338. チーズは力なり
特売会の準備をすべてジュリアンに任せてからというもの、商会の支店は上が下が大わらわだった。
毎朝、荷運び人がビロードで包んだ展示台を担いで裏口から出入りしていた。
ジュリアンは玄関広間で物資の束ごとに品書きを照合し、終わると炭筆で木の挟み板の一行を消し、次の頁をめくる。
そういう作業のとき、彼は確認を繰り返したりしない。
一行の数字は、一度見れば足りるのだ。
私とユーナが裏口から出たとき、彼は展示台の脇にしゃがんで物差しでビロードの長さを測っていた。
口に炭筆をくわえ、もう一方の手で布の端を押さえている。
彼は顔を上げて私たちを見ると、炭筆を口から外し、立ち上がって一度うなずいた。それからまたしゃがんで、布を測り続けた。
余計な挨拶はなかった。
通りを行く人は、街に着いた日より少し少ない。
午後の日差しが両側の軒のあいだから斜めに落ち、石畳の上にくっきりとした明暗の境界線を引いている。
鳩が境界線の陰になった側にしゃがみ込み、羽を膨らませていた。人が近づいても、渋々といった様子で二歩ほど横へ跳ぶだけだ。
私は歩きながら、ここ数日頭の中で繰り返し巡らせていたことを、もう一度整理し直した。
ハーランド帝国の内戦は、もう一年になる。
撃っては止み、その合間に家へ帰って麦を刈る、あの中世の戦争ではない。
魔人化の技術は、戦争を砦同士の睨み合いから、消耗戦の泥沼へと引きずり込んだ。
魔人は転換前の五日間、常人の数倍の食料を摂らなければならない。ところが今、帝国領内の村という村は、税のせいで畑を捨てている。
農民はエリクソンへ逃げ込むか、前線へ引っ張られて塹壕を埋めるかだ。
糧を生み出す機械は止まり、糧を食う機械だけが回転を速めている。
両陣営とも、我々の穀物を握っている。
私が気前がいいからではない。
戦い続けてほしいだけだ。
毎週送り込む穀物は、ちょうど一週間分の戦いを維持できる量。多くもなく、少なくもない。
ハインツの方は、北方領土の請求権を穀物と引き換えにし始めている。
主要な町いくつかの法的文書だ。反乱軍の臨時政府の印が捺され、防湿の革筒に収められて、先月、公爵府の書斎に届いた。
北のエイドリアンは最初は強気だった。そこでこちらが三週間穀物を止めると、彼の使者は北方領土と西南領土の租借期間三十年、年金銅貨一枚という賃貸協定を持って、ブレン関隘の城門前に現れた。
ブレン関隘。
地形は険しく、両側の山壁はほとんど垂直で、真ん中の隘路は最も狭いところで二百歩に足りない。
たとえあの兄弟がいつか突然手を握り、連合して兵を出したとしても、一週間でブレンを落とすことは不可能だ。
一週間もすれば、彼らの穀倉は底をつく。
周辺の国はみな戸を閉めて眺めている。
オリヴィア教会はハーランド帝国の魔人化技術を「異端の疑い」と認定した。国境を接する教国はすべて、それを理由に国境線を封鎖している。
誰も彼らに穀物を売らない。
魔族の技術に手を染めた政権と関わりを持ちたがる者はいない。
だが、同じくらい彼らは我々を見ている。
エリクソン公国は「商船の自由航行の保護」を名目に北方領土へ進駐し、「海賊の巣の掃討」を理由に西南領土を占領した。この二つの口実は、国際外交の場ではぎりぎり通用する。
しかし、我々が法の上でやりすぎれば、周りの隣国はいつでも手のひらを返しうる。
彼らは本当にオリヴィアの教義を気にしているわけではない。ハーランド帝国という肉を、我々一家に独り占めされるかどうかを気にしているだけだ。
だから私はオリヴィア神国へ行く。
精霊族は名目上オタヴィア教を信仰している。オリヴィア教とは源を同じくするが、とうに分かれている。
教皇庁の承認を取れれば。
たとえ、曖昧な文言の中立声明が一枚だけであっても。
ハーランド領土の占領の正当性は、「軍事占領」から「委任統治」へ格上げされる。
少なくとも周辺の領主たちが兵を出す決断をする前に、教皇の面子を量らなければならなくなる。
もちろん、それは今日片づける問題ではない。
教皇城はオリヴィア神国の奥地にあり、ウィスタニアを発てば最低でも一か月の道のりだ。
競売会は二か月後。特売会が早く終われば、空いた時間で往復できるはずだ。
