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転生テロ令息は盤面を覆す ~悪役令嬢奪還作戦~  作者: 兎波 走


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12 婚約の真相

 養子? 僕が? 遠縁でも何でもないのに?


「あの、発言をお許しいただけますでしょうか」

「うむ、構わんよ。これ以降は好きに発言するがよい」

「ありがとう存じます。……身に余るお申し出ですが、国内の公爵家は全て、王家の血筋を守るお役目を担っておられると聞きました。全く血の繋がらぬ私で宜しいのでしょうか?」

「良い質問だ。結論から言えば、血縁がないからこそ都合がよいのだよ」


 え、なんで?

 さっきから頭に疑問符ばかり浮かぶ僕に、コルネリア嬢はくすりと笑う。


「レオネル令息。わたくしと第一王子殿下が婚約しているのはご存じ?」

「はい」

「その理由は?」

「理由……ですか?」


 あなたが一目惚れしたからでは?

 いや、それは僕が原作を読んでるからこそ知ってる情報だ。ここで言うのはまずい。


「いいえ、そちらは存じ上げておりません」

「我がヴェルニエ公爵家から、王家の血の割合を減らすためだ。……無論、面と向かって言われた訳ではないがな」

「……え!?」


 何だそれ。てか僕が聞いていいのか、この話。多分この国の根っこに近い重大情報な気配がぷんぷんする。聞かなかったことにできないかな。


「実は今、王家の血統は我が家よりも薄まっておるのだよ。他の二つの公爵家よりは流石に濃いがね。だから我が娘を王家に入れ、代わりに我が家には遠縁から養子を迎えさせて次期公爵に据えようとしておるのだ。あくまで表向きは、ただの中継ぎとして」


 できませんか、そうですか。

 これ身の振り方間違えたら、すぐさま人生ジエンドになりそう。困る。巻き込まないでほしい。


「もともと、先王陛下の代で、三つある公爵家のうちいずれかの家と政略を結ぶ予定であったのだ。それを嫌だと駄々を捏ねられてな。結局王家の血の混じらぬ侯爵家と縁(えにし)を結ばれた。次代で取り戻す予定であったのだが」


 今の王妃は、元隣国の姫である。全然取り戻せていない。


「『父は好きにしたのに自分が我慢するのは嫌だ』とこれまた不平を並べて、今上陛下も公爵家を選ばなかったのだ。そして薄まった血と王位の正当性を、慌てて取り戻そうとしておる。我が公爵家を犠牲にして」


 正確には、第一王子の母である王妃がゴリ押したらしい。婚約はコルネリア嬢が四歳の頃で、王命で否応なしだったそうだ。公爵家は貴族の中でも一番上なのに、人権がないとは。


 そもそも、王家で王位継承権を持つのは、第一王子だけではない。側妃を母とする第二王子の他にも、王弟殿下の息子がいるのだ。どちらも歳が近くて優秀だから、我が子を確実に王にするために強力な後ろ盾を欲したのだろう、とは途中から王家に対する敬語がどっか行っちゃってる閣下の談。


 そこまでヴェルニエ家頼みなのに、それはそれとしてコルネリア嬢を得た者が次代の王になるという状況は、公爵家の方が上みたいで王家としては面白くないらしい。

 血の濃い娘を召し上げて王家のものとし、更に公爵家の血を薄めるようにしようと目論んでいるそうだ。


 なかなかふざけてるな。恩を仇で返すってレベルを逸脱してる。少なくとも始祖が建国当時まで遡る重臣中の重臣の家系にやる所業じゃない。

 というかさあ、陛下。なんで側妃を公爵家から貰わなかったんだ。


 先代はまだ分かるよ? 正妃が格下の侯爵令嬢なら、公爵家の娘は間違いなく縁談を蹴るだろう。むしろ持ち掛けることすら出来なかったんじゃないかな。だって遠回しに「お前の家は侯爵家より下」って喧嘩売ってるようなもんだし。


 でも今の王妃は元王女殿下だ。国の力関係としても、どちらが上とか下とかない友好国。側妃を公爵家から迎えても角は立たなかったはずだ。

 まあ、だからこそ、陛下がわざわざその国からお嫁さん貰う必要なかったとも言えるんだけれども。両国の関係が云々(うんぬん)言うなら、上位貴族家同士で婚姻でも別に良かったのに。


「陛下は、わたくしの産んだ最初の子を王家に、二番目の子を次期ヴェルニエ公爵にすればよい、と仰せでしたけれど……人は鶏とは違いますし、授かりものである以上、そうそう上手くいくとも限りませんから」


 人間は一人じゃ子供を作れない。世継ぎを産んだ後で、夫が応じなければ二人目は永劫産まれない。そして産まれなければ、嫌でも中継ぎだったはずの養子を跡継ぎにしなければならなくなる。王家の血が薄い、遠縁の子を。

 そして更にその頃になれば、現在四十代の公爵は老齢になっている。急いで再婚したとしても、新たな子を望めるかは怪しい。


 ……いや、待て。

 ちょっと怖い想像をしてしまったぞ。最初の出産で「運悪く」公女が儚くなれば、あるいは子を産めない体になれば?


 二人の話が真実だとすれば、王家としてはそっちの方が都合がいいんじゃないか? よその男との間に勝手に作られる可能性自体も潰せるわけだし。

 出産直後は大量に出血もしてるし、車に撥(は)ねられたくらいのダメージ負ってるって、前世で姉ちゃんが言ってた。


 だったら、赤子を取り上げるついでに……なんてことも、もしかしたら。

 そしてこの世界は、前世ほど医療も化学も発達していない。だから出産時に令嬢の身に何かあったとしても、故意にやったという証明を事件現場の外からするのは極めて難しい。

 ただでさえ、出産は命懸けだと聞く。それを敵地と言えなくもない密室の中でするだなんて、心的な負担はいかばかりか。


「ふむ。双子の弟と違って、君はとても賢いようだ。そして勘がいい」

「お、恐れ入ります……」


 顔に出てしまっていたらしい。そのタイミングで言われると、遠回しに正解って言われた気がするんですけど。


「恐らく、君の危惧は当たっている。そして私は、大切な妻の忘れ形見をそのような連中には渡したくないのだ」


 爆弾発言出ちゃった。そりゃ人払いもするよな! 僕も何も聞かなかったことにして帰りたい!

 

 お読みいただき、ありがとうございました。

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