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平和(かのじょ)を愛した魔女  作者: 井上笑子


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第三話 ケンサ

 地下牢からの階段を上がると、ケンサの部屋に出る。

 広い石造りの部屋。

 窓は木板で塞いであって、隙間から光が漏れているぐらい。

 外は全く見えない。

 なんで?って聞いたこともある。

 それも私のためなんだって。

 どうせ出られないなら、外を知っても辛いだけだって。


 この部屋は、いつもジメジメしていて、薄暗い。

 ケンサがなくても、この部屋の空気は、あまり好きじゃない。

 壁つけランプの周囲だけが、怪しげに照らされている。


 部屋の奥には、フードを目深に被った見上げるほどの女神像があり、その足元には、石の寝台が置かれている。


 足が止まってしまった私を、アヤセは、部屋の中に居た大人たちに引き渡す。

 ケンサの時いる人たちは、白いローブで顔を隠している。

 口元は、みんな優しい笑みを浮かべているけれど。

 でも。


 白いローブの一人が、私の手を取り、石の寝台まで連れて行こうとする。

 私はなぜだか、一瞬アヤセを振り返ってしまった。

 なんでだろう。

 今日のアヤセは優しいから? わからない。

 でも。



 私、あそこに行きたくない。

 白いローブの人の力は強くて、繋いだ手は離せなくて。

 私は半分引きづられるように、石の寝台まで行かされ、横たわるように言われ、そして、手足の鎖を寝台に繋がれる。

 いつものように。


 私のためだから。きっと。

 我慢しなくちゃ。


 目を瞑る。こわい。

 今日は何をされるんだろう?


 体のどこかを切りつけて、血をとられる?

 よくわからないものを飲まされる?

 周りを囲まれて、意味もわからない言葉を唱えられ続ける?

 何やら特別らしい手袋をはめた手で、全身撫で回される?


 なんでもいい。どれでもいい。

 でも、せめて、今日は痛くありませんように。苦しくありませんように。


 同じようなことをされても、痛くない時も、ものすごく痛い時もあって。

 痛みがいつ来るのかは、ケンサが始まったら、まるでわからなくて。


 痛みに身をよじっても、泣き叫んでも、大人たちはやめてくれないから。


 アヤセより、優しいかおで、優しい声で、優しい言葉をかけてくれるのに。


 でも、私のためだって、言うから。

 私のおかしなところを治すために、調べているって言うから。


 だから。

 きっと。


 いつかは。


 —————————————本当に?

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