307. 唐辛子
ユーナは私の隣に座り、ゆっくりと食べていた。
彼女は箸で涼粉を一切れつまみ、丼の縁で一旦止め、余分なタレを丼へ垂らしてから、ようやく口へ運んだ。
仕草は小さく、噛む幅も大きくはなかったが、一度も箸を置こうとはしなかった。
四切れ目を食べたとき、彼女は顔を上げて私を一目見、「これ美味しい」と言い、それからまたうつむいて食べ続けた。
母は私の向かいに座り、食べ方は私たちとまるで違っていた。
彼女はまず味付けしていない涼粉を一切れつまんで二回噛み、それからタレに付けた。
まるで涼粉そのものとタレ、それぞれの味を別々に確かめるかのようだった。
噛み終えて飲み込み、もう一切れつまんだ。
今度はラー油をたっぷりと付け、涼粉の表面が真っ赤に染まった。
それを口に入れ、二回噛み、それから手を止め、眉をひそめた。
「娘」彼女は丼に浮かぶ赤い唐辛子の欠片を指さした。
「この中に、舌が少し痛いのに、でもとても気持ちいいものがあるの。これは何?」
彼女は箸の先で、揚げた唐辛子の皮を小さく一枚つまみ上げ、目の高さまで持ち上げて眺めた。
まるで知らぬ植物の標本を観察するかのようだった。
唐辛子の皮には白ゴマが何粒かついていて、光の下でわずかに油の光を帯びていた。
「唐辛子」と私は言った。
「トウガラシ?」彼女はその言葉を繰り返した。
発音はやや硬く、二つの音を切り離して読み、間に一呼吸置いた。
まるで口の中で、その見知らぬ音節をもう一度並べ直しているようだった。
「トウガラシ」。
もう一度言った。今度は少し滑らかだった。
私はうなずいた。
彼女はうつむき、ラー油をたっぷり付けた涼粉をもう一切れ口へ入れた。
今度は眉をひそめなかった。
噛み終えて飲み込み、それから箸を丼へ伸ばし、もう一切れつまんだ。
「これ、いいわね」と彼女は言った。
エリクソンには唐辛子がない。
あそこは地球の中世ヨーロッパにそっくりで、ジャガイモも、トウモロコシも、唐辛子も、みな別の大陸原産の作物で、あの地には存在しなかった。
今、領地で育てているジャガイモやトウモロコシは、すべて一年前に私が花の国から持ち帰った種から育ったものだ。
種は領地の気候にとてもよく馴染み、最初の収穫は上々だった。
あの大きくてふっくらとした実が土から掘り出されたときは、領地の老農夫までが周りを囲んで見ていた。
何十年も畑をやってきたが、こんなによく育つものは見たことがない、と。
その収穫のおかげで、ハーランド帝国から逃れてきた難民が領地に着いたときも、穀倉の蓄えはまだ一冬を越せるだけ残っていた。
だが、あの種には一つ問題があった。
最初の収穫から採った種をまた蒔くと、育つものが縮んでしまうのだ。
実は小さくなり、収穫量も大きく落ち込んだ。
領地で農事を担当する書記官がこのことを手紙で知らせてきたとき、その言葉はとても控えめだったが、行間から彼の憂慮が読み取れた。
今もエリクソン公爵領の難民は増え続けていて、もし地球から種を持ち帰り続けられなければ、領地は本当に食糧危機に直面するかもしれない。
これも、父が私をこの世界へ「休暇」に出した理由の一つだ。
ユーナを連れて帰り、ここの友人たちに会わせること。
種を買って帰ること。
領地の難題を解決すること。
もっとも、それらの用事は木綿城にいたときに、もう片づけてしまった。
種はすでに買い終えて、収納の腕輪にしまってある。
ついでに遺伝学の本も数冊買った。
表紙には私の知らない専門用語が並び、開くと図表と数式ばかりだった。
領地に戻ったら、これらの本を翻訳して、才能のある若者を何人か見つけて学ばせるつもりだ。
何しろ、毎年地球から種を輸入するわけにはいかないのだから、自分たちで生産できるようにならなければならない。
母はまた涼粉を一切れ口に入れた。
丼の中のタレも持ち上げ、自分の頼んだ炒麺に注ぎ込んだ。
炒麺はもともと汁なしのあえ麺だったが、タレを注ぐと、麺全体の色が均一な赤茶色に変わった。
唐辛子の欠片とゴマが麺の表面に絡み、つやつやと光っていた。
彼女はためらわず、うつむいてその麺を食べ始めた。
箸は速く動き、ほとんど止まることはなかった。
二、三分後、彼女は空になった丼を台の上に戻した。
丼の底には薄く赤い油が一層残っていた。
「じゃあ、今度エリクソンへ帰るとき」彼女は箸を置き、紙ナプキンで口元を拭った。
