318. ハーランド帝国の現状分析
ノックの音は廊下を遠くまで届かず、絨毯と壁の掛け物に大半を吸い込まれ、くぐもったものになった。
私は動きを止め、中からの応答を待った。
しばらくして、扉が内側から開かれた。
開けたのは黒と白の揃いのメイド服を着た若い女中で、私だと分かると、わずかに体を横にして入り口を空け、うつむいて「お嬢様」と小声で言い、それから脇へ下がった。
私は彼女にうなずき、足を踏み入れた。
父の書斎は、前に来たときと変わっていなかった。
あの濃い色の無垢材の机が部屋の真ん中に置かれ、机の上には開かれた書類が数枚と地図が一枚広げられ、インク壺の蓋はきちんと閉められておらず、墨を付けた羽根ペンが一本、ペン置きに載っていた。
父は机の向こうに座り、手に便箋を一枚持って、うつむいて中の内容を読んでいた。
足音を聞いて顔を上げ、私だと分かると、手にした便箋を置き、顔にいくぶん興味の混じった笑みを浮かべた。
「地球から帰ってきたばかりだというのに、もう私のところへ来るとは。何か話があるのかい?」
彼の声は急がず、緩まず、年長者が目下に向ける、あの試すような性質を少し含んだ穏やかさがあった。
彼は便箋を畳んで机の上に置き、両手を組んで机の縁に載せ、私に視線を落として、私が口を開くのを待った。
私は机の前の絨毯の上に立ち、両手を体の脇に垂らし、彼の視線を受け止めた。
「ただ顔を見に来ただけじゃ駄目ですか? 私って、父上から見たら、用事がないと来ない人間なんでしょうか?」
私は苦笑いした。
彼は笑ったが、直接は答えなかった。
しかしその表情が、すでに答えを出していた。
その笑みには「お前は私が何を考えているか分かっているだろう」というような、見透かした色があり、慣れきったその色には反論できなかった。
「なにしろ、私の娘は、用もないのに私のところへ来るような子ではないからね」
彼はこの言葉を、とても軽い口調で言った。
まるで、とっくに受け入れてしまった、何の否定的な感情も含まない事実を語るかのように。
だが、まさにそのさらりとした口調が、かえって私を一瞬言葉に詰まらせた。
私はその場に立ち、口元にあの気まずい笑みを浮かべたまま、心の中で彼の言うとおりだと認めた。
彼の言うとおりだ。
私は確かに、用がなければ彼のところへ来ない人間だ。
この体の血のつながりは確かにそこにあり、彼は私がこの世に生まれてからずっと私の父であり、そのことは私が目を覚ました最初の日にはっきりしていた。
だが私の意識には、前世の記憶がまだ残っている。
成人の男として三十年、社会で生きてきた末に染みついた習慣が残っている。
そのなかには「目上の者と、目的もなく積極的に付き合わない」という、骨の髄まで染み込んだ行動の基準がある。
三十歳の男が、精霊族の赤ん坊に転生し、一組の両親を持った。
このことを理屈の上では受け入れられるし、感情の上でも彼らに敬意と感謝を抱いている。
だが日常の付き合いにおいては、幼い頃から両親のそばで育った子供のように、自然に彼らと親しむことはできない。
彼に何を話せばいいのか分からない。
雑談か。日常の報告か。
私はもう、目上に生活を報告しに行くような歳は過ぎていた。前世でも、今生でも。
父に甘える。
この選択肢が頭をよぎったとき、自分でも居心地が悪かった。
この体は十四歳で間違いないが、私の自己認識では、私はもう心の中で四十数年を生きてきた人間だ。
四十過ぎの人間が、別の男に甘える?
