323. 交戦間近
ライオネルは、自分を少しでも強く見せようとする彼の様子を見て、真剣な表情をわずかに緩めた。
彼は手を伸ばし、ユージンの肩を二度叩いた。
掌が肩章に落ちる音は、軽く、確かだった。
「よし、今回はお前に一度、戦場を体験させてやる。陸軍の兵士として、お前にはこれから戦場に出る時間がいくらでもある。この一瞬に焦ることはない。なにしろ海上は、お前たちの戦場でもないのだからな。後方でじっとしていられるなら、それが私への一番の助けだ」
彼は手を戻し、振り返って、再び埠頭の方へ向き直った。
彼はユージンに背を向けて手を振り、声も日頃の指揮のときの落ち着きに戻った。
「よし、私はまだ船の調整を続ける。お前は先に、自分の部隊の連中と落ち合って、訓練の支度をしろ。用があれば人を寄越せ。埠頭を勝手にうろつくな」
彼は前へ歩き出した。
背後からは、もう声はかからなかった。
彼は数歩歩くと、一艘の三本マスト帆船の脇で立ち止まり、腰をかがめて舷側に固定されたバリスタの台座を点検した。鋳鉄製で、表面には防錆の黒い塗料が塗られ、土台のボルトは固く締められ、緩みはなかった。
彼は背を伸ばし、歩き続けた。
埠頭のさらに奥では、水夫が数人、太い麻縄で編んだ網袋で、磨き上げた球形の石弾を舷側へ吊り上げていた。一つひとつの直径はおよそ二十センチから二十五センチで、表面はおおよそ丸く磨かれていた。
灰のローブを着た魔導師が一人、桟橋の縁にしゃがみ、膝の上に半分まで開いた冊子を広げ、すでに積み込まれた魔導器の数を数えていた。
ライオネルが彼の背後を通り過ぎるとき、その冊子を一目見た。上には墨で簡易なルーン構造図が描かれ、角のあたりに数字が書き込まれていた。
灰青色の海面では、光の斑がうねりに合わせて揺れ、まるでまだ駒が置かれていない一枚の大きな盤のようだった。
戦闘の日の朝は、思っていたより早くやってきた。
ライオネルは旗艦「海王戟号」の後甲板に立ち、手を手すりに置いて、前方で次第に明るくなっていく水平線を眺めていた。
風は北東から吹き、塩辛い水の匂いを運び、旗をはためかせた。彼の背後のマストの頂では、深い藍色のインゲリア海軍旗が、朝の光のなかでゆっくりと広がっていた。
艦隊全体は、すでに出航の隊形を整えていた。
一番前は三艘の快速偵察艦で、二本マストの縦帆、船体は軽く、吃水は浅く、微風でも高い船足を保った。
それらは前方およそ一海里のところで扇形に展開し、主力との目視距離を保っていた。
主力艦隊はその後ろに続き、二列の縦隊の陣形を組んでいた。
左側は重型戦艦の編隊で、四艘の三本マスト横帆戦列艦を核とし、各戦列艦の舷側には十二台の重型バリスタが並び、鋳鉄の台座が朝の光の下で、暗い金属の光沢を放っていた。
右側は中型艦艇の編隊で、二本マストと小型の三本マスト帆船を混成し、側面の援護と回頭による包囲を担っていた。
後方には、補給艦と医療艦からなる支援編隊が続いていた。
出航前の作戦案に従えば、艦隊は正午前後に、あらかじめ定めた迎撃海域へ入り、それから左翼の重型編隊を打撃の核として、エリクソン公国の上陸艦隊に側面から奇襲を仕掛けることになっていた。
バリスタの有効射程はおよそ二百メートルから二百五十メートル。射程に入るまで陣形を崩さず保てれば、最初の一斉射で相手にかなりの損害を与えられる。
ライオネルは手を伸ばして腰の指揮刀に一度触れ、視線を前方の艦隊の陣形の上へゆっくりと走らせた。
「ライオネル兄さん!」
彼は顔を横に向けた。
ユージンがタラップの口から這い上がってくるところだった。手に木の杯を一つ持ち、杯の口からは湯気が立っていた。
彼はライオネルの傍らまで歩き、木の杯を差し出した。
「厨房で煮てた魚のスープです。俺、さっき一杯飲みました。まあまあいけますよ」
ライオネルは杯を受け取り、うつむいて中を一目見た。
スープの色は白っぽく、表面に香草の葉が数枚と、バターの小さな塊が一つ浮いていた。湯気が魚の旨みの匂いを立ち上らせていた。
彼は一口飲んだ。熱かった。だが、確かに新鮮だった。
「お前、朝っぱらから厨房へ行ったのか?」彼は杯を手に持ったまま、二口目を急ごうとはしなかった。
