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82. 戦艦「メイフラワー」と、五人の小隊長

 馬車が港に着くのに、その時間はかからなかった。


 降りると、御者はすばやく馬車を脇の馬小屋へと追いやり、それから小走りに戻ってきて、ロジャーの後ろに恭しく立った。


 港はにぎやかだった。


 水夫や兵士がたくさん行き来している。


 石を運ぶ者、船を点検する者、投石機の調子を確かめる者 ——。


 一人ひとりの表情は厳しく、手つきはてきぱきとしていた。


 どうやら、クラーケン討伐に向けた最終準備の最中らしい。


 だが、奇妙なことに、他の討伐隊の隊員たちの姿はどこにも見当たらなかった。


 乗船予定地は閑散としていて、岸辺には数艘の大型帆船戦艦が停泊しているだけだ。


 艦身上にはライク郡の旗がはためいていた。


 海風に揺られ、粛やかにたなびいている。


 ロジャーは眉をひそめ、やや気まずそうに言った。


「申し訳ございません、三方様。想来、隊員たちはまだ休息中かと。直ちに彼らを呼びに参ります」


 俺は頷いた。


「ああ、行ってきて。こちらで待っているから」


 ロジャーが応じて、すぐに近くの木造の建物へと走り出した。


 その姿はすぐに、建物の入り口で消えた。


 その隙に、俺はライク郡の港をじっくりと観察することができた。


 ライク郡の市街地そのものはそれほど広くはない。


 だが、長年にわたって商船の重要な補給地点としての地位を維持してきたこと、それに優れた深水港の入り江を抱えていることもあって ——。


 ライク郡の港は非常に広大で、同時に八十艘近い大型帆船を停泊させることができる膨大な収容能力を誇っている。


 港内の桟橋は長く、硬い石畳で舗装されている。


 その上には、数艘の小型漁船や商船がまだ停泊したままだった。


 ただ、それらの船のほとんどがすでに老朽化し、ひどく痛んでいる。


 どうやら、ずっと昔から海に出ていないようだ。


 我々が本日乗船するのは、三艘の大型帆船戦艦 ——。


 これらの戦艦は巨体を誇り、艦身は頑丈にできている。


 甲板には小型の投石機が装備されていた。


 射石砲は現在、アムニットのクローディア農場で最終試験段階にあるため、まだ海軍には配備されていない。


 我々の家が正式にこの港を受け取った後、クローディア農場は大量の射石砲を生産し、港内の海軍による近代化改装を行う予定だ。


 現在、ハーランド帝国海軍にせよ、海軍で名高いインゲリア諸島国にせよ、その主力戦艦は木造の帆船戦艦だ。


 戦闘形態もまた、接舷戦の形式をとっている。


 船側に射石砲を装備できれば、敵船が我々に近づいた際に攻撃を仕掛けることができる。


 クローディア農場から届いている実験報告によると、射石砲の威力はすでに木造戦艦の船殻を破壊するに足るものとなっている。


 この威力を持つ射石砲が艦上に配備されれば、今後ハーランド帝国に反抗する際、我々は海上の主導権を争う能力を得ることになるだろう。


 —— まあ、話は戻ってきたが。


 今、船上には射石砲の配備はない。


 したがって、クラーケンに実際のダメージを与えられるのは、甲板上の小型投石機か、あるいは魔法師たち ——。


 もちろん、クラーケンの触手が戦艦に絡みつくのを防ぐために、戦士たちも艦上に配備されている。


 ユーナが俺の手を引っ張り、好奇心に満ちた瞳で港全体を見渡していた。


 母上は傍らに立ち、鋭い眼差しで港内のすべてを掃視していた。


 時折戦艦のそばに歩み寄り、甲板や投石機を点検する。


 その神情は厳しく、どうやら出航に向けた最終チェックを行っているらしい。


 そう長くは経たず、ロジャーが遠くの木造建築から戻ってきた。


 その後ろには、五人の男たちが従っていた。


 その五人は正式な鎧をまとい、神情は厳しく、歩みは沈着で、一目見て並の者ではないことがわかった。


