厄毒が蝕むモノー1
◆◇◆◇◆
「取り敢えず恐竜種と
厄毒の解析は後回しとして」
問題が山積みになり優先順位をつける必要が出てきた。俺は話し合いをするべく昼まで寝こけているゴードンの部屋を訪ねた
「ゴードン、起きろ」
妙だ。ゴードンが鍛錬を怠っているのだ。いつもなら日の出と共に起き、雲の流れに合わせ武器を振り、盾を構える───それがゴードンなのだが
ここ最近は夜遅くまで鍛錬以外に精を出し、朝に帰る始末。それだけなら問題ないのだが噂に聞くゴードンの立ち振る舞いがあまりに粗暴というか、品位に欠けるというか。その点も含めて話し合いをしなければならない
しかし、扉を叩いたものの待てど暮らせど開けるどころか返事もない
「入るぞ」
俺は痺れを切らしてゴードンの部屋へと入った。その中に居たのは見知らぬ女人と寝るゴードンの姿だった。メイド服と鎧が脱ぎ捨てられ《重なっている》状況を前に俺はなんともいえない気まずさを受けつつゴードンに声を掛ける
「ゴードン?」
「…」
「ゴードン、起きろ」
「うるせぇ」
「ゴードン、女遊びをするのはいい
だが翌日に響くのは…」
「うるせぇって言って…あ」
ゴードンの顔色が真っ青になっていく、これも厄毒の効果だとしたら益々効果が分からなくなってきたな───気性が荒くなったり、弱気になったり情緒が不安定だ
「あ、アーツ、すまない
気が…」
「謝罪はいい、一晩の恋人には帰って貰えるか?」
「あ、あぁ」
俺は今どんな顔をしているんだろうか。少なくとも失望より驚愕しているのだが恐らくしかめ面を浮かべているのだろう───厄毒の解析、解毒は急務で進めなければならない。さもなくば問題が起きる事を危惧しての表情だ
「下の階で待ってるぞ」
「あ、あぁ」
今でさえ歯車が噛み合っていない状態が続いているというのに
◆◇◆◇◆
「あらあら、そんなに溢して」
「すまない皆んな
ゴードンは、ってどうしたティーナ?」
「エリアさんが食事を
溢してしまったので」
ティーナが、エリアの口をハンカチで拭いている。エリアの雰囲気がより幼くなった印象を受ける光景を目にした
ミートソース───麺系に絡めるトマトベースの赤いソース。布地に落ちれば色が残りやすい食べ物が魔術学院の制服と口周りにベッタリとついていた
少女が笑顔で食事をしている。それだけ、本当に目の前にあるのはそれだけ見れば平和で微笑ましい光景だ
「…」
エリアは【才女】だ。古代魔術に付随する知識や識字を修めた上で自分で論文を作成する段階だ。それが今口の周りを汚しながらパスタを頬張る姿をしている
面との差異がないのが救いだが、やっぱり以前の彼女と比べて違和感しか感じられなくて表情が固まってしまう
「アーツさん?」
「あぁごめん、エリアを頼むよ
俺はアルトラと話してくる」




