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平和(かのじょ)を愛した魔女  作者: 井上笑子


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第六話 キレイな人

 私がアヤセに連れられて、ケンサ室に戻ると、すでに偉い人はいた。

 壁際に席が用意されていて、そこにキレイな女の人と、怖そうな男の人が、座っている。

 その二人に、ここの大人たちは、みんな注目しているみたい。


 あれがヒデンカ?

 王様———この国で一番偉い人のお嫁さんなんだって。

 お嫁さんなら、あの二人の女の人の方かな? きっと。

 もう一人の方は、何だかピリピリしていて、怖そう。

 機嫌の悪い時のアヤセとは、なんだか違う怖さを感じる。


 大人たちの壁越しに、二人を見ていたら、キレイな人の方と目が合った。

 ・・・お姫様みたい。いいなあ。

 なんだか細かい模様や飾りのついたドレス。

 白すぎないキレイな手で、キレイな何かを持っている。

 その何かで、口元を隠したり、物を指したり。秘密の合図みたい。かっこいい。


 でも、お姫様みたいな人は、私のことを見て、少しだけ肩を振るわせ、固まった。

 私が怖いみたい。

 どうして? 私は怪獣じゃないのに。

 あんなにキレイなお姫様でも、私が化け物に見えるらしい。

 お姫様はみにくい怪物にも優しいってそう読んだのに。

 お姫様じゃなくて、ヒデンカだから?

 それとも、怪物以上に私はみにくいんだろうか?


 そうこうしている内に、白いローブの大人たちが、準備を終わらせたみたい。

 ヒデンカに始めていいか聞いて、キレイなあの人が頷くと、私の方へ今日もぞろぞろ寄ってくる。


 今日の私の手足には、鎖のついた重い腕輪や足輪じゃなくて、白い石の細い輪が嵌められている。

 ここ最近ケンサで試しているやつだ。

 さっき身を清める前に交換させられた。

 私が魔術を使おうとすると、なんでか光って、つけてるところが痛くなる変な石の輪っか。



 ・・・私はいつも悪いことをして、捕まった人みたい。

 お姫様と比べて、余計にそう思う。


 みんなの言ってることは優しい嘘なのかな?

 本当は私に悪いところなんてなくて。

 本当は、私が悪いことしちゃったのかな?知らないうちに。



 白いローブの人が、今日も私を台に縛りつける。

 今日は何をされるんだろう?

 ぎゅーっと目を瞑る。

 怖いなあ。こわいなあ。

 勝手に涙が出てくる。

 白いローブの大人たちの手は止まらない。


 今日もケンサが始まった。

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