アルトラの我儘
◆◇◆◇◆
「…」
「まだ子供じゃないか!」
「離れろ」
「…ん〜」
宿屋に帰ってきた俺は目の前の光景を疑った。アルトラが宿屋の外に出ている。あまつさえ、その背中に身なりからして奴隷を庇っている様に見えた
眉間を摘み、その光景を再度見てみるも光景に変わりはなく、それ以上に悪化の一途を辿っていた
言い争う声からアルトラが首を突っ込んだことは明白だ。ティーナは何をしているんだ。そんなことを考えている間にも誰かも知らない男に対してアルトラは剣を抜かんと手を掛けていた
「おいおいおいおい」
【皇帝剣術】を一般人に行使しようとしていたのだ
「アーツ!?」
「なにしや、!?」
アルトラを『阻害』するため
『武芸百般』『武術・理崩し』『脚力強化』
『移動術・応用』など
男を『怪我をさせない拘束』のため
『手加減』『捕縛術』『受け流し』など
アルトラに対し、俺は今にも引き抜かれようとしている剣の頭柄を足で体重を乗せた押さえ込みをし、一方のアルトラに対し振り下ろされている拳を《採寸道具》の柔布で手首を受け流した
「なっ…は?」
「すみません
この男は俺の仲間でして」
放心してくれてよかった。それにしてもエリア、ゴードンの変化は分かりやすかったがティーナに関しては何か2人とは異質な変化をしているのだろうか
アルトラに至っては態度の軟化なんてものじゃない───軟化であれば濫りに使うことを許されない【スキル】を使うわけがない
「アーツ、何故俺を止める」
「アルトラ、剣を抜く意味を分かってない
わけじゃないよな、冗談じゃ済まないぞ」
【皇帝剣術】───権威と平和の象徴。強力無比な反面、それが使われること・使うことは責任を伴う。故においそれとは引き抜いてはいけず、特権階級でなければ行使を許されないほど
「分かっている」
「お前、それ本気で言ってるのか?」
《錯乱》か───軟化じゃない。だけじゃない、様々な状態異常が併発しているんだ。俺はそう無理矢理納得した。今大事なのは事態の収集だ
「あぁ」
「…」
そう思いたかった。だが、一時の感情に流されている訳ではないことは目とその声色から分かる。だからこそタチが悪い
「アルトラ、今騒ぎを起こせば
その子も助からないぞ」
「それでも、誰かが困っているなら」
「たく、少し待ってろ」
「うん」
俺は激昂していた男を立ち上がらせ場所を移して話をすることにした