「この唐辛子ってやつの種を、多めに買ってきてちょうだい」
彼女は一拍置いて、付け加えた。
「私、これ好き」
その口調は、彼女が「これ、いいわね」と言ったときとほとんど同じだった。
潔く、余計な飾りがなかった。
私はいいよ」と言った。
彼女はもう一度その空の丼を見た。
丼の底の赤い油が、ゆっくりと小さな丸に集まっていくところだった。
涼粉と炒麺を食べ終えると、女将が三杯の紅糖涼蝦を無料で運んできた。
米の粉で作った、小魚のような形をしたもので、紅糖の水に浸かり、上に乾燥キンモクセイの花びらが数粒浮いていた。
涼蝦はつるんとしていて、舌の上で一度転がると、そのまま喉へ滑り落ちていった。
あの紅糖の甘さが、口に残った辛みと痺れをちょうどよく洗い流してくれた。
ユーナは私の丼に残っていた食べかけの涼蝦を半分、自分の丼へすくい取った。
彼女のスプーンが伸びてきたとき、彼女はまず私を一目見て、私がうなずいてからすくった。
彼女は速く食べ、丼の底の紅糖水まで飲み干した。
それから丼を置き、手の甲で糖水が付いた口元を拭い、背もたれにもたれて、長く息を吐き出した。
私は背もたれにもたれる彼女の姿を見て、何も言わなかった。
自分の分の炒め餌塊を台の真ん中へ押しやると、彼女は一目見て、断らずに、また箸を取った。
母はもう隣の屋台が売っている乾燥キノコを見ていた。
彼女は屋台の前に立ち、台に並ぶ数個の天日干ししたイグチとマツタケの写真をスマホで一枚撮った。
店主は年配の爺さんで、はかり終えたキノコをビニール袋に詰めているところだった。
彼女が写真を撮っているのを見ても止めず、ただ「撮れ撮れ、どれもいい品だよ」とだけ言った。
風が吹いてきて、台の上の空の丼の縁に残る赤い油の香りと、隣の屋台の焼き乳扇の甘ったるい匂いが混ざり合った。
昼食を終え、私たちは路地を引き返した。
日はもう西へ傾き、路地の古い家々の軒の影を一筋長く伸ばし、青い石畳の上に落としていた。
私の前を歩くユーナの手首で、あの腕輪が木の台の端に触れて、軽い音を立てた。
鶏豆涼粉(ジードウ・リャンフェン / 鸡豆凉粉)
解説: 麗江(雪月城)を代表する名物小吃(B級グルメ)です。麗江特産の「鶏豆(黒インゲン豆の一種)」で作られた緑がかった灰色のゼリー状のお餅で、ぷるんとした口当たりと濃厚な豆の味が特徴です。
食べ方: 冷やして特製の激辛ダレ(ニンニク、花椒、ラー油、酢など)をかける「涼拌(冷やし)」と、鉄板で表面をカリッと焼いて食べる「煎(焼き)」の2種類があり、作中で主人公たちが食べたのは定番の冷やしです。
紅糖涼蝦(ホンタン・リャンシャー / 红糖凉虾)
解説: 雲南省や四川省で親しまれる伝統的な冷たいスイーツです。米粉を練って穴の開いた漏斗から茹で汁に落とすことで、しっぽのついた「小さなエビ(蝦)」のような形に成形されます。
味: 香ばしい黒砂糖(紅糖)のシロップに浮かべ、キンモクセイ(桂花)の花びらを散らすのが定番です。辛い料理(鶏豆涼粉)を食べた後の口直しに最高の組み合わせです。
炒餌塊(チャオ・アーカイ / 炒饵块)
解説: 雲南省の主食である「餌塊(うるち米を蒸して搗いたお餅のような食べ物)」を薄切りにし、漬物、豚肉、青菜、醤油、唐辛子などと一緒に中華鍋で強火で炒めた料理です。もちもちとした独特の食感が病みつきになります。
雲南キノコ文化
解説: 雲南省は世界有数の「天然キノコ(野生菌)の王国」です。夏から秋にかけて雨季に入ると、市場や街角の屋台に山で採れたばかりの松茸、牛肝菌(イグチ/ポルチーニ)、ポルチーニ茸などの乾燥・生キノコが大量に並びます。
F1品種(雑種第一代)と異世界的リアル
解説: 主人公が悩んでいた「地球の種を持ち帰って育てると、2年目に実が小さくなって退化してしまう」という現象は、現代の農業技術である「F1品種(代々同じ性質が受け継がれない一代限りのハイブリッド種)」のリアルな特徴です。地球の現代農業の種を持ち帰った異世界転移者ならではのリアルな苦労と、それを解決するために「遺伝学の本」を買って帰る主人公の知性・計画性が光る見事な設定です。
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