308. 雪山ホテルへ
私たちは古城の北門からタクシーを一台拾った。
運転手は黒縁眼鏡をかけた若い男で、車内には菩提樹の実の数珠が一串下がっており、エアコンはとてもよく効いていた。
私がホテル名を告げると、彼はうなずき、車は来た道を戻るように走り出した。
梧桐の植えられたあの道路を通り、ロータリーを一つ回り込んだ。
車が脇道へ入ると、道幅が狭くなった。
両側の木が増えてきた。
古城の中にあった、あのきちんと刈り込まれた街路樹ではなく、伸び放題の古木で、枝が交錯して頭上に緑の回廊を作っていた。
陽射しが葉の隙間から零れ落ち、フロントガラスに揺れる影を投げかけた。
ホテルの入り口の構えはそれほど大きくなく、派手な看板もなかった。
深い灰色の石壁が木立の間に埋め込まれ、壁にはホテルの名前が刻まれていた。
守衛所から制服姿の中年の男性が出てきて、予約情報を確認すると、バーを上げて通してくれた。
車は緩い坂をさらに数十メートルほど上り、一つのカーブを曲がると、視界がぱっと開けた。
ホテルのロビーは坂の頂上にあった。
見下ろすような高い建物ではなく、深い灰色の石材と木を主体とした低層の建物が横一列に広がり、まるで地面から生えてきたかのようだった。
ロビーの入り口の庇は長く突き出て、何本かの木柱に支えられ、幅の広いひさしを作っていた。
庇の下には籐編みのソファがいくつか置かれ、クッションは生成り色、サイドテーブルには枯れ枝を挿した花器が一つ載っていた。
空の箱を下げて車を降りたとき、私はまだ一歩も足を踏み出さないうちに、立ち止まった。
ロビーの正面には池があった。
造園の池ではなく、本物の、かなりの面積を占める水面だった。
水は深い緑色で、それほど澄んではいなかったが、水面はとても穏やかだった。
噴水もなければ、築山も、蓮の花も、何もなかった。
あるのは水と、対岸に並ぶ白壁と灰色の瓦の建物が水面に映り込んだ姿だけで、その輪郭がかすかに揺れていた。
池の向こう岸には柳が数本植えられ、枝が水面まで垂れ、水の上に細い影を一本刻んでいた。
その先にはもう何もなく、ただ山があるだけだった。
雲龍雪山の稜線が池の果ての方から立ち上がり、山頂の積雪が午後の光の下で柔らかな白を帯びて、まるでこの景色の下端にそのまま嵌め込まれたかのようだった。
私はロビーの入り口に立ち、中へは入らなかった。
ユーナが私の後ろからやってきて、私の肩の脇で止まった。
彼女も何も言わなかった。
私は彼女の視線が、水面からまっすぐ前方へ伸び、水に映るあの屋根や軒を過ぎ、柳を過ぎ、そして遠くのあの白い稜線の上で止まるのを見た。
彼女は瞬きをして、何も言わず、前へも進まなかった。
母はもうロビーの中へ入っていた。
彼女はうつむいて情報を書き込んでいる最中だった。
書きかけたところで顔を上げ、私たちがついてきていないことに気づき、くるりと入り口の方を振り返った。
それから彼女も私と同じ方向へ、外のあの池に目をやった。
彼女は私たちを急かさなかった。
再び振り向いて、表の記入を続けた。
私はしばらく入り口に立ってから、箱を下げて中へ入った。
ロビーはとても静かで、BGMにはかすかなピアノの音が、音量を低く絞られて流れていた。
「山の上のホテルのバスは、もう少々お待ちください」とフロントが言った。
「先にホテル内でお寛ぎください。ロビーの外にテラスがございますし、あちらにお茶席もございます。バスが参りましたら、お知らせいたします」
私はうなずいた。
私たちの部屋は山の上に用意されていて、ここはあくまで中継地点だった。
母が記入を終えた用紙をフロントに渡した。
私はロビーの脇にある、外へ通じるガラス戸を押し開け、池のほとりのテラスへ出た。
テラスは広くなく、板張りで、縁に欄干はなく、水面すれすれの石段へそのまま続いていた。
板は陽に焼けてほんのり熱く、踏むと靴底越しにその温度が伝わってきた。
私はしゃがみ込んで、視線を低くした。
これほど近くで見ると水はもっと澄んでいて、水底に敷かれた玉石と、暗がりでゆらゆらと揺れる水草の群落がいくつか見えた。
ユーナも出てきた。
彼女は私の脇まで来て、同じようにしゃがんだ。
何も言わず、私と並んでしゃがみ、水面を見つめていた。
池には何もいなかった。
魚も、亀も、あの観光地の池によくいる、水の影の中で群れをなして押し合う錦鯉さえも。
あるのは水だけだった。
水は向かいに並ぶ古い建物の屋根と軒の角を映し、白い壁には不揃いな淡い灰色の水染みが這い、まるで雨に長く打たれて自然にできた模様のようだった。
水面は静止していて、ときおりごく軽い風が掠めると、見てとれないほどのかすかな波紋がいくつか広がり、また元へ戻った。
