319. 机の前での話
「ましてや北の貴族は、とっくに現地の農民反乱軍に殺されています。あそこはもう、事実上の無主の地です。法理の上では、ハーランド皇帝エイドリアンがまだあの領土への請求権を留保していますが、それも名目だけの話です。彼のほかには、あの土地の主権を主張する資格のある貴族は一人もいません」
私は手を戻し、彼の返答を待った。
父はすぐには答えなかった。
彼は指の腹で顎をゆっくりと撫で、視線を地図の、私が囲んだあの一帯に置いたまま、何かを天秤にかけているようだった。
しばらくして、彼は顔を上げ、私に微笑みを向けた。
「まさにそのとおりだ。今こそ、私たちが出兵する時だと思う」私は彼の視線に沿って、一言補った。
「娘もその点に触れたな。だが私たちには領土の請求権もない。その無主の領土に、どうやって軍を動かすというのだ?」
彼は微笑みながら言った。
その口調には、私がこの対話のなかで次第に馴染んできた、あの導くような色があった。
彼は明らかに、この一帯についてずっと前から考えがあったのだ。
だが彼は、あの出兵の正当な口実を私自身に言わせたかったのだ。彼が代わりに言うのではなく。
私は少し考えてから、口を開いた。
「口実なら、もちろんあります」
私は言いながら、手を地図の下の方へ持っていった。
インゲリア諸島とハーランド北部海域のあいだのあの海峡に軽く一本線を引いた。
「口実は、私たちの商会の船が、あの海域で自由に航行する権利を守ることです。私たちはこの名目で、ハーランド帝国の北方領土へ軍を派遣できます。まず沿岸の各集落に軍政区を設ける。名目上は商路の保護と、地域の安定維持。実際には、この一帯を実効支配するのです」
私は顔を上げて、彼を見て言った。
「この内戦が最終的にどちらの勝利で終わろうと、勝った側は内戦で大量の人と物と金を消耗しています。たとえ彼らが、私たちが北部領土を占拠していることに気づいたとしても、私たちを追い出す余力はありません。そのときになれば、私達には代理統治権を主張する権利が残ります。この土地の法理上の請求権も、ハーランド帝国の国勢の衰退とともに、自然とエリクソンのものになるでしょう」
父の視線は、私が囲んだあの海岸線に留まったまま、長いこと動かなかった。
それから彼はゆっくりと椅子の背にもたれ、両手を膝の上で組み、視線を地図から上げて、私の顔に落とした。
彼の顔には、満足と喜びのあいだのような、柔らかな表情が浮かんでいた。かすかな笑みもあった。
「さすがは私の娘だ。十四歳で、これほど知恵のある献策ができるとは」
彼は笑い、それから手を伸ばして机の上から、墨を付けた羽根ペンを一本取り、机の上に新しい白紙を一枚広げ、うつむいて素早く数行を書いた。
彼の筆跡は整然としていて力強く、墨の線は白紙の上を走り、まるで言葉の選び方をすでに何度も考え抜いていて、その場で斟酌する必要がないかのようだった。
最後の一字を書き終えると、彼は羽根ペンをペン置きに戻し、机の右側の引き出しを開けて中から印章を一つ取り出し、朱肉に一度押してから、手紙の右下にきちんと押した。
印泥が紙の上に深紅の印を一つ残した。
模様は、エリクソン公爵家の紋章だ。
彼は手紙を手に取り、墨に息を吹きかけ、それから折って、私に差し出した。
これは軍の任命状だ。私と母ヘレナをこの作戦の総指揮官に任命するもの。
私は両手でその折られた手紙を受け取り、指先が紙面に一瞬留まった。
紙の厚みと墨のわずかな冷たさを感じ取った。
それから私はそれをポケットにしまい、父にうなずいた。
「ありがとう、父上。では、私はこれで?」
私が振り返ろうとすると、彼は自分が座っているソファの隣の空いた席をぽんぽんと叩いて言った。
「まあ、そう急ぐな。こっちへ来なさい」
この言葉を口にしたときの彼の口調は、さっきよりずっと軽かった。
あの軍事配置の話し合いは一段落し、今は別の波長に切り替わったかのようだった。
彼は隣の座面をぽんぽんと叩き、それから私に笑いかけた。
さっきの、満足の混じった微笑みとは違い、この笑みはもっと柔らかく、もっと私的な温度を帯びていた。
「さあ、この数日、地球で遊んだ話を聞かせておくれ。私だって行きたいのだが、仕事が多すぎて行けなくてね」
彼の声には愚痴はなく、ただ事実を述べるだけだった。語尾にはかすかな名残惜しさがあった。
私はその場に立ち、しばらく迷った。
