルにしがみつきそうなものだけど。祖父の判断かな。

 それにしても団長、貴族が起こした事件を追うのが仕事とはいえ、少し関わっただけの俺の事をまだ気にかけてくれてるんだな。本当にいい人だ。丁寧に感謝を述べると、「父上に伝えておくよ」とナタンも人懐こい笑顔を見せてくれた。


「──おい、お前!」


 そんな中、和やかな空気をぶち壊すように現れた男子を、俺は意図的に無視する。肩を怒らせながらこっちにずんずん近づいて来ていたのが、さっきから視界の端に見えていた。その特徴的な青みがかった銀髪も。

 多分来るだろうなと思っていた。相手を目障りに思うのが、お前だけだと思うなよ。


「おい、聞こえてないのか!」


 肩に手が掛かり、強引に振り向かされる。俺はわざと驚いた顔をしてみせた。


 予想通り、早々に実力行使に出てくれたな。

 こういう時は先に手を出した方が負けなんだって知らないのか? 馬鹿だな。これだけギャラリーがいるところで早速やらかしてくれるなんて。


 なあ、原作コルネリアの「義弟」にして現実の「他人」、ブノワ・マイヨ子爵令息。


 お読みいただき、ありがとうございました。


 ナタンくんは「9 第二騎士団長の所見」の最後あたりに出てきた子です。

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