「食べ物を探しにですよ。陸軍の食堂、この時間はまだ火を入れてないんです」
ユージンは彼の隣の手すりにもたれ、両手を木の欄に置き、顎を手の甲に載せて、前方で波を切って進む偵察艦を眺めていた。目がきらきらしていた。
「これが海軍ってやつなんですね。知ってたら、俺も海軍学校を受けたのに」
ライオネルは魚のスープを手に、返事をしなかった。
朝の光は、この高さではもう十分に明るく、海面は一面の銀灰色の反射板に照らされ、数百艘の帆船のマストが光の中で影を交差させていた。風が帆布を膨らませ、船体はうねりに合わせて均一に上下し、艦隊全体が、動く森のように、青い海面をゆっくりと進んでいた。
ユージンは前方を見つめ、数秒黙ってから、もう一言付け加えた。
「壮観ですね」
ライオネルは最後の一口を飲み干し、木の杯を手すりに置いた。
「海軍に転属したいのか?」
「はい!」ユージンは振り向いて彼を見、目を輝かせた。
「いいんですか?」
「お前の父上に話して、海軍へ回してもらえばいい。ただし、」
ライオネルは一拍置いた。
「船の飯に耐えられるようになってからだな」
「それくらい何ですよ」ユージンは気にも留めずに手を振った。
「陸軍の学校じゃ、ときどき固い黒パンをそのままかじらされるんですよ。冷たくて固くて、飲み込むとき喉を擦るんです。それに比べりゃ、こっちは厨房があるだけましですよ」
「ここは旗艦だからな」とライオネルは言った。
「お前が、ああいう小船に下ろされたら、それどころじゃないぞ。遠洋作戦ともなれば、飯は固い黒パンより酷いかもしれない」
「え、本当ですか?」
「本当だ。カビた食料ですら、ご馳走に思えるかもしれん」
ユージンは口を開き、口元まで来た言葉を一回りさせ、また呑み込んだ。
彼はうつむいて、手すりの上のあの空の木杯を一目見て、しばらく黙り、それから小声で言った。
「じゃあ、やっぱり海軍はやめときます」
ライオネルは笑わなかった。
彼はただ空の木杯を手に取り、ユージンに渡し、それから、二人にしか聞こえない音量で一言言った。
「素人は、海軍が葡萄酒と塩漬け肉を配るのは、ただの贅沢だと思う。だが、なぜそれを配るのかを知らない。遠洋を航海するとき、真水は後半になると腐って臭くなる。酒で水分を補うしかない。酒だけが腐らないのだ」
彼はそう言い終えると、振り返って甲板の中央の指揮台へ向かい、もう振り返らなかった。
艦隊は南西の方角へ進み続けた。
風はずっと、安定した方向を保っていた。
船足に、目立った変化はなかった。
マストの上の見張りは、しばらくおきに甲板へ向かって報告を叫んだ。その内容はおおよそ同じだった。
「左前方、異常なし」「右前方、異常なし」「針路、正常」
ライオネルは指揮台の脇に立ち、片手を台の縁に置き、もう片方の手の指の関節で木の面を軽く叩いていた。一定のリズムはなく、ただ漫然と叩いていた。
およそ三時間航海したころ、海面に変化が起きた。
まず、マストの上の見張りが叫ぶ言葉が、それまでと違っていた。
「将軍、前方の海面に、正体不明の浮遊物を発見! 数は五! 黒色! 方位、南南東! 距離、およそ四海里!」
ライオネルの手が、指揮台の縁で止まった。
彼は早足で船首へ歩き、外套の内ポケットから真鍮筒の望遠鏡を取り出し、鏡筒を伸ばし、焦点を合わせ、見張りの指す方角へ向けた。
鏡筒の中、水平線のあたりに、五つの黒い輪郭が現れた。
距離はまだ遠く、細部ははっきりしない。いくつかの不揃いな影としか見分けがつかず、五つの低い楔が、銀灰色の海面に打ち込まれているかのようだった。
それらには、帆がなかった。
少なくとも、彼の視線の範囲では、あの輪郭の上に、帆布は一枚も現れなかった。
ライオネルは望遠鏡を下ろし、また上げ、もう一度焦点を合わせた。
やはり帆はなかった。
彼は望遠鏡を下ろし、振り返って指揮台へ歩いた。その歩みは、来たときより速かった。
「伝令兵」
「はっ!」
「全艦に通達。戦闘態勢に入れ。陣形を組み、風上を取れ」
「はっ!」
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