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339. 木靴

 彼はユーナを見て、それから私を見て、手を伸ばして金貨を受け取った。


 親指で金貨の縁を一周なぞり、縁の刻みの厚みを確かめ、それから重みを量って、エプロンの腹の前のポケットにしまった。


「はいよ、お嬢さん。ちょっと待ってな、すぐ包んでやる。棚に上げてない種類もいくつかあるから、それも一緒に包んでおくよ。何か特に好みはあるかい」


「選ばなくていいです」


 ユーナの指が棚の方向を指した。


「全部包んでください」


 店主は手をこすり合わせた。


 布巾を肩から外して売り台の上に置き、棚の後ろの内室へ通じる木の扉を押し開ける。


 鴨居は低く、彼は一度頭を下げてやっとくぐった。


 中からすぐに、箱という箱をひっくり返す音が聞こえてきた。木箱の蓋をこじ開け、藁の詰め物をかき分け、麻布を折り、麻縄で縛る音が交互に続く。


「そんなに買って、食べきれるの?」


 私は顔を横に向けてユーナを見た。


 彼女はもう試食用のチーズを棚に戻し、指の腹で指先についた蝋の屑を拭っていた。


「収納の腕輪があるから、傷まないもん」


 彼女は自分の手首を叩いた。腕輪の金属の留め金が、日差しを受けて光る。


「それに、この世界にはチーズが八千種類もあるんだよ。店主さんはうちには千種類もないって言ってたけど、つまり他の店にも違う種類があるってことじゃない」


 彼女は指を折って、一本ずつ数え始めた。


「紅龍国のスーパーなんて、いつも同じ数種類しかないんだよ。モッツァレラ、チェダー、パルメザン」


 そこまで言って、彼女は息を吸った。


 彼女と知り合ってからこれまでで、口が一番速かった。


 店主は内室から、麻袋に入れたチーズを抱えて出てきた。


 売り台の上に置くと、ずしりと詰まった音がした。


 それから振り返り、棚から先ほど紹介しなかったチーズを二つ取って、麻袋の横の隙間にねじ込んだ。詰め終えると麻袋の側面を叩き、布についた藁の屑を落とす。


「お嬢さん、全部で六十三種類になります。一種類ずつ小さく切って別に包んでおきました。名前と特徴は包み紙に書いてあります」


 ユーナは麻袋を収納の腕輪に押し込んだ。腕輪の収納空間の波が手首の周りに浅い波紋を立て、麻袋は空気のなかに消えた。


 彼女は振り返って腕輪を叩き、私に向けて得意げに笑った。


 チーズ店を出たとき、ユーナはまだ指を折って今買った種類の数を数えていた。途中で諦めて、帰ったらチーズの名前と風味を新しいノートに書き留めると言い出した。


 四十歩ほど進むと、街の面が急に広がった。


 両側の店の間隔が、それまでの腕二本分から三倍近い距離に変わり、真ん中に空いた区画は露天の荷台で埋められている。


 荷台の屋根は粗い麻布と竹竿で仮に組んだもので、布は日に焼けて色が抜け、端には針と糸で繕った跡が数本ある。縫い目は歪み、糸の色は元の布と合っておらず、継ぎ当ては別の古布から切り取って縫い付けたように見えた。


 この通りの品揃えは、さっき見てきた香辛料の売り場とはまるで違う。


 ほとんどどの屋台にも乳製品の姿がある。木の棚にはチーズのホイールが一列に積まれ、どれも違う色の蝋で封じられていた。濃い黄、乳白、薄い灰、それに緑がかったオリーブ色。


