337. 特売会
彼の指が燕尾服の裾から離れ、ズボンの脇に垂れた。もう一度握り直すことはなかった。
彼はもう、何も言わなかった。
私を見て、唇がそっと動き、それから音は何も出なかった。
階段口の方へ二歩下がって、振り返って階下へ降りていく。
足音は、階段の踊り場で消えた。
鉢植えの横のビロードの敷布は、彼が通り過ぎたときに裾に引っかかって少しずれ、まだずれたままになっている。
私はクラフの方へ向き直った。
「クラフさん、ここの代理をしている者に、私の部屋の応接室へ来るように伝えてください」
クラフはうなずいた。
彼が振り返って階段を降りるとき、軍靴が大理石の段を踏んで規則正しい軽い音を立てた。普段より、少しだけ速い。
ホールを通りがかりに、彼はエリソンがさっき身分証を確認するときに扉の脇の戸棚に置いた身分証を、そのまま持ち去っていった。
主寝室の応接室は、階下の玄関ホールより一回り小さい。だが、しつらえは清潔だった。
窓台には階段と同じ深紅の絨毯が敷かれ、カーテンは淡いベージュの麻布で、夕風に揺れるたびに布の裾が窓台の大理石をそっと撫でていく。
ソファの向かいには低いローテーブルが置かれ、その上には真鍮の燭台と火の点いていない小さな香炉があった。
扉が叩かれたとき、私は地球から持ってきた見本箱を、ちょうどローテーブルの脇に下ろしたところだった。
「クローディア様」
扉の外の者が言った。
「私、ジュリアン・フォッシュと申します。ここの最高代理指揮官を務めております」
「入って」
扉が開き、入ってきたのは金髪の若者だった。見たところ、二十五歳を超えてはいない。
体格はどちらかといえば角張っていて、肩幅はエリソンより一回り広い。上着の肩の線が、ぴんと張っている。
髪は標準的な短髪で、もみあげはきれいに剃られ、うなじの生え際も揃えてある。
彼の目はローテーブルの上の、まだ包みを解いていない見本箱に落ち、すぐに視線を戻し、私の向かいで立ち止まった。
「座って」
私は指で向かいのソファを示した。
「呼んだのは、これから開く専用の販売会について相談するためよ」
ジュリアンは腰を下ろした。
彼は、多くの者が目上の前でそうするように、ソファの縁に腰掛けて尻を半分だけ載せる、という座り方はしなかった。
背中を背もたれにしっかりと預け、それから上体をわずかに前へ傾け、肘を膝について、十本の指を顔の前で組む。
「クローディア様のお役に立てるのなら、光栄です」
そう言うとき、彼は余計な修飾を付け加えなかった。言い終えると、静かに私が続けるのを待っている。
私は見本箱から、持ってきた品を一つずつ取り出し、ローテーブルの上に並べていった。
まず、ガラス瓶に入った香水が一列。瓶は台形で、蓋には色落ちない金属メッキが施されている。灯りの下で、柔らかな弧の光を反射する。
次に、機械式の腕時計がいくつか。文字盤は白いエナメル地、ベルトは柔らかな仔牛革。秒針は一秒ごとに一度跳ね、耳を近づけなければ聞こえないほどの微かな音を立てる。
続いて、プラスチック製の髪留めと置物の一式。蝶の形をした髪留めの羽には人造ダイヤが散りばめられ、光を当てると、壁一面に細かな彩色の光の粒を投げかける。
兎の形をした卓上の置物は、耳が取り外せる。腹のなかには回転するオルゴールのぜんまいが仕込まれていて、巻き上げると四小節ほどの単純な旋律を奏でる。
ジュリアンの体が、さらに少し前へ傾いた。
膝の上から手が上がり、ローテーブルの香水の列へ伸びる。アンド途中で止まり、手は引っ込められた。
彼は私の手を見て、私がそのうちの一本を彼の前へ押し出すのを待ってから、瓶を手に取った。蓋を半分ほど回して開け、瓶口の上で掌をそっと扇ぐ。
香りが瓶口から広がっていく。トップノートはシトラスとレモン、ミドルノートはゆっくりとローズとスズランへ移り、ラストノートにはごく淡いムスクが潜んでいる。混ざり合ったそれは、甘ったるくない、花と果実の爽やかな香りだった。
彼は蓋を閉め直し、瓶をローテーブルの上へ戻した。
それから隣の機械式腕時計を手に取り、文字盤を上に向け、秒針が一周するのを、ぐるりと一周し終えるまで見つめた。
「今回、お持ちくださった品は……」
言いかけて、彼は一度止まり、残り半分の言葉を飲み込んだ。もっと慎重な言い方に変える。
「これほど細かい細工の品は、見たことがありません。この香水の香りの重なりは、街のどの調香工房よりも豊かです。この時計の中身のムーブメントは、どこの職人が組んだものですか。秒針の動きを、こんな精度に収められるなんて」
彼は時計を置き、顔を上げて私を見た。唇が動く。
「クローディア様、これらは一体どこから……」
彼は自分で、その言葉を切った。
太ももの上から手が上がり、閉じたばかりの口を押さえる。それから素早く下ろし、膝の前で組み直した。
彼の座り方は、さっきより少し後ろに引いている。
「申し訳ありません、様。もしこの言葉がご気分を害したのであれば、深くお詫び申し上げます。どのようなお咎めでも受けます」
私は笑った。
「大丈夫よ。この計画について、他に提案はある? あるなら、今のうちに言ってちょうだい」
ジュリアンは首を振った。
彼はあの蝶の髪留めを再び手に取り、その人造ダイヤが灯りの下で一度きらめいた。光の粒が、左の頬の頬骨のあたりに落ちる。彼は顔を背けて、それを避けようとしなかった。
「我々の商会は、この街の貴族のあいだで、もともとそれなりの発言力を持っています。前回までの特別販売会では、色とりどりのガラス細工を並べた端から、売り切れました。値札を書き終えないうちに、腕輪もペンダントも持っていかれました。ここ数日も、常連の方々に何度も訊かれております。次はいつ開くのかと」
彼は髪留めをローテーブルの上へ戻し、香水と機械式腕時計のあいだに置いた。
三つの品が、不揃いな一本の線に並ぶ。
「我々が情報を流しさえすれば、二週間後にクローディア商会が大型の特売会を開くと」
彼は言った。
「皆、喜んで来ます。しかも今回の品は、ガラス細工とは比べ物にならない。この髪留め一つで、前回の一番高かったガラスの耳飾りが、足の裏を削る砂利同然に見えます」
彼は手を引っ込め、膝の前で組み直した。
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