「お前はもう、ひとりだ」
◆◇◆◇◆
「役立たずどもが」
上がった息を整えつつ、エルドロに警戒をしているとアビークが夜でも分かる程に怒りの表情と顔色を浮かべて逃げていく者どもを叱責していた。このまま火でも上がるんじゃないかって程に
「…」
『ジパルハザードの厄毒強耐性』を獲得しました
先程まで感じていた倦怠感が嘘の様に消し飛んだ。それと同時に今まで感じていた《万能感》も消えた
「…」
困ったことに《万能感》の消失は思った以上に盤面の不利を示していた。先まで指先の様に扱えていた『アーツ』の感覚が今は酷く《曖昧》に感じている。時間にして0.5秒程の隙が生まれる───致命的な隙が生まれてしまう
「アーツさん」
エルドロが静かに鞭を構えていた
「…あっそ、エルドロ
お前はもう少し利口だと思ってたよ」
エルドロが前に出てきた。得物の鞭を構えには今にも攻撃を仕掛けるぞと、そんな雰囲気を出しながら
◆◇◆◇◆
先に仕掛けたエルドロだった。大嵐が如く振るわれた鞭は破裂音をさせながらアーツに怒涛の連続攻撃を放った
アーツはその一撃、一撃をいなす形で防いでいた。手は赤く腫れ上がっていき、防ぐ度に起こる破裂音は威力と妨害を兼ね備えた───攻撃こそ最大の防御と言わせる攻防の結果
防戦一方。20秒という短くもあまりに長いそれらはアーツに致命傷に近い損傷を与えていた。アビークはその風景を前に───
◆◇◆◇◆
「…」
『反撃準備』のために
『衝撃吸収』『貫通相殺』『破砕緩和』
『徒手空拳』準備
『拳打』『体術』『剛拳』『踏み込み』
『術式装填』
『威力の補正』に
『筋力増幅』『拡散無効』『加速・応用』『強化』『貫通増強』『致命箇所』など
『発散時の威力相殺』
『威力相殺』『制限付与』『魔力中和』『衝撃分散』『流転の構え』『静止』『脱力』など
【問題あり】
『古の叡智』による提案
『徒手空拳』→『転身魔術・阿修羅投影』
最大限の威力とその攻撃に対する反動への対策を練り上げる。狙いは一点。ただ一点
◆◇◆◇◆
───余裕が生まれていた
「…」
「申し訳ありません、アビーク様」
辛うじて聞こえた踏み込んだ足音だけを残し、猛攻の合間からアーツの姿が掻き消えた───音すらも置き去りにした移動。気がつけばアーツの魔力と物理的な存在はアビークの懐へと既に入っていた
「…へ?」
「残念───」
そこから放たれた怒涛の《6連撃》はアビークの持つ《致命傷を防ぐ術式の付与された装飾品》を粉砕する結果を招いた
鞭による攻撃を受け、溜まりに溜まった衝撃のしっぺ返し───周囲を揺らす衝撃波を放ち様、対となる二撃目による追撃を計3回、常人では目にすることのできない速さでアビークへと叩き込まれ、それは魔術において《一撃による攻撃》という結果だけを残した




