321. インゲリア王国内部会議 その二
彼は自分をしばらく沈黙させ、あの共鳴をすっかり鎮めてから、口を開いた。
「ライオネル将軍の言うことはもっともだ」彼は言った。
声はさっきより低くなっていたが、明瞭さは落ちていなかった。
「この件は、意気に任せてはならん。もし本当に我々の行動ゆえに、ハーランド帝国の二派が一時停戦し、矛先を外へ揃えるようなことになれば、その結果は確かに我々の背負えるものではない」
彼は一拍置き、手に握っていた、すでに揉みくちゃになった羊皮紙を離し、それを膝の上に置いて、指で紙の端を軽く伸ばした。
広間の中央に立つ、あの濃い茶色の長衣の文官の顔色が、わずかに変わった。
彼の唇が動き、何か言おうとしたようだったが、口を開く前に、今は出兵を唱え続ける時ではないと悟った。
そこで彼は、舌先まで滑り出ていた言葉をまた呑み込み、角度を変えて切り込み直した。
「国王陛下、ご英断にございます」
彼はまずこう言った。
まず先に立場を示し、それから方向を修正する。
これが、彼が宮廷で長年生き抜いてきた末に身に付けた基本だった。
「北部領土の奪還は、確かに長い目で考えるべきこと。軽々に出兵すれば、より大きな外交の波風を招くかもしれません。この点、臣、先ほどの慮りが足りませんでした」
彼は一旦言葉を切り、それから話を切り替えた。
「ですが、陛下。北部領土を奪い返すのはしばらく無理でも、あのエリクソン公国の連中に、一つ痛い目を見せてやることなら、できるかと存じます」
この言葉を言うとき、彼は体をわずかに前に傾け、声を少し潜めた。
これから秘密めいた話を始めるかのようだった。
「彼らはダールトン子爵を破りはしましたが、我々が各方面から集めた情報によれば、あの勝利は水増しの色が濃い。だからといって、彼らが我がインゲリアの正規海軍を破る力を持つということにはなりませぬ」
アルジャーノンの座り方に、ごく小さな変化が起きた。
彼の背は玉座にもたれた状態から、わずかに前のめりへと変わった。
「ほう?」彼は言った。
「詳しく話せ」
彼が話すとき、手はあの羊皮紙から離れ、肘掛けの上へ移った。
あの文官はその動作を見て、自分の話が国王の興味を引いたことを悟った。
そこで彼は語速を少し上げたが、それでもなお、報告する者としての節度ある調子を保っていた。
「陛下。我が情報の間者が、あの戦の復盤を行ったところによりますと、当時ダールトン子爵が敗れた核心の理由は、敵を侮ったことにございます。彼は出征前に砲弾を十分に積まず、随軍の魔術師も十分に配しませんでした。船に乗せたのは、陸戦ばかりを得意とする歩兵ばかり。さらに彼の艦隊編成にも重大な問題がございました。あの旗艦以外には、護衛艦や他の小型の戦闘艦をほとんど配していなかったのです。そしてエリクソン公国は、この穴を捉えたに違いありませぬ。十数隻の機動力のある小型船と、特殊な構造の艦船を一隻加え、複数の方角から同時に撹乱攻撃を仕掛けたことで、ダールトンの艦隊を撃破したのです」
彼は顎を上げ、傍らに立つライオネルに視線を走らせ、それから素早く戻して、再びアルジャーノンの顔に落とした。
「臣の見立てでは、エリクソン公国がダールトン子爵の海軍を破れたのは、ひとえにダールトン本人の敵を侮った心と準備不足によるものであり、エリクソン公国にどれほどの海上戦力があるかという話ではありませぬ」
アルジャーノンの指は肘掛けを軽く二度叩いた。
その調子は均一で、何かを考えているようだったが、すぐには返事を出さなかった。
傍らに立つライオネル・オブライエンは、すぐには反論しなかった。
彼は静かにそこに立ち、両手を体の脇に垂らし、視線を床のある一点に固定して、何かを考えているようだった。
彼は情報組織の責任者ではない。
手元にはエリクソン海軍についてのデータはない。
頼れるのは自分の経験と直感だけだった。
そして彼の直感はこう告げていた。
ハーランド帝国から離脱して一年とかからずに、海を越えた上陸作戦を組み立てられる勢力が、海軍をまったく持たないはずがない。
だが彼は、その話の論拠を口にすることができなかった。
直感は証拠ではないからだ。
彼は数秒沈黙し、言葉を整えてから、半歩前に出た。
「陛下」彼は言った。
「分析の一部には私も同意します。エリクソン公国の海軍は、確かに大規模な正規海戦の試練を経ていません。彼らの装備水準も人員の練度も、我々は詳しい情報を把握しておりません。ですが、情報が不十分な状況で、軽率に軍事行動に出るべきではない、と私は考えます」