「目的のない付き合いはしない」というあの観念が、まだ私の意識の奥に残っていて、細い糸のように私の足を引いていた。
だが、期待の混じったあの笑みを見ていると、結局、断りの言葉は出てこなかった。
私は彼のほうへ歩き、ソファの片側に座った。
座面はとても柔らかく、私の体はわずかに沈み、姿勢を少し整えて、より座りを安定させた。
「今回の行程はこんな感じです。花の国に着いてから、まず花の国の首都に数日滞在して……」
私は今回の地球への旅の経緯を語り始めた。
風花城の蒼海、画舫の上で花母娘娘伝説を語ってくれた船頭のおじさん、六廊古鎮の銀細工の店と絞り染めの工房。
私は途切れ途切れにその経緯を語り、覚えている細部を拾い上げて彼に話した。
絞り染めの工房の主は、上半身裸の若い男で、腕に青い染料をびっしりと付けて、白族の言葉で別の職人と話していた。
銀細工の店のおばあちゃんは、十五歳から銀細工を打ち始めて、もう四十年になると言い、椿の模様を刻んだ銀の指輪を一つ取り出して、これが一番の自信作だと言った。
私は話しながら、こうした細部を語るとき、自分の口調がいつしかさっきより軽くなっていることに気づいた。
あの交渉の場で保たねばならない抑制や慎重さではなく、もっと自然な、飾らない語り方だった。
父は私の隣に座り、口を挟まなかった。
彼の体はわずかに私の方へ傾き、片手は膝の上に置かれ、もう片方の手が、私が話の半ばに差しかかったとき、そっと上がって、私の頭の上に載った。
彼の掌は広かったが、とても軽かった。
彼の指が私の髪をくぐり、頭の上に載り、それから急がず緩まない調子で、ゆっくりと私の髪を撫でた。
動きは落ち着いていて、何度もしてきたかのようだった。
頭の頂から髪の先まで、何度も繰り返した。
私の声は少し小さくなった。
彼の指の腹が私の耳の後ろをかすめたとき、私の息が一つ乱れ、話のリズムが一拍途切れた。
私は話すのをやめ、一瞬呆けて、それからうつむいて、膝の上に置いた自分の指を見た。途切れた文をそのまま続けられなかった。
私の首はわずかにすくんだ。
陽だまりで毛を逆撫でされ、そして逃げないことに決めた猫のように。
その感覚が何なのか、うまく言えなかった。
恥ずかしさでも、拒絶でもなく、意識より先に体が反応した、そんな感じだった。
自分で考えるより先に、私の頭は、彼の掌の方へほんの少し傾いていた。
私は一拍置いて、それから話を続けた。声はさっきより少し低くなったが、まだ続いていた。
雪月城のチェーン店のファストフード、古城のあの木の水車、雲龍雪山の下のホテル、ベランダの籐編みのソファ、そして雪山に正対した視界。
彼の掌はずっと私の頭の上にあり、動かず、力を強めることもなかった。
彼は聞きながら、ときどき「うん」と言ったが、私を遮らなかった。
「……それで帰ってきて、父上の机の上のあの報告書を見て、そのまま来たんです」
話が終わった。
私はソファに座り、声は次第に小さくなり、最後は書斎の空気に溶けていった。
父が私の頭から手を離したとき、私は顔を上げなかった。
彼は手を戻すと、ソファの肘掛けにしばらく置き、それから立ち上がって、窓辺へ歩き、カーテンを少し閉めた。
彼はすぐには振り返らず、窓辺にしばらく立ってから、口を開いた。
「いい旅だったようだね」
「うん」
彼は振り返り、机の前へ戻って座り、ペン置きに載ったあの羽根ペンを手に取り、インク壺に一度浸して、広げた便箋に何かを書き始めた。顔も上げずに、私に一言言った。
「行きなさい。早く休みなさい。明朝、軍務官に北境の地形図と駐軍の配置図を、お前の部屋へ届けさせる」
私は立ち上がり、彼にうなずき、それから振り返って扉の方へ歩いた。
廊下の空気は書斎よりいくぶん冷たく、半開きの窓から入り込む夜風が、庭の湿った土の匂いを運んでいた。
私は廊下を数歩戻り、それから足を止め、ポケットに手を入れて、あの折られた任命状に触れた。
紙の感触と体温が混ざり、触れると温かかった。
私はそれを折り直し、ポケットの奥へ少し押し込み、それから手を離し、また歩き出した。
書斎の扉は私の背後で閉まっていた。
中の灯りが扉の隙間から廊下の床に細長い黄色の光の帯を一本落とし、暗い色の木の床の上で、遠くの一つの灯がまたたくたびにわずかに揺れ、また安定した。
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