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67. 鉄甲聖騎兵降臨!亀甲陣を砕く

俺は頷き、心の底から強い衝撃を覚えた。


眼前の十二体の鉄甲聖騎兵から、濃厚な殺気がゆっくりと立ち上がってくる。


あまりの圧迫感に、俺は思わず息を飲んだ。


ユーナは思わず肩を縮め、無意識に俺の傍へ寄り添った。柔らかいピンク色の髪が俺の腕に触れ、優しい感触が広がった。


深く息を吸い込み、心の昂りを抑え、手中のグリンマンランク帝国之剣を強く握りしめる。


十二体の聖騎兵に向かって剣を振り、指示を下した。


十二体の鉄甲聖騎兵は即座に意を酌み取り、一斉に響き渡る雄たけびを上げた。


その声は耳をつんざくほど轟かじかみ、騎馬が再び長く嘶き、重い足を踏み出し前方の帝国兵へ向かって突進していった。


整然と重たい蹄音が響き、「ドンドンドン」という音が、四人の心に響き渡った。


帝国兵たちはそれを見て即座に円盾を掲げ、堅固な亀甲陣を構築した。


盾が幾重にも重なり隙間一つなく、全方位隙のない防御は常人には到底太刀打ちできないほどだった。


彼らはこの防御があれば、鉄甲聖騎兵を打ち破れなくとも攻撃を凌ぎ時間を稼げると考えていた。


だが彼らは知らない。鉄甲聖騎兵の実力は、想像をはるかに上回っていたのだ。


亀甲陣は一般の軍勢相手には絶大な効果を発揮し、大半の攻撃を防げる。


しかし所詮兵士一人ひとりの盾で組まれた防御だ。どれほど堅固でも弱点は存在し、力さえあれば陣をなぎ倒し崩すことができる。


俺は突進する鉄甲聖騎兵を固く見つめ、亀甲陣に迫りゆく姿を見て心が喉元まで上がった。


槍を持った一体の聖騎兵は、亀甲陣の隙間を突くのではなかった。


両手で長槍を強く握り頭上へ掲げ、体を少し後ろに反らし力を溜める。騎馬は依然として速いまま突進し、圧倒的な勢いを纏っていた。


騎馬が亀甲陣目前に届いた瞬間、聖騎兵は一気に力を込め、両手の槍を盾面へ強く叩きつけた。


「ガシャ――」


大音響と共に槍と盾が激突し、耳障りな金属音が響いた。


鼓膜が痛むほど響き、大地も激しく揺れ砂埃が舞い上がった。


次の瞬間、驚愕の光景が広がった。


あれほど堅固だった亀甲陣が、この一撃で複数の兵士ごと弾き飛ばされた。彼らの円盾は次々と地面に落ち「ガラガラ」と音を立てた。


兵士たちも衝撃で飛ばされ地面に叩きつけられ、起き上がろうとしても体が動かなかった。


最も惨かったのは直撃を受けた兵士たちだ。槍の衝撃で骨が砕ける音が鮮明に響き、体ごと潰れ血塗れになる凄惨な光景が広がった。


黒い血が地面を染め、鼻を刺す血臭と硝煙の匂いが混ざり、吐き気を催すほどだった。


俺は思わず眉をひそめ、瞳に憐れみが浮かび顔を逸らした。それでも戦況から目を離すことはできなかった。


これが戦場だ。生か死か、慈悲など存在しない。


ユーナは口を覆い悲鳴を飲み込み、体を震わせながらも戦場から視線を外さなかった。


亀甲陣に大きな亀裂が開いた後も、槍の聖騎兵は攻撃を止めなかった。即座に槍を引き抜き、隣接する無防備な兵士へ突き刺し続けた。


周囲の三体の聖騎兵も隙を逃さず武器を振るい、盾を失った兵士たちを次々と貫いていった。


長柄鉄槌が叩き下ろされるたび、一人の命が消え、一切の容赦はなかった。


帝国軍の百人長は状況を見て立ち上がり、聖騎兵と対峙し陣形を再建しようと試みた。


だが聖騎兵たちは彼を相手にすることすらしない。剣を持った一体が即座に馬の向きを変え百人長へ突進した。


剣が一閃し冷光が煌めき、百人長の胸を一瞬で貫いた。


この光景を見て四人は言葉を失い、驚愕のまま呼吸も忘れた。


