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【天賦拝命】アーツブローカーの苦節  作者: 中折れ青二才
ep0《神銀の剣・喪失編》
18/26

人狼の幼体《シズク》ー2

◆ ◇◆◇◆


『法制』より

《奴隷制度》において未契約の奴隷を手元に置くのは違法であり、それが幾ら人助けであろうとも《犯罪》となる。働き手の拉致に該当するため、法制のもとでは《匿った側》は不利なのである


◆◇◆◇◆


 道すがらそれはあった。《奴隷市》だ───奴隷商というのは一般的なビジネスだ。目に見えない檻であり、一種の働き口


 今現在匿っている少女を助けるだけなら水薬で事足りる。だがアルトラはそれでは満足しないだろう。当たり前だ───問題はその後なのだから


「…」


「あ、あんた…」


「昨日はどうも」


 俺は『追跡』『探索』『探偵』───《人探し》に必要な『アーツ』でとある人物を見つけた。昨日アルトラとことを構えようとした奴隷商の従業員


 案の定店先で奴隷を率いた《運搬業》の監督をしているのを見かけて声を掛けた


「何の様、だ」


「そう身構えんなって」


 俺は手を挙げて武器を持っていないことを暗に示した。それでも相手は俺を警戒していた。周りの奴隷達もその雰囲気を感じてか俺を睨みつけていた


「お前の職場って何処だ?」


「何をする気だテメェ!」


「熱くなるなよ

 ただお前の上司に話があるんだよエルドロ」


 エルドロ───アルトラとことを構えようとした時に俺が仲裁に入った時に名前を教えてもらっていた。俺はこいつの職場に用があるだけだ。このままでは法的にはこちらが不利なため幾つか不安点を潰すためだ


◆◇◆◇◆


 重厚な見た目の三階建。奴隷の中でも意外にも色物を扱っているらしく、艶かしい音や楽器の音が聞こえて来る


 そこを抜け、階段を上がって最上階。エルドロに着いて行った先で一室に通された


「失礼します」


「これはこれはいらっしゃいませ」


「…」


『読心術』『交渉術』より

 一室の奥で深々と腰掛けていた男が俺を見ると一瞬顔を顰めた後、営業者としての作り笑顔をした。経営者としても営業者としても手腕がいいとは思えない雰囲気をしている男こそ、エルドロの上司。商会のトップだろう


「本日はどう言ったご用件ですか?」


「気に入った奴隷がいてな

 購入を検討している」


「それはそれは、喜ばしいことです

 して、その奴隷とは」


「人狼の少女だ

 迎えたいと思っている」


「…」


 世間話を切って、交渉ごとに直ぐ様移る。ここは香の匂いがキツい。血液の巡りがやや増すのが分かったが別段問題はなさそうだ。しかし、鼻が曲がりそうなため早めに切り上げたい


『危機感知』『交渉術』より

 雰囲気が変わった。僅かに増した重圧、先までにこやかだった男が俺を睨みつけている


「それはそれは」


『奴隷の知識』より

 奴隷は労働力だ───労働者として安く、働きものだ。故に食事や衣服、清潔に保つのにそれなりの出費が発生するものだ


『奴隷商の稼ぎ口』より

 奴隷は商品である───労働力であり、欲求解消の道具である。依頼の代行やその手の奉仕をすることでその一部を《手数料》《教育費》として《天引き》《請求》することで稼ぎを得る。その他にも《商品》として売り出すことでも利益が生まれるのだ


「これはお目が高い

 本商会が扱っている獣人(・・)でも

 毛並みに定評がありまして」


「…」


「そうか」


『交渉術』より

 毛並み、毛色ではなく毛並みと《この男》は言った。獣人の価値とは光沢を持つ《毛色》でその価値は変わる。この男は知ってか知らずか、その話題を避けた。身綺麗にしていることを先に出したのだ───《対外的な価値》ではなく《生娘》であることを全面に出してきた


「それで?」


「値が張りますが問題ありませんか?」


「そうだな」


『交渉術』より

《希少価値》───それに《不可逆性》を持っていればそれだけ価値が上がる。誰もが手つきのモノを欲しがるわけではない。荒れていない土地はそれだけで魅力となる


「金貨20はどうだ?」


「お客様、それは

 あまりにも無理なお願いですよ」


 商会長は俺の言葉に緊張を解いて見せた


「獣人の中でも人狼は珍しく

 手つきのないものとなれば

 それはそれは提示してもらった倍は

 頂かなければ」


「そうか」


 俺は懐から金一封の入った麻袋を取り出し、机に置いた。《ゴッ》と鈍い音がした。2年でよく貯まったもんだな


「…そちらは?」


「金貨50だ」


「50!?」


「領収書を頼む」


「ま、待って下さい」


「何だ?」


「確認させて頂いてもよろしいでしょうか?」


「…」


◆◇◆◇◆


 エルドロが確認している間、俺は商会長と話すことになった。青ざめた顔色から余程あの娘を手放したくないらしいことが窺える。はてさてどんな妨害を仕掛けて来るのか


「お客様」


「何だ?」


「シズクを大変気に入って頂けて

 我々としても鼻が高いのですが…」


「あの娘はシズクというのか」


「え、えぇ

 何故そこまでお求めに?」


「…」


 商会長の意図が読めない。あそこまで労働力にならない奴隷を手元に置き続けようとする意味はどこにあるのだろうか?


 戦闘奴隷ではない。愛玩奴隷でもない。ましてや労働力としてならば腹一杯食わせない意味が分からない。なのに手放したくないとなると


「何だ、お前が言ったんだろ?

 生娘だって」


「それはそれは

 確かに私目はそう言いました」


「それだけが理由では不満か?」


「…」


 下手くそが、先に手の内を晒す馬鹿が交渉の場にいるとはな、よしんば手の内を晒した時に二、三と構えておくことは定石だろうに


「な、何故、あれ程の高値かも

 気になされないのですね」


「あぁそうだな

 確かに高いな」


「であればシズクも良いですが

 他にも趣向を凝らした品揃えがございます

 特に、最近入荷した金狐であれば

 大変人気が出ておりまして

 万が一売りに出しても採算が…」


「いや、変える気はないぞ?」


「そうですか、して何故?」


「そもそもが間違っている

 欲しがっているのは俺の仲間だ

 俺は交渉の場に来ただけに過ぎん」


「…」


「随分とシズクを手放したくないのだな」


「いえ、その様なことは」


《手放したくない理由》は叩けば埃が出るからだろうか?


「なら一切問題ないだろう」


「ですがウチの商会としましても

 シズクの様な種族は確かに希少ではありますが

 芸の仕込みに時間が必要となるため

 我々としましても返ってくるかもと

 気が気ではないのです」


「なら問題はないだろう

 白地であれば以下様な色にでも

 即染まるだろうし」


「ですが…」


「くどいな、何か隠し事か」


「…」


 商会長はそれ以降、塞ぎ込み口を噤むのだった

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