50. 夜の部屋
意識がすっかり覚醒したとき、俺はもう冷たい教室にはいなかった。
柔らかく心地よいベッドの上に横たわっていた。
ゆっくりと目を開け、視線を動かして周囲を確かめる。
目に飛び込んできたのは、とても丁寧に、温かみのある雰囲気で整えられた部屋だった。
壁は淡いピンク色で、ベッドの頭上には小さく可愛らしい飾りが吊るされている。
化粧台には、ユーナがよく使う櫛と、いくつかの簡単なスキンケア用品が並んでいる。
空気中には、濃厚でいながら清々しい梅の香りが充満していた。
(ここは…… ユーナの部屋だ)
俺が今眠っているベッドは自分のものではなく、ユーナのベッドだ。
魂が男性で、部屋のインテリアに一切こだわりのない俺と比べ、ユーナの部屋は明らかに少女らしい装飾が多かった。
温かく可愛らしく、隅々までユーナの匂いが充ち満ちている。
ゆっくりと首を動かし、天井に目を向ける。
そこには薄いテープの跡がいくつか残っていた。
引っ越しのときからの汚れなのか、それともユーナが何かシールやポスターを貼って剥がした跡なのかは分からない。
でも、そんなことはどうでもいい。
今の俺が気にかけるべきことでもない。
一番大事なのは —— 今は既に夜なのに、俺がまだユーナの部屋にいて、彼女のベッドで眠っているということだ。
じゃあ、ユーナはどこで寝ているんだ?
冷たい床で寝させるわけにはいかない。
そう思うと、胸の奥に淡い罪悪感が湧き上がってきた。
ゆっくりとベッドで上体を起こし、手で頭を揉んで意識をもう少しはっきりさせようとする。
長い髪が肩に流れるように、動きに合わせて揺れる。目にはもう眠気はなく、代わりに淡い疑問と罪悪感が浮かんでいた。
その時 ——
コン、コン、コン。
部屋のドアが軽く叩かれた。
柔らかくリズミカルな音で、少しも慌てた様子はない。
ドアの外の人は、明らかに俺を起こさないよう気を遣っている。
続いて、ユーナの優しい声がドアの向こうから聞こえてきた。
少し控えめな問いかけのトーンで。
「クローディア様、今、お入りしてもよろしいでしょうか」
ユーナの声を聞いて、罪悪感がさらに強くなった。
自分の身に目を落とすと、昼間に着ていた地味なロングドレスではなく、ピンクがかった白のキャミソール仕様の寝間着に着替えられている。
考えるまでもなく、この寝間着はきっとユーナが着替えさせてくれたのだ。
小さく息を吐き、衣服を着ていることを確認してから、ドアの方に声をかけた。
「うん、ユーナ。入っていいよ」
声が落ちると同時に、ドアがゆっくりと開かれた。
ユーナが熱々のお粥を一杯、手に持って部屋に入ってくる。
長い髪はきちんと肩にかけられ、優しい笑顔を浮かべ、瞳には心配そうな色が宿っていた。
今は白い無地の寝間着を身につけている。
彼女が持っているのは、オートミールに様々な野菜を合わせて煮込んだオートミール野菜粥だった。
粥は黄金色に輝き、芳醇な香りを放っている。
明らかに、これはユーナがわざわざ俺のために作ってくれたものだ。
一日中眠っていた俺がお腹を空かせているだろうと知って、手作りの粥を作り、俺が目を覚ますのを待っていたのだ。
ユーナはゆっくりとベッドの際まで歩み寄り、まず熱々の粥を慎重に枕元のテーブルに置く。
うっかりこぼして俺を火傷させないよう、細心の注意を払っている。
その後、部屋の片隅から小さなベッド用の木製テーブルを持ってきて、そっと俺の前に置いた。
動作は軽やかで、余計な音は一切立てない。
すべてを終えてから、再び枕元の粥を手に取り、慎重にテーブルの上に置いて、俺の前に差し出した。
「お目覚めですね。どうぞお召し上がりください。一日中お休みになっていましたので、お腹が空いていらっしゃるでしょう」
一日中眠っていた俺の腹は、既にぐうぐうと鳴いていた。
ずっと抗議の声を上げていたのだ。
