333. 報い
どれだけ経ったのか、真っ暗な世界のなかに光の粒が現れ始めた。
初めは針の先ほどの白い光の斑がいくつか、視界の端で数度震え、そしてそれらの斑が広がり始める。墨を清水に落としたように、ゆっくりと滲んでいく。
暗さは純粋な無から薄い灰色になり、灰色のなかからぼんやりとした輪郭が浮かび上がる。
空の灰青、雲の後ろにある太陽の位置、遠い山の稜線の起伏、近くの地面に踏み潰された草の一片。
ユーナはまばたきをした。
瞼がひどく重い。膠で貼り付けられて、そして引き剥がされたかのように。
肺へ最初に吸い込んだ空気には、土の生臭さと草の青い匂い、それに完全には消えきっていない焦げ臭さが少し混じっていた。
その焦げ臭さが、幻のなかで燃えていた茅の屋根からではなく、すぐ傍で黒晶人ヘイジンレンに砕かれた馬車の残骸から来ていると気づくまでに、彼女は数秒を要した。
「どうして、まだここにいるの?」
声はひどく嗄れていた。
喉には紙やすりで削られたような乾きがある。一語一語が喉を通るたび、同じ炎症を起こした部分を擦っていく。
彼女は首を巡らせて周囲を見た。真ん中から折れた馬車の車体が道端に横たわり、側板には完全には砕けていない黒い結晶の破片が数枚刺さったまま、午後の光のなかで不規則な反射を返している。
荷を引いていた馬は、もう骨格だけが轅に残っていた。骨の表面はゆっくり剥がれつつある黒い結晶の膜に覆われ、蝉の抜け殻のように骨から角を反らせている。
この景色は、彼女が幻のなかへ落ちる前とまったく同じだった。ただ、戦場だけが時間によって横へ押しやられている。
戦いの痕はまだある。だが、もう誰も戦っていない。
「物語はまだ終わっていないからよ。あなたが今いる体を見てみなさい」
あの声がまた来た。
今度は前よりも軽く、薄い紗を一枚隔てて話しているようだった。だが、聞き分けはつく。
同じ人だ。あの麦畑で「これは私の意識があなたと話しているの」と言った婦人。
ユーナは反射的に自分の手を見下ろした。
彼女のものではない。
というより、もう彼女がさっきまで見ていたあの四十数歳の婦人の体ではない。
この両手は全体が漆黒で、どの指の関節にも稜角のはっきりした晶面がある。晶面の上にはとても淡い暗い光が浮いている。反射ではない。彼女は確認した。今、光源はない。
この光は結晶の内側から放たれている。寒色で、暗い青に寄っている。夜の蛍火を石のなかに封じ込めたようだ。
彼女は手を返す。
掌の位置も一枚の晶面で、磨き上げた黒曜石のように平らだった。
晶面の奥には、ぼんぼりとした影像が映っている。背中を丸めた老人で、背には長槍に貫かれた札板の跡が残っている。
彼女は手を横へ向ける。親指の側を向いた晶面には、別の影が映っていた。若い女で、鎖骨のところにぼんぼりとした奴隷の刻印がある。
どの暗い光のなかにも、一つの姿がある。
ユーナはしばらくその影を見つめ、そして手を下ろした。
彼女の胸腔には鼓動がない。
この体には心臓がない。
呼吸の起伏は、彼女には説明がつかない運動の仕方から来ている。結晶の内部で何かが肺の代わりに気体の交換を済ませているようだ。
彼女は息を吐いた。実際には息はないのに、結晶の表面にごく薄い白い霜が結び、そしてすぐに蒸発した。
彼女は顔を上げる。
周りには大勢が立っている。
先ほどのあの空地で追い立てられていた村人ではない。
兵士だ。
鎧にはハーランド帝国の紋章が刻まれ、鎖帷子の輪は一つ一つ防錆の層で覆われ、接ぎ目にだけ暗い赤の錆が少し覗いている。
彼らは長槍と剣と盾を握り、半円形になって彼女を、いや、この体を囲い込んでいる。
松明の光が鎧の上で跳ね、一人一人の影を長く引き伸ばす。影の先は他人の影と重なり合い、地面に幾重にも積み重なった黒い区画を作っていた。
彼らの顔は、ユーナの記憶にあるものとは違う。
幻のなかで見たあの顔、燃える家を囲んで踊り、歯茎が見えるほど笑っていたあの顔は、今はすべて引きつっている。