「クローディア」
ユーナの声に、私は思考の底から引き上げられた。
彼女は魔法で髪の色を黒く偽装していた。
彼女は一つの店の前に立ち、指で棚に何列も並んだチーズを指している。
この店の間口は、他の屋台より一回り大きい。
通りに面した棚は木の細板を打ちつけたもので、下の梁は長年の重みでわずかに沈み、沈んだところには瓦の欠片が何枚か挟んで高さを合わせてあった。
棚には大小のチーズとチーズのホイールが並び、どれも濃淡の異なる蝋か布で包まれている。
通路に最も近い列は、蝋の色が濃い黄から乳白へ、乳白色から灰がかった淡い青へと移り、午後の光の下でまったく違う質感を見せていた。
粗い麻のエプロンを着た中年の男が、棚の後ろの小さな腰掛けから立ち上がった。
手に持っていた布巾を肩に掛け、エプロンには乾いた乳の染みが幾筋かと、色の濃い油の染みが一つ。袖は肘の上までまくられ、日焼けして浅黒い前腕が二本ぞいている。
「どうです、お嬢さん方、チーズを見ていきますか」
店主の声はよく通った。口を開いただけで、隣の陶器屋の呼び込みを飲み込む。
「うちのチーズは、この通りのなかで一番種類が多いんですよ」
ユーナは上半身を半分ほど前に出し、目を最初の列から最後の列まで走らせて、また戻した。
黒く偽装した髪が、身を乗り出した拍子に肩の後ろから鎖骨の前へ滑り、毛先が円形のカマンベールの皮に触れそうになる。
彼女は指先でそのチーズの蝋の皮をつついた。乳白色の皮には、細かい型押しの輪が一周刻まれている。
「ふうん? これに何か特徴があるんですか? チーズはみんなチーズでしょう」
「お嬢さん、それは違いますよ」
店主は手をエプロンから離し、棚の横へ歩いて、順に指を差していった。
指はまず、一番黄色いチーズに落ちた。関節は太く、爪の間に洗い落としきれていない凝固した乳脂肪が少し残っている。
「この色の濃いのが、うちではオールド・アロン。ミルクの味が濃くて、身が詰まってる。切ると包丁に脂の光が一層つく。溶かしてパンに塗るのが一番です」
彼は指を手のひら一つ分ほど横へ移し、乳白色のホイールを突いた。
「これはマルティーノ。口当たりはオールド・アロンより柔らかくて、少し甘みがある。砂糖の甘さじゃない。噛み終わってから舌の根にふっと上がってくる、ミルクの香りの甘さだ。子どもが一番好きなやつです」
それから彼はしゃがみ、棚の一番下から灰青の蝋で包まれたチーズを両手で抱え出した。前の二つより、ずっと丁寧な手つきだった。
そのチーズは上の二つより一回り小さい。蝋の表面には不規則な濃紺の筋が何本か走り、大理石の目が蝋の層に滲み出したようだった。
「これはカラマン。うちで一番売れないが、俺自身が一番好きなやつだ。味は辛めで、塩の香りがする。発酵の途中で自然に生えてくる匂いの刺激だな。酒に合わせるのが最高だ。嫌いな奴は一口でフォークを置く。好きな奴は一口で止まらなくなる」
彼はカラマンを棚に戻し、立ち上がった。肩から布巾が滑り、彼は何気なく受け止める。
「チーズはな、乳の出どころが違う、発酵の時間が違う、カードを温める温度が違う、塩を入れるか入れないか、入れるならどれだけか。それだけで、最後に出てくるものはまったく別のものになるんです」
ユーナの唇が少し開いていた。
彼女は棚からカラマンを持ち上げ、裏返して製造日を見る。蝋の上に炭筆で小さな字が一行書かれていて、筆跡は半分ほど擦れて潰れていた。
チーズを置き、今度はオールド・アロンを手に取って鼻を近づけた。鼻先と蝋の皮の間は、指一本ぶんしかない。
「なるほど!」
彼女は振り返り、棚からオールド・アロンを取り、それからマルティーノも引き寄せ、最後にカラマンを一秒見つめてから、それも抱え上げて腕に収め、収納の腕輪を探り始めた。
腕輪が小さくなり、彼女の指の間に金貨が二枚現れる。
金貨の表面が日差しを受けて鋭く一度反射し、店主の足元の石畳を照らして、石の隙間で揺れてすぐ消えた。
「チーズ、一種類ずつください!」
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