彼は一旦言葉を切り、両手を背後へ組んだ。
「私は、エリクソン公国の海軍に対して、常々、疑念を抱いております。彼らがあの戦で見せた水準は、敵の侮りに乗じただけでは説明できないものかもしれません。まずは情報収集を強化し、彼らが北部海域に実際にどのような配置を敷いているのかを探り、それから、彼らに打撃を加えるかどうか、いかに加えるかを決めるべきだと、私は思います」
この言葉を言うとき、彼の口調には反駁の鋭さはなかった。
むしろ、年長の同僚が、若い上官に、経験に基づく助言をするようだった。
彼は自分の祖父、老オブライエンのことを思い出していた。
それは四十数年前、インゲリア王国とハーランド帝国が北部領土の支配権を争った戦の末期のことだ。
老オブライエンは、インゲリアの主力艦隊を率いて、星耀海峡付近でハーランド帝国海軍と遭遇した。
当時、老オブライエンの情報官はこう報告した。
ハーランド帝国の主力艦は、なお港内で修繕中であり、出港には少なくともあと三日かかる、と。
老オブライエンはこの情報を信じ、先手を取って海峡へ進入し、有利な陣形を占めようと決めた。
結果、彼の艦隊は海峡の中央でハーランド帝国の待ち伏せに遭った。
あの「なお港内で修繕中」の主力艦は、実は前の晩のうちに補給を終え、夜のうちに出港し、海峡の中央で伏せて、彼が網にかかるのを待っていたのだ。
あの戦いは、インゲリア艦隊の惨敗に終わった。
老オブライエン本人は戦死し、旗艦は撃沈された。
随行していた十二隻の戦艦のうち、母港へ帰還できたのはわずか四隻だった。
北部領土の支配権は、あの戦を境に、今日に至るまでハーランド帝国の手へ渡った。
ライオネルの父は、あの戦で父を失った。
ライオネル自身は、あの戦で祖父を失った。
彼は幼い頃から知っていた。
情報が足りないまま軽率に打って出れば、大事になると。
しかし、国王は、もう手に入るかに見えた勝利の青写真に、とうに頭を奪われていた。
アルジャーノンの視線はライオネルから離れ、あの出兵を唱える文官へ向き、それからまた戻った。
彼はわずかに息を吸い、顎を少し上げた。
「オブライエン将軍、そなたの慎重さは分かっている。そなたの一族が、あの戦で払った犠牲も、私はずっと心に留めてきた。だが、我々には今、より詳細な情報工作をしている時間がない。エリクソン公国の上陸作戦は、三日後に始まる。彼らの部隊が北方領土に足場を固めてから動けば、そのとき我々が相手にするのは、もはや航海中の上陸艦隊ではない。すでに橋頭堡を築いた敵軍だ」
彼は両手で玉座の肘掛けを押し、立ち上がった。
「それに、相手が今回行うのは上陸作戦だ。彼らの船には、必ず大量の陸軍部隊と上陸装備が積まれている。つまり、彼らの船の機動力は落ち、船上の火力配置も圧迫される。海上では、我々が絶対的に優位に立つ。我々は逸を以て労を待ち、彼らは労を以て遠くへ侵す。この戦、我々に打たぬ理由はない」
アルジャーノンはそう言い終えると、右手を、傍らに立つ侍従へ差し出した。
侍従は即座に、腰から儀礼用の短剣を一振り外し、両手で捧げ持った。
アルジャーノンは短剣を受け取ると、それを胸の前で横に構え、視線で台下に整列する群臣たちを一巡り見渡した。
「直ちに出撃せよ」
ライオネルは広間の中央に立ち、玉座とのあいだに、およそ五、六歩の距離を隔てていた。
彼はアルジャーノンの表情を見た。
それは、彼がこれまで何度も見てきた表情だった。
一人の君主が、決意を固めたとき、その目は輝き、声は普段より力強くなり、一挙手一投足に、疑う余地のない確信が宿る。
この表情は、順境では人を鼓舞し、逆境では危険を招く。
そして彼は今、次に来るのが順境か逆境かを、判断することができなかった。
彼は数秒沈黙し、それから視線を伏せた。
群臣の面前で、国王がすでに下した最終決定に、これ以上反対し続けることはできなかった。
それは忠義ではない。抗命だ。
「あなたのご意志のままに」彼は言った。
彼の声は平らで、熱を帯びるでもなく、渋るでもなく、職業軍人が命令を受けるときに持つべき基本的な態度を備えていた。
「それがし、直ちに埠頭へ赴き、海軍を整え、出航して敵部隊を迎え撃つ支度をいたします」
彼は玉座の方へ向かって、端正に拱手した。
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