私の指が体の脇でわずかに丸まり、それから緩んだ。
まあいい、こんな話はやめよう。
私は元々、ここへ本題を話しに来たのだ。
私は二歩前に進み、机の前の肘掛け椅子に座り、座り直してから口を開いた。
「父上の机の上にあったハーランド帝国内部の報告をいくつか目を通しました」
私は一旦言葉を切り、思考を整えてから、続けた。
「今、ハーランド北部は制御不能の状態にあります。ハーランド帝国政府はあの地域を統治できていません。今こそ、私たちがあの地域を奪う絶好の機会だと思います」
私は机の片隅から、私が持ち込んだあの地図の巻物を手に取り、机の上に広げ、指で北部沿岸のあの一帯を指した。
地図の線は木炭で描かれ、何度も直したあとで紙面に淡い灰色の跡を残しており、端には消しゴムをかけたあとの毛羽立ちがあった。
私は指の腹で海岸線に沿って半円を描き、沿岸の主要な町と港をいくつかその中に囲い込んだ。
父の視線は私の指を追って、地図の上を動いた。
私の指先があの一帯の上の空白のところで止まると、彼の視線はそこに固定された。
彼はすぐには話さなかった。
彼の視線は、私が印を付けたあの一帯に数秒留まっていた。
あの一帯はハーランド帝国の北部沿岸にあり、かつてハーランド帝国がインゲリア諸島国から奪い取った領土だ。
エリクソン公国の北境と接し、そのあいだは山脈一つと、細長い峡谷の回廊が隔てるだけで、地形的には陸路から入り込む条件が整っていた。
彼は顔を上げ、私を見た。
目に驚きがあった。
その色ははっきりとは見えなかったが、彼が眉を上げた幅と、わずかに止まった動作は、私にその瞬間を捉えさせるには十分だった。
「あの一帯を奪って、私たちに何の得がある? 私たちは所詮、小さな公国にすぎない。彼らを怒らせれば、ハーランド帝国から報復を受けるかもしれないぞ」
彼はこの言葉を、穏やかな口調で言った。
反対というより、導くようだった。
私がこの計画のための後続の論証をすでに用意しているかどうかを見ようとしているのだ。
これが彼の一貫した流儀だった。
重大な決定を話し合うとき、彼は直接「良い」「駄目だ」とは言わず、問題を投げかけ、私自身に案を補わせる。
もし私が答えられなければ、その案はまだ未熟だということだ。
私はうなずいた。
「分かっています」と私は言った。
「私たちの規模は、ハーランド帝国とは桁違いです。たとえ今、彼らが二つに分裂していようと、エリクソンは紙上の戦力では彼らの相手ではありません」
私は言葉を切り、両手を地図の縁に置いた。
「しかし、この内戦はもう丸一年続いています」
私は彼をまっすぐ見た。
「これが普通の戦争なら、私はこの段階でこの案を出したりはしません。戦争はたいてい、一つか二つの戦役季のうちに勝敗がつきます。都を攻め落とし、君主を捕え、和約を結ぶ。その手順は明確で、予測できます。ですがこの戦争は違います。私自身が目で見たこと、前線から持ち帰られた情報、難民たちの口から得た話。そのどれもが、同じ一つの事実を指しています。ハインツとエイドリアン、この兄弟は二人とも、人間を魔人に変える技術を握っているということです」
「魔人の力の前では、中世の戦術体系が頼りにしていた城砦の防御は、もう効きません。城の城壁は数ヶ月の包囲には耐えられますが、魔人一人の二、三日の攻撃には耐えられません。つまり戦争は、拠点の争奪戦から、兵力の消耗戦へと変わったのです。彼らが今できることは、魔人を大量生産し、魔人に戦わせ、普通の兵士に戦線と補給線の維持を担わせること。戦争は、生きた挽肉機へと変わってしまいました」
私は言葉を切り、地図の上でハーランド帝国中部を表す印を彼に示した。
「今、ハーランド帝国全体、そしてハーランド南方の反乱軍は、みな魔人へ変える聖水の生産と、一般兵士の徴集に追われています。彼らには、私達を構う余裕はありません。彼らの配下の大小の貴族にしても、ましてや自ら私達を攻めようとはしないでしょう。小貴族は今の戦局では自分たちだけで手一杯です。彼らの領地は前線のすぐ近くにあり、今日まで自分たちの手にあった土地が、明日には魔人に更地にされるかもしれません。大貴族にしても、彼らは手下の土地や財産の刈り取りに忙しく、戦争の果実から少しでも多く搾り取ろうとしている最中です。この時期に、北上して、直接の脅威でもない新興の公国と戦争を始める貴族は、一人もいないでしょう」
私は一拍置いて、語気を強めた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!