水に映るあの屋根や柳の枝も、それに合わせて一度軽く揺れ、そしてまた静止に戻った。
私はそこにしゃがんだまま、長いこと眺めていた。
遠くの雪山の白い輪郭が、水面の果てに静かに横たわっていた。
テラスには私とユーナ、二人きりだった。
風が雪山の方角から吹いてきて、高原特有の冷たさを少し含み、私の耳のふちを掠めていった。
背後でガラス戸が押し開けられる音がした。
私は顔を横に向け、母が出てきて、お茶を一杯手に、テラスの端にある籐の椅子に腰を下ろすのを見た。
彼女は茶碗を肘掛けに置き、何も言わず、ただ遠くのあの白い稜線へ視線を投げた。
私たち三人は、そんなふうにそれぞれの場所で、しばらくのあいだ過ごした。
陽はもう西寄りの南へ傾き、光が池の反対側から差して、水面を銀色と淡い金色のあいだのような色に染めていた。
遠くの雪山の輪郭は午後の光の中でさらにくっきりとし、稜線の筋が光で縁取られ、一つ一つの溝が影を帯びていた。
ロビーの中から足音がいくつか聞こえた。
私は振り返り、フロントの娘が扉を出てきて、入り口に立ち、こちらへ軽く身をかがめるのを見る。
声は大きくなかったが、はっきりと聞こえた。
「バスが参りました」
大型バスに乗っていたのは、私たちともう一組の家族だけだった。
大人が三人、子供が一人で、前三列に座っていた。
子供は後部座席の背もたれに顎を乗せて首を傾げ、こちらを覗き込んでいたが、大人に軽く引っ張られて戻された。
私たちは最後列の窓側を選んだ。
ユーナが真ん中、私が窓際。
母は通路を挟んだ反対側の一人席に座り、長い脚を斜めに伸ばし、背もたれに寄りかかってしばらく目を閉じていた。
道のりは思っていたより長かった。
ホテルを出ると、道路はまず山裾に沿ってしばらく走り、両側の景色は塀や建物から次第に密集した山林へと変わり、車窓の外の色が青灰色から深い緑へと移っていった。
それから車は坂を上り始め、エンジンの音が少し重くなり、カーブが増えていった。
曲がるたびに、後方へ遠ざかっていくあの湖面が違う角度から見えた。
私は窓にもたれて視線を外へ投げ、バックミラーの中で雪月城の輪郭が少しずつ小さくなり、山と木に飲み込まれていくのを見ていた。
四十分あまりが過ぎたころ、バスは減速し、ホテルの名前が刻まれた灰色の石壁の前で止まった。
門は金属と濃い色の木を組み合わせた造りで、誇張された装飾はなかったが、均整がとれていた。
守衛所から誰かが顔を出してナンバープレートを確認し、門がゆっくりと開いた。
車は門の内側、降車場のような場所に停まった。
私は立ち上がって背伸びをした。
座席から立ち上がるとき、膝の裏が少しこわばり、地面へ踏み出した一歩目で、血が再び膝を流れるような酸っぱい張りを感じた。
ドアが開くと、冷たく澄んだ空気がすぐに流れ込んできた。
私は空の箱を下げて車を降り、地面に足を下ろしたところで、車の後ろへ回って荷物室の扉を開けようとした。
だが、誰かが私より先にそこへ来ていた。
背の高い男だった。
濃い灰色のスーツを身にまとい、仕立てがとてもよく、肩もウエストもすっきりと絞られていた。
ワイシャツの襟元には銀灰色のネクタイが締められ、結び目は正しく整い、しわが一片もなかった。
彼は荷物室の扉を開け、身を乗り出して、三つの空のスーツケースを一つずつ取り出して、手元に一列に並べ、それから振り向いた。
彼の顔には業務用の笑みが浮かんでいた。
過度に愛想を振りまく笑みではなく、距離感をちょうどよく保った微笑みで、過不足なく、冷淡でもなく、サービスされていると感じさせつつ邪魔はされない、その絶妙な按配だった。
「お嬢様方、荷物はまずこちらに置かせていただきます」彼の声は穏やかで、調子には訓練された余裕があった。
「お部屋のカードキーをお取りになりましたら、お部屋までお届けいたします」
私はうなずいた。
「よろしくお願いします」
山麓ファーストロビー(中継地点)
雲南省・麗江(雪月城)の玉龍雪山周辺にある最高級ホテル(例:アマンダリやリッツカールトン・リザーブ、HYATT等)に典型的な構造です。古城近くの標高の低い場所に「山麓ロビー」を置き、そこでゲストを出迎えた後、専用シャトルやカーで山上の本館・ヴィラ客室群へと案内します。
水鏡の池と雪山景観
ロビー前に広がる人工・天然の静かな池に、白壁の伝統建築や遠くの玉龍雪山(雲龍雪山)が美しく映り込む設計は、雲南の高級リゾートの象徴的な造園手法です。無駄な飾りを削ぎ落とした「静寂の美」が表現されています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!




