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【天賦拝命】アーツブローカーの苦節  作者: 中折れ青二才
ep0《神銀の剣・喪失編》
25/26

対《有象無象》

◆◇◆◇◆


「帰れ、俺は飯を食いに行くんだよ」


「居たぞ!」


 俺は外套のフードを深く被った


斥候・歩法術(ハイドアンドシーク)』より

 外套、紺色の生地と歩法術が組み合わされば陽の落ちた夜の街で《それら》を見つけることは困難だ


「エルドロ、選べ

 奴隷か地位か」


「…ッ」


◆◇◆◇◆


 深みのある青と水色の明暗掛かる夜の街が今夜、紅を纏うこととなる


「どこに消えたんだ!」


「ちっ…!」


 人の通りがまばらになり、一般人が自宅か華やかな場所かへ向かう中───灯の落ちた今、周りでは月明かりばかりが視界を確保する手段になっていた


「なんだ?何だ?」


 20人から成る奴隷商の小隊が一般人を分け分けて道に広がり、細道を他所に夜に身を隠すアーツを血眼になって探していた。その騒動に一般人も警戒を口にする程に小隊の構成員の多くが苛立ちを見せていた


 夜になってそこそこの街の陰影の鬱陶しさといったら───建物の陰が長く伸び、所々から僅かばかりの月光が差し込むばかりだ。視界は不良とあって小隊の何人かが荷物から灯りを取り出し始める中


「───っ!!」


『拘束術』『魔術・消音』より

 最初の標的になった最後尾の者。警戒の欠けた行動をしていたそいつは、陰から伸びてきた手で細道に引き摺り込まれた。相手が気づいた時にはもう遅く、僅かな布擦れ音すら立てられず、僅かな抵抗も虚しく、首を締め上げられ、声を出せぬまま意識を手放した


「おい、何かがいたぞ!」


「捕まえろ!」


 アビークが《その行動》を陰という形で間接的に視界の端に捉え、小隊の2人がそれに応えて走り出した


「はあっ!?」


「なんで…!」


 2人が呆気に取られる。それは最後尾にいたはずの仲間の姿───意識を飛ばされた仲間の姿を見て時間にして大凡1秒の硬直の隙が生まれ、高所からの『強撃』への対応を遅らせた


「…っ!」


「あっ…!」


『押し出し』『武術』『移動術・応用』より

 二人が連携を取りながら細道に入った時にはもう術中。気がついた刹那には頭部に重い一撃を受けたひとりが意識を飛ばされそうになり、張り手で吹き飛ばされた。2人で行動をしていたもうひとりは、吹き飛ばされた仲間に巻き込まれる形で細道から追い出された


「おい、逃げたぞ!」


「追え!」


『移動術』『窃盗術』より

 細道から現れた影が道を挟んで対岸に飛び出した。仲間の下敷きになっている小隊員灯りを盗み取られた。残りの小隊もまた追いかける形で対岸に移動を始めた


◆◇◆◇◆


「邪魔だ!」


『偽装』『移動術』『存在隠蔽(グラデーション)』より

 対岸の細道を走って移動する小隊に一般人が巻き込まれる。3人が辛うじて広がれる道を10を超える人数で移動するのだから、灯りを片手に歩いていた一般人が先頭の構成員に押し退けられて、あれよあれよと道の傍に追いやられていく中


「?…ぐっ…!」


『叩きつけ』『振り上げ』より

 小隊の列が切れる瞬間、一般人の横を通り過ぎようとしていた構成員のひとりが持ち上げられたかと思いきや、そのまま背中から地面に叩きつけられ、短い悲鳴を上げた。足元の影が突如動いたようにも見えるだろうそれは───


「いつの間に…!」


「いいから、捕まえろ!」


『存在隠蔽・解除』『窃盗術』『投擲術』より

 叩きつけられた構成員を見下ろすように立つアーツの手には紺色の外套が握られており、アーツは再びそれを装備すると、地面に転がる構成員から灯りを奪い様向かってくる小隊員に向けて放った


「なんだ、その子供騙しは!」


『魔術・木枯らし』より

 飛んできた物に対して、小隊員がそれを切り払った。その瞬間、吹き荒んだ風によって弾いたはずの灯りの火が燃え広がり、共をしていた2人を巻き込み3人を怯ませた


『魔術・発雷』より

 火に対して激しく抵抗していた3人は、夜に慣れていた目により硬直を受けた。視界が慣れる5秒間の間に接近された3人は首元を触れられ、アーツの魔術で意識を失った


「おい、聞いてないぞ!」


「ちくしょう、なんなんだ、あいつは!」


 この時点で何人かがアーツへの警戒度を上げ始めていた。見るからに弱そうな見た目をしている男。直接戦闘能力が明らかに高そうではない男に、立て続けに6人を戦闘不能へと追いやられたからだ


「何をしてる!あいつは一人だぞ!」


 アビークが叫ぶも、《警戒》《恐慌》で動けない者が出始めた小隊には、その叫びに応えて前に出る意思を固められる者はもはやいなかった


◆◇◆◇◆


「…」


 骨が折れるな。神経すり減らすし


『偽装』『呼吸法』でどうにか優勢を取り繕ってはいるが、物量で来られたら流石に厳しいな、道具を取りに戻るべきか


『状況整理』より

 宿屋からやや離れた位置

 20人のうち6人を無力化に成功

《息切れ》《疲労》《空腹》あり


「やってられるか!」


「おい!逃げるな」


『心理』『戦況学』より

 アビークからの叱責もモノともせず構成員は我先にと逃げ出していた。奴隷商の襲撃部隊の殆どが雇われたモノだったらしい


 戦闘において仲間と認識しているものが半分がやられた時点で残された半分は撤退を選択すると言われている。どうにか間に合った様だ


「残ったのはあんたらだけみたいだな」


 残ったのはエルドロとアビークにいつぞや見た《エルドロに遣える奴隷達》だけだった

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