神銀の剣に届いた招待状
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馬鹿騒ぎ、夜が騒々しい中での次の日
早朝に部屋の扉を丁寧に叩く音と「おやすみのところ申し訳ございません」という形式を重んじる一節が投じられた
「…」
『礼節』───俺はアルトラの嫌いなやつがやってきたのを扉の先に感じた。《特権階級》の者。それの仕え人。執事だろう
俺はエリアとアルトラの看病を続けるも再び叩かれた扉に《外せない用事》であることを理解した。アルトラが嫌がるのでこの手の話には首を突っ込みたくはないが執事に罪はない
これ以上無視を決め込んだ所で何時間でも居ることだろう。なんて無駄な時間を過ごさせるわけにはいかない
「少々お待ち下さい」
俺は扉を開けた
「アビーク公の側使えでございます」
《公》───特権階級の中でも公爵の地位を持つ者。これは王族を除いた中で最も位の高い事を指す
「日も上がらぬ内の訪問
さぞ疲れたことでしょう」
「お気遣いありがとうございます
ですが文を届けに来ただけですので」
そういって差し出された封筒には《アビークの蝋印》が押してあり、物質的な重さ以上の重圧を受けた
「神銀の剣へと
お渡し致しました」
「確認しました」
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側使えが帰った後、真っ黒な便箋の封を解き、中身を確認した。《黒の便箋》は重要書類などの郵送にて使われる物。専ら特権階級が個人的に使い込んでいる為それ程中身を気にする必要はない
郵送組合が優先して送る事。受け取り手が必ず中身を確認しなければならない点を除いて
「招待状か」
内容は《労い》《賄賂・小切手》《屋敷への召喚命令》だった。特権階級の間では別段珍しくもない内容に逆立てていた神経が緩むのを感じた
「…」
王族以外が使う《召喚命令》には基本的に強制力はない。いわば来てくれたら非常に助かるという送り手の利益になる行動を求めるものだ
《側使え》や《騎士》の位を持つ場合はその限りではない。必ず召喚に応じなければならない。しかし、俺達はアルトラの《皇帝剣術》のもとに集まったパーティである
次点でティーナの所属する教会の召喚に応じるべきではあるものの、同様に強制力はない。心象が悪くなりこそすれ、罪に問われることはないのである
最近まで侯爵からの手紙が来る程度には活躍をしているアルトラだったが今日、ついに公爵から手紙が来るまでになった
世間から見ればアルトラは成功者と言って良い
「災難だな、お前も」
アルトラは特権階級を嫌悪している。それでも関わらなければならない理由が彼にはある。この状況を見ているとまさに《呪いのスキル》と言うべき代物だ