 どうやら、今回我々とともに作戦にあたる小隊の隊長たちらしい。


 彼らは我々の前にやってきて、足を止め、恭しく傍らに直立した。


 その瞳には幾分の疑惑が浮かんでいて、時折こっそりと俺やユーナを盗み見ていた。


 どうやら、三人のうちの二人も年端もいかない子供がいることに、誰が隊長を務めるのか不信感を抱えているらしい。


 ロジャーがすばやく前に出て、笑顔で我々を紹介した。


「三方様、こちらの五名が今回の討伐隊小隊長各位でございます。


 船長三名、冒険者魔法師の長一名、そして前衛戦士の長一名、都合五名の面々です」


 そう言うと彼は振り返り、五人の小隊長たちへ我々の身分を紹介した。


「諸君、こちらがエリクソン公爵のご息女、クローディア様。こちらがエリクソン妃殿下、ヘレナ様。そしてユーナ様だ。


 三方こそが、今回のクラーケン討伐隊の総隊長であり、この作戦を指揮される方々だ」


 五名の小隊長たちは、ロジャーの紹介を聞くと、顔から疑惑が消え失せ、代わりに満面の驚愕と恭順の色が浮かんだ。


 彼らはすばやく、我々に対して標準的な騎士の礼を取り、その声は恭しく ——。


「クローディア様! ヘレナ様! ユーナ様! お目にかかり光栄に存じます!」


 その中で、近接戦闘担当の戦士リーダーが一人、目を輝かせてすばやく前に出た。


 その口調は熱っぽい。


「おお、エリクソン妃殿下ではありませんか! お会いできて光栄です! 冒険者協会で、あなた様の戦功は度々噂に聞いておりました。私の崇拝するお方です!」


 俺は、この戦士リーダーの熱に浮かされたような様子を見て、思わず吹き出しそうになった。


 —— 母上は魔法師出身の冒険者なのに、なぜか近接職の冒険者たちからより厚く持て囃されている。


 まあ、「近接戦ができない魔法師は良い前衛じゃない」なんて言う冒険者が多いと言えば、そうかもしれないな。


 そう思えば、母上が巨人を一刀両断できるのも、ごく自然なことのように思えてくる。


 母上はかすかに頷き、声の調子は穏やかだった。


「礼には及ばぬ。今回のクラーケン討伐、諸君には大いに労を取らせることになろう。我々が心を合わせ、クラーケンを無事討ち取れるよう願っている」


「大人、お気遣いには及びません!」


 五名の小隊長が異口同音に声を上げた。


 その調子は坚定として ——。


「大人のために尽力できること、これにまさる誉れはございません。全力を尽くし、大人とともにクラーケンを撃破いたします!」


 ロジャーが笑いながら言った。


「さあ諸君、とうに時間でございましょう。戦艦に上がり、出航の準備を整えましょう」


 俺たちは頷き、五名の小隊長に続いて、そのうちの一艘の戦艦へと歩み寄った。


 戦艦の甲板に上がると、そこは先ほどの岸辺よりもさらににぎやかだった。


 多くの水夫や兵士が行き来して忙しなく働いている。


 大量の石を船に運び、投石機の脇に積み上げる者もいれば ——。


 投石機の傍らで、仕組みが正常に作動するかどうかを試験している者もいる。


 また、戦艦の帆や綱索を点検している者もいた。


 一人ひとりが仕事に真剣に打ち込み、その神情は厳しく、いささかの怠りもない。


 この船の船長を務めるのは、がっしりとした体格の、肌の色が黒い男だった。


 彼は俺たちの前にやってきて、恭しく一礼し、その口調は熱烈だった。


「三方様、ようこそ戦艦『メイフラワー号』へ。私がこの船の船長を務めております。


 これより、船室の構造についてご説明いたしましょう」


 母上が頷いた。


「ああ、船長によろしく頼む」


 船長は俺たちの先を行き、甲板の上を歩みながら、船室の構造について説明していった。


「三方様、この船は三層構造になっております。


 第一層は甲板で、主に投石機、石弾を配置する区域、それに兵士と水夫の休憩区域となっております。


 第二層は船室で、内部には食堂、貯蔵室、それに三方様の休息区域がございます。