細剣を握る俺の手が震え、信じられない思いでいた。


十二体の聖騎兵が強力だと予想していたが、これほど圧倒的な実力だとは思いもしなかった。


彼らの前では帝国歩兵はもとより、百人長ですら敵わず、まるで赤子同然だった。


「すごい…… あまりに強すぎます……」


震える声でユーナが呟き、口を覆った手を下ろし瞳に驚きが溢れていた。


「これほど一方的に兵士を圧倒し、百人長まであっさり討ち取られるなんて……」


深く息を吸い冷静になり、戦場を眺め心の重圧が半分ほど軽くなった。


鉄甲聖騎兵の攻撃は熾烈を極め、騎馬で敵陣を駆け巡り一撃一撃が正確かつ力強く無駄のない戦いを続けた。


帝国兵は反撃する術もなく一方的に蹂躙され、悲鳴・武器の衝突音・馬の嘶きが入り混じり戦場全体に響き渡った。


兵士たちは命懸けで抵抗し、剣で聖騎兵の鎧を叩きつけ「カチカチ」と音を立てた。


地面の槍を拾い騎馬を狙う者もいたが、鎧があまりに堅厚なため一切傷をつけることができなかった。


鎧に薄い痕が残るだけで、戦闘に影響はなかった。


戦いはあっという間に終結し、わずか十数分で帝国兵は十二体の聖騎兵によって全滅した。


地面には死体と武器が散乱し、草一面が血に染まり、硝煙と血臭が充満し息苦しいほどだった。


それでも十二体の鉄甲聖騎兵は一人も欠けることなく、鎧にも殆ど損傷はなかった。


整然と戦場に立ち姿を正し、殺気は一向に衰えなかった。


戦いが終わった瞬間、十二体の聖騎兵は動きを止め、頭を垂れ俺の方角へ整然と軍礼を捧げた。


その後体が徐々に透明になり、灰白色の灰へと崩れ風に乗って消え去り、荒れ果てた戦場だけが残った。


彼らは使命を終え、剣の魔力を使い果たし虚無へ帰還したのだ。


聖騎兵が灰となって消滅すると同時、眼前の聳え立つ大山が淡い白光に包まれ輝きを増し、山全体を覆った。


次の瞬間、山はまるで存在しなかったかのように跡形もなく消滅した。


代わりに現れたのは見覚えのある二本の白い石柱だった。全面に複雑な紋様が彫られ、グリンマンランク帝国之剣と全く同じ模様だった。


二本の柱の間には菫色の転移門が浮かび、柔らかく揺らぎ穏やかな光を放っていた。


門の奥は真っ暗で景色は見えないが、懐かしい気配がゆっくりと溢れてくる。


転移門を眺め瞳に光が宿り、喜びと期待が心いっぱいに広がった。


これがアムニット城へ帰る道、この恐ろしい迷宮から抜け出す出口に違いない。


俺とユーナ、チャーリー、ニーナ四人は肩を並べ門を見つめ、緊張と恐怖は喜びと望みに塗り替わっていた。


二日間ずっと神経を張り詰め一瞬も気を緩めることができなかった。


今、やっとニーナとチャーリーをこの地獄の迷宮から連れ出すことができる。


足を踏み入れた瞬間、柔らかな力が四人を包み込んだ。


周囲の景色は一瞬で切り替わり、血と死体だらけの草原から、迷宮に入った当初の密林へ戻っていた。


鬱蒼とした木々が空を覆い、木漏れ日が地面に斑な光を映していた。


清らかな草木の香りが広がり、体に染みついた硝煙と血臭を洗い流し、心地よい安らぎが広がった。


四人は急いで門から外へ出る。足が転移領域を離れた瞬間、菫色の門は透明になり微光となって消滅し、元から存在しなかったかのように姿を消した。


同時に二本の石柱も微かな「カチ」という音を立て、表面に無数の亀裂が広がっていった。


次の瞬間砕け散り白い粉となって風に乗り土へ溶け、痕跡すら残らなかった。


四人は密林に立ち、懐かしい景色を眺め長い間言葉を交わさなかった。喜びと感慨が胸いっぱいに広がっていた。


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