 隣の屋台はバターを売っている。バターは小さな陶壺に入れられ、壺の口は麻布で覆われ、細い麻縄が縁に沿ってきつく縛られていた。


 店主が木の板でバターを少しすくい、小さな男の子の手の甲に塗ってやった。男の子は手を鼻の前へ持っていって匂いを嗅ぎ、それから手の甲のバターを舐め取った。


 さらに数歩進むと、空気の匂いがミルクの香りから、もっと重く濃い別のものに変わった。牛肉だ。


 燻製肉屋の軒下には、干した牛肉がびっしりと吊るされている。どれも一端に麻縄を通し、結び目は軒の梁に並んだ鉄の鉤に掛けられていた。


 牛肉の表面は濃い褐色の乾いた殻になり、骨に近いところには塩漬けのときに塗った粗塩の粒がまだ残っている。


 主人は低い木の腰掛けに座り、薄刃の包丁を握って、燻したばかりの牛肉を薄く切っていた。一枚切るごとに刃の面に載せて、そばの油紙を敷いた木箱に並べていく。


「試してみるかい」


 彼は顔も上げず、刃先で木箱の方を指した。


 私は一枚つまんで口に入れた。


 肉は舌の上でゆっくりと柔らかくなった。まず塩気が飛び出し、次に木の燻煙の匂い、最後に牛肉そのものの脂の香りが後ろで締める。


 タニアの低地は国土の半分以上を占め、沼地と湿った草地が、耕作に適した乾いた畑よりずっと多い。


 ここで牛を一頭飼う方が、麦畑を一反開くより割がいい。だからこの通りの特産は、ほぼすべて畜産の産物で回っている。


 タニア王国内だけでも、地域ごとに伝わったチーズの製法は五百種類以上ある。どこかの村にしか伝わらず、書き残された記録もない独自の作り方を除いても、だ。


 だが、この通りで一番特別なものは食べ物ではない。


 商業街を北へ折れた角で、一軒の店の間口が左右の店より一段狭い。庇の上の看板には店名がなく、木靴の側面の輪郭だけが描かれている。輪郭は焼き鏨で板に焼き付けたもので、線の縁にはうっすらと焦げがついていた。


 店の窓の下には、すでに仕上がった品が並んでいる。


 どれも木靴だ。


 底がとても厚い。


 この通りでよく見る革靴と違い、甲と底を縫い合わせてはいない。一足ずつが、一本の木をまるごと削り出したものだ。


 木靴の表面には手描きの顔料で模様が描かれている。花の文様、幾何学の文様、鳥や魚の横顔を描いたものもある。筆遣いは細かくないが、色はとても濃く、木の地色の上でよく跳ねた。


 一番前に置かれた一足には風車が描かれていた。四枚の羽根に青と黄が交互に塗られ、靴の内側にはチューリップが一叢描かれている。花の茎は底の縁から上へ伸び、靴の口に近いところまで届いていた。


 店の職人は入り口の低い作業台に向かい、湾曲した刃のくり抜き刀を握って、靴の形に削り出した木の内側を彫り抜いていた。


 木屑が手元から滑り落ち、床の鉋屑の山に積もる。山の頂は、もう彼の足首に届きそうだった。


 彼は刃を止め、親指で靴の内側を一周なぞり、ささくれを数本払い落としてから靴を裏返し、底を二度叩いた。


 木がくぐもった詰まった音を立てる。


 低地は沼が多い。革靴は泥にはまると抜けなくなるし、長く浸かれば革が固くなって裂ける。


 それに対して木靴は、一本の木をくり抜いたものだ。水に浸けても腐らず、水も入らない。


 履くときは中に乾草か古布を敷く。冬は保温になり、夏は汗を吸う。


 彼は彫り終えた靴を作業台の横の木の棚に置き、棚から模様の描かれた製品を一足取って、私たちの前の売り台に置いた。


 売り台の天板は細かな傷だらけだ。刃が残したものもあり、紙やすりの痕もある。


 彼は靴を半寸ほど前に押し出し、それから戻って再び刃を手に取り、次の木を彫り始めた。


 窓際の棚には木靴が二十足ほど並び、色は濃い赤から深緑まである。


 私は赤い一足を手に取った。表面の顔料はもう完全に乾いていて、近づけると桐油と松の木の匂いがうっすら混ざって漂う。


 描かれているのは大きな椿だ。花びらは白と淡い桃で縁取り、花芯は濃い赤の点描でびっしりと打たれ、筆は半ば開いた靴の面で綺麗に収まっている。


 ユーナはその列から金色の一足を抜き出した。描かれているのは麦の穂で、靴の先から口の方へ向かって束になって広がり、麦の粒は金色の地の上に黄の顔料で点を打ってある。遠目には、盛り上がった細かな光の斑に見える。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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