 第三層は船長室と指揮室で、戦艦の航行と作戦を指揮するために使用されます」


 彼は説明しながら、時折傍らの箇所を指し示した。


 その説明は詳細で、俺たちが理解できないのではないかと恐れているかのようだった。


 俺は船長の説明に真剣に耳を傾け、碧色の瞳で甲板上のすべてを好奇心に満ちた眼差しで見渡した。


 投石機は巨体を誇り、船の甲板のほぼ全体を占めていた。


 その機体は非常に頑丈に見え、脇には大量の石弾が積み上げられている。


 一つ一つが人の頭ほどの大きさで、どうやらクラーケンを攻撃するためのものらしい。


 水夫や兵士たちの忙しげな姿が甲板の上をすり抜けていく。


 一人ひとりが厳しい表情で、てきぱきと動いていた。


 どうやら、クラーケンとの戦いに向けた準備は整っているようだ。


 船室の構造についての説明を終えると、船長は俺たちに対して一礼し、その声は恭しい。


「三方様、船室の構造についてのご説明は以上でございます。


 私はただちに船尾の船長室に参り、他の二名の船長および小隊長たちと出航準備の状況を確認してまいります。何かご入用の際は、いつでもお申し付けください」


 母上がかすかに頷いた。


「ああ、行ってきてくれ。私たちはここでもう少し見ておく」


 船長が応じて、小走りに船尾の船長室へと向かい、入り口で姿を消した。


 船長が立ち去った後、俺たち三人は甲板上に立ち、遠くの大海原を眺めた。


 大海原は際限なく広がり、碧色の海水が澄み渡った青空とつながっていた。


 海風が顔に吹き付け、ほのかな塩気を帯びている。


 —— しかし、大海原の表面は穏やかに見えても、水面下には巨大な危険が潜んでいる。


 クラーケンは、この深海のどこかにひそんでいて、いつでも姿を現すかもしれない。


「クローディア様、ご覧なさい、海がとても綺麗!」


 ユーナが俺の手を引っ張り、興奮した声で言った。


 瞳がきらきらと光っていて、どうやら生まれて初めてこんなに広い大海原を見たらしい。


 母上が俺たちの傍らに歩み寄り、そっと二人の手を握りしめた。


「さあ、船室の中で少し休みましょう。甲板は風が強いですし、私たちが甲板にいても、どうせ何もできません。出航の準備が整うまで、大人しくしていましょう」


 俺とユーナは頷き、母上に続いて、船室へと歩み去った。


 船の乗組員は全員男性だったため、俺たち三人の生活の便を考慮して、ロジャーは船長に特別に頼んで、船内で唯一独立した洗面所付きの船長寝室を、三人のために空けてもらった。


 船長本人は、別の個室を選んだ。


 船長寝室に入った俺は、ふと申し訳なさを覚えた。


 やはり、いきなり人の部屋を奪ってしまったのだから。


 この船はあくまで作戦用の戦艦だ。


 したがって、船長寝室といえども、質素な造りが尽きている。


 室内には、小さな机が一つ、椅子が一本、それに簡素な衣装戸棚が一つ置かれている。


 隅には独立した洗面所が設けられていた。


 室内全体はきれいに片付けられていて、余分な装飾はないものの、非常に清潔感があり、心地よい。


 ただ、幸いなことに、船長室には二人用の木製ベッドが備えられていた。


 もし歴史書に載っているようなハンモックだったなら、ちょっと大変だったかもしれない。


 なにし、数日にわたって船で過ごすのだ。


 もし眠りが足りなければ、後の戦いに響くことだろう。


 船長もその点を考慮して、進んでこの部屋を譲ってくれたのだろう。


 俺は再び、心の中で船長に向けて感謝の言葉を何度も唱えた。


 母上が机の傍らに歩み寄り、その上に置かれた一枚の海図を取った。


 それを注意深く見つめ、眉をかすかにひそめ、眼差しは鋭い。


 どうやら、出航の航路やクラーケンが現れる可能性のある海域について研究しているらしい。

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