唇は一本の線に結ばれ、視線は結晶の体の輪郭と、背後の村へ続く道との間を行き来していた。
一番前の列の兵士たちは、長槍を握る手がわずかに震え、槍先がそれにつれて上下する。幅は小さい。だが、松明の拡散した光のなかではっきりと見て取れた。
黒晶人ヘイジンレンの手が動いた。
ユーナの意識はこの体に憑いている。だが、その動きを操ることはできない。彼女はただの傍観者だ。すでに起きた再生を、観客席に招かれて見せられている。
黒い結晶で組み上げられた長剣が、黒晶人ヘイジンレンの右手の側から振り出される。刀身は腕の側面の晶面から生え出ている。氷が水面で急速に固まるように。
刃には研ぎの痕がない。だが、結晶の縁そのものが最も鋭い刃である。
最初の斬撃が、およそ正面の三歩の位置へ落ちた。
そこには盾を持つ兵士が二人立っていた。盾は木に鉄板を被せた軽盾だ。二人は盾を重ね、小さな障壁を作ろうとしている。
剣が落ちたとき、鉄板がごく短い裂ける音を立て、そして盾が割れて、二人は同時に後ろへ倒れた。
彼らの胸甲の真ん中には、それぞれ清潔な長い口が開いている。鎖骨の下から肋骨の下端まで。
傷からは血が出ていない。というより、血が出る間もなく、黒い結晶が裂け目の縁から外へ生え始め、霜が窓ガラスを這い上がるように、鎖帷子の隙間を伝って広がっていく。
最初に斬り倒された兵士は、倒れる前からもう変わり始めていた。
指が先に黒くなる。結晶が爪の下の床から外へ噴き出し、指の節ごとに肌の色を飲み込んでいく。
彼はもう片方の手で自分の右手首を掴もうとした。その動作は、結晶が肩に達する前に中断する。前腕ごと肘の関節まで、もう神経からの指令に従わなかったからだ。
彼は口を開き、喉から曖昧な息の音を漏らした。そして下顎が結晶に覆われ、その音は途切れた。
数秒後、彼は立ち上がった。
筋肉と腱と骨によるのではない。全身を覆った黒い結晶によってだ。
彼は地面に落ちた剣を拾い上げる。動作に一片の遅れもない。倒れる前よりむしろ滑らかだった。
アンド振り返り、剣先を自分の後ろに立っている同胞へ向ける。
「まずい、この魔物は人を傷つけると俺たちまでああなるぞ! 逃げろ!」
叫んだ兵士は、おそらく隊で一番の古株だった。
兜には他の誰よりも稜線の装飾が一本多く、肩甲には色の褪せた赤い腕章が下がっている。
叫び終えたあと、彼自身は逃げなかった。三歩後退し、アンド背後から押し寄せてきた潰走兵に巻き込まれて一緒に下がっていく。
陣形はその一瞬で完全に崩れた。
長槍が地面に落ち、踏まれる。柄が泥のなかで二度転がり、槍先が枯れ草の一叢に突き刺さって止まった。
松明も落ちた。脂が鉄の松明受けから流れ出し、傍の乾いた苔を少し焦がし、炎はひとりでに消えた。
黒晶人ヘイジンレンは止まらない。
その歩みは人間の兵士よりずっと速く、一歩が地に落ちるたび、足裏から黒い結晶が生え、土の上にしばらく消えない結晶化した足跡を残した。
それは地面に落ちた剣や盾を踏み越えていく。盾の鉄板は踏まれて窪み、剣の柄の革の帯は踏み潰されて外れた。
最も遅く走っていた数人の兵士に追いつき、一太刀で背中を横に薙ぎ、倒れつつある体を越えてさらに追いかける。
変換は、ほとんど倒れる前に終わっている。
倒れた兵士は膝が地につく前に、首の後ろから最初の結晶の尖端が生えている。完全に泥の上へ伏せるころには、結晶の膜は首の後ろから背中全体へ広がり、さらに背骨から四肢の末端へ拡散していた。
彼らは自分の体の両側の地面を押して立ち上がる。指は開き、掌が地面を離れるとき、泥の上にはいっさい血の跡が残らなかった。
ユーナは目を閉じたかった。
この体のなかに、閉じられる目はない。それでも、彼女は試した。
彼女は自分の意識をこの再生装置から引き抜こうとした。あの麦畑の暴力の幻に続く、もう一つの暴力の再生から逃げようとした。
意識は動かなかった。
光景は流れ続ける。
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