粥の香りを嗅いだだけで空腹感がさらに込み上げ、もう我慢できなかった。
何も言わず、ただ頷くだけ。
手を伸ばしてユーナから受け取ったスプーンを取り、すぐに一口すくって口に運んだ。
粥の温度は丁度良く、熱すぎず冷たすぎず。
口に入れると柔らかく、オートミールの甘みと野菜の香りが混ざり合い、口当たりは滑らかで美味しい。
温かい暖流が喉を通ってゆっくりと胃へ流れ込み、体の冷えをすべて追い払ってくれた。
疲れた体にも、少しずつ力が戻ってくるのを感じる。
一口、また一口と粥を食べ続ける。
速くはないが、満足げな表情を浮かべていた。
ユーナはベッドの際に座り、静かに俺を見つめていた。
彼女の瞳には優しさと慈しみが充ち、穏やかな笑みを浮かべている。
口を開くことはなく、時折手を伸ばして、俺の口元に残った粥の痕をそっと拭うだけだった。
まるで希代の宝物を扱うような、優しい仕草だった。
「ありがとうございます、クローディア様」
粥をほとんど食べ終えた頃、ユーナがふと感謝の言葉を口にした。
細い声で、少し詰まるような響きを伴って。
「私のために、あの子たちを救ってくださって…… 私と同じような子たちを……
あの恐ろしい場所に潜り込んで、あの連中を一網打尽にしてくださって…… ありがとうございます」
彼女の言葉を聞いて、動作が一瞬止まる。
スプーンを置き、口の中の粥をゆっくりと飲み込んでから、振り返って微笑んだ。
笑みは淡いが、優しかった。
「当然のことをしたまでだよ、ユーナ。
あいつらはエリクソン領の法律に触れ、無辜の者を虐げ、命を踏みにじった。
公爵の後継者として、領民を守り罪を罰するのは当然の務めだ。ユーナのためだけじゃない」
ユーナは軽く首を振った。
笑顔は次第に消え、代わりに淡い悲しみと深い感謝が浮かぶ。
瞳には薄い涙が滲み、とても儚げに見えた。
(他の人には分からないかもしれない…… でも、私には分かる)
(これは、クローディア様のおっしゃる「当然のこと」なんかじゃない)
(すべては…… 私のためにしてくださったことだ)
彼女ははっきりと知っていた。
エリクソン公爵領で奴隷売買を禁じた厳しい法令が、彼女がクローディア様のそばに来た翌日から、全域で施行され始めたことを。
彼女を売り飛ばし、苛め抜いた奴隷商人が、翌日には公爵邸の者たちによって家宅捜索を受け、一族郎党が皆殺しに遭ったことを。
すべては、クローディア様が彼女の仇を討ち、これ以上傷つかないようにするため、わざわざ命じてくださったことだと。
そして今回 —— クローディア様がオリバー商会を完全に打ち倒し、彼女と同じように売られ苛まれていた子たちを救うため、自らを囮にして、あの人間の集まる屋敷に奴隷として潜入してくださったことを。
あの屋敷は入り組んでおり、未知の危険に満ちていた。
あの連中は皆、冷酷で狂気に満ち、一度正体が露見したらどうなるか分からない。
もし、今回の行動にほんの少しでも手違いがあったら —— 彼女とクローディア様は、どうしようもない地獄のような結末を迎えていただろう。
彼女自身はどうでもよかった。
元々何も持たない身で、幼い頃から売られ、苛め抜かれてきた。
今の幸せも、クローディア様がいるからこそ得られたものだ。
もし本当に何かあったら、今持っているすべてを失い、以前の暗い日々に逆戻りするだけ。
あるいは、死ぬこと自体が彼女にとっては解放かもしれない。
でも、クローディア様は違う。
彼女は身分が高く、エリクソン公爵の一人娘で、領の唯一の後継者だ。
常人には及ばない才能と学識を持ち、光り輝く未来が待っている。
誰もが羨むものをすべて持っている。
もし本当に正体が露見し、奴隷として売られ苛め抜かれたら —— 彼女は無惨になる。
エリクソン領の未来も、共に失われる。
本来なら、行動を始める前に、クローディア様にそんな大きな危険を冒さないでほしいと諫めたかった。
ラティに普通に納品させ、双方の連絡を保ち、その間にオリバー商会の隙を少しずつ突き、証拠を集め、段階的に崩していけばいい。
いつか必ず成功する日が来る。急いで身の安全を危険にさらす必要はない。
でも、クローディア様が彼女を見つめ、真剣に話した言葉を聞いたとき ——
「ユーナ、待てないんだ。一日でも遅れれば、一人や二人の無辜の子が、あなたと同じ苦しみを味わう。一つ、また一つと家庭が壊れていく」
—— 喉元まで上がった言葉を、無理やり飲み込んだ。
その瞬間、彼女は完全に理解した。
クローディア様がこうしたのは、彼女の過去の仇を討つためだけではない。
罪を罰するためだけではない。
幾千幾万の彼女と同じ悲劇を繰り返させないため。
無辜の子たちを守り、儚い家庭を守るため —— だと。
クローディア様の心は、優しく、善良で、正義感に満ちている。
そう思うと、ユーナの瞳は思わず潤んできた。
目元が赤くなり、透き通るような涙が瞳の中にいっぱい溜まり、もう抑えきれない。
修道女の老婆以来、二人目の、こんなに優しくしてくれる人だ。
体も思わず立ち上がっていた。
日頃から慕い、深く敬い、感謝しているあの人の方へ、ゆっくりと近づいていく。
足取りは軽く、少し震えていた。
体から漂う梅の香りが、ますます濃くなり、クローディア様の周りにただよう。
「きゃっ! 何するの、ユーナ!」
慣れ親しんだ、少し慌てた照れ臭い声が聞こえるまで、彼女はぼんやりとした思いに浸っていた。
顔を上げて目の前のクローディア様を見ると、自分がいつの間にかベッドの際まで来て、しかも思わずクローディア様の頬に軽くキスをしていたことに気づいた。
目の前にいるのは、先ほどまで穏やかだった公爵令嬢ではなく ——
顔を真っ赤にし、耳の先まで火照らせた少女だった。
クローディア様の頬は、白い肌に淡い紅潮が浮かび、熟した林檎のように可愛らしく魅力的だった。
瞳には慌てと照れが充ち、小さな怒りと手探りな様子が混ざっている。
手でキスされた頬をぎゅっと覆い、声は少し震えて、甘えるような口調で咎めた。
「もう、何考えてるの! いきなりキスするなんて!
ほら、粥こぼしちゃったじゃない!」
ユーナは彼女の視線に従って見ると、自分の行動のせいでクローディア様の持っていたスプーンが床に落ち、
椀の中に残っていた少量の粥が柔らかい絨毯の上にこぼれ、汚してしまっていた。
でも、今のユーナは何かに取り憑かれたように、クローディア様の咎めも、床に落ちたスプーンも、こぼれた粥も、気にしていなかった。
心の中には、深い愛しさだけがあり、彼女にもっと近づきたいという想いだけがあった。
何も言わず、少し俯いて、目の前で真っ赤になっているクローディア様を見つめた。
ピンク色の瞳には、揺るぎない決意と優しさが宿っていた。
そして —— 迷うことなく、クローディア様のいる布団の中に潜り込み、細い体を強く抱きしめた。
「きゃっ! ユーナ、何するのよ~! 離れなさい!」
突然の行動に驚いたクローディア様は、体が少し硬直し、顔の紅潮がさらに濃くなった。
首筋まで淡いピンク色に染まっている。
手を伸ばしてユーナを押しのけようとするが、ユーナはしっかりと抱きしめていて、
小さな体は少し震えながらも、揺るぎない力を秘めていた。
どう押しても押しのけられない。
声はさらに甘えた口調になり、慌てと、隠しきれない優しさを混ぜて、部屋中に響いた。
ユーナは何も言わず、ただ顔をクローディア様の白い首筋にぴったりと押しつけ、
温かい肌の感触を感じ、規則正しい鼓動を感じ、体から漂う淡い椿の香りを貪るように吸い込んだ。
彼女の体から放たれる梅の香りと、クローディア様の椿の香りが絡み合い、温かく、心癒される。




