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306. コーヒーと鶏豆涼粉

 私は足を止め、振り返った。


 一人の若い女の子が私の前に立ち、低い位置で結んだポニーテールを揺らしていた。


 エプロンにはカフェのロゴがプリントされている。


 彼女は片手にトレイを持ち、もう片方の手で白い小さなプラスチックカップを差し出してきた。


 中には三分の二ほど黒い液体が入り、カップの縁の外側には細かい水滴がびっしりと浮かんでいる。


 彼女は笑っていた。


 その笑みはごく自然で、もう何度も渡してきたからか、少しも緊張した様子はなかった。


 私は彼女の手にあるカップを見、それから彼女の顔を見た。


 彼女はカップを差し出したまま、引っ込めようとはしなかった。


 母とユーナは私の隣に立ち、それぞれ一杯を受け取っていた。


 私は指先でカップを受け取った。


 カップの壁はぬるく、熱くはなかった。


 カップを口元へ運び、一口飲んだ。


 液体が舌の上で広がっていく。


 最初の一瞬は熱く、次の一瞬は酸っぱく、その次は苦かった。


 その酸味は果物のあの瑞々しい酸味ではなく、焦げた匂いの混じった、くぐもった酸味だった。


 熟れ切らない果実を火にくべて、引き上げて水に浸したような味がした。


 苦味はその後ろから追いかけてきて、薄く一層だけ。


 その酸味を押さえ込むことも、焦げ臭さを隠すこともできなかった。


 カップを下ろしたとき、私はつばを飲み込んだ。


 喉の奥にはまだ焦げた味が残り、舌の根のあたりで何かが干からびたようだった。


 母は私の隣に立ち、白い小さなプラスチックカップを手にして、一口飲んでから、しばらくカップを掲げて中の液体を見つめ、それから置いた。


 何も言わず、二度とそれを見ようとはしなかった。


 ユーナも一口飲んだ。


 彼女の反応は私たちより分かりやすかった。


 飲み終えると口をむぐむぐと動かし、カップを口元から離して、底のほうを覗き込み、それから顔を上げて、眉間のあたりに一本しわを寄せた。


「酸っぱい」彼女は言った。


 私は何も返さなかった。


 女の子はまだトレイを手に隣に立っていて、笑みは顔に残っていたが、その弧はさっきよりわずかに浅くなっていた。


「お店の中も見ていってください」彼女は言った。


「ハンドドリップの体験コーナーもあって、豆も自分で選べます」


 この言葉を口にしたときの彼女の語速は、さっきより少し速かった。


 私たち三人がコーヒーを飲み終えて、あの「美味しい」という表情を浮かべなかったことに、もう気づいているのだろう。


 私は空になったカップを手に握りしめ、一秒だけ迷い、それから彼女のトレイに戻した。


 カップの底がトレイの上で、ごく軽い「カッ」という音を立てた。


 彼女は口を開きかけ、私がカップを置く手を見、それからトレイの上に並ぶ、同じように空になった残り二つのカップに目をやった。


 彼女はうなずき、トレイを手に、店の中へ戻っていった。


 低いポニーテールが、彼女が振り返るときに揺れた。


 エプロンの背中には、乾いたコーヒーの染みが小さく一つ付いていた。


 私は両手をポケットに入れ、青い石畳に沿ってまた歩き出した。


 ユーナが追いついてきて、私の隣を歩いた。


 何も言わなかった。


 私も振り返ってあの店の看板を見ることはしなかった。


 メインストリートを半分ほど歩いたところで、もっと細い路地が一本、脇へ分かれていた。


 路地の入り口に木の杭が立ち、そこに木の札が掛けられ、「三月街(さんがつがい)」の三文字が書かれていた。


 字はあまり上手ではなく、筆の運びがぞんざいで、まるで毛筆で適当に書いたようだった。


 ただ、その木の札自体が風雨に晒されて白っぽく色褪せていたので、字の荒さもそれほど目立たなかった。


 路地はメインストリートより半分ほど狭く、両側の軒が頭の上でくっつきそうになっていた。


 路地の中の店も小さく、手作りの銀細工を売る店、ばら売りの茶葉を売る店、乾燥キノコを売る店と、いくつかの屋台が道沿いに並んでいた。


 店主たちのほとんどは小さな折りたたみ椅子に座り、人が通ると顔を上げて一目見、人が通らなければうつむいたまま、客引きの声もかけなかった。


 銀細工の屋台の店主は、ポニーテールを結んだ若い男で、手に銀の板を握り、小さな金づちで台の上をコツコツと叩いていた。


 金づちが木の台に落ち、くぐもった「トン、トン、トン」という音が、速くも遅くもなく続いた。


 私はしゃがんで、台の上に並んだ腕輪を一つ手に取って眺めた。


 腕輪は太くはなかったが、内側には極めて細い模様が彫られていて、蔓が一周ぐるりと巻き付いているようだった。


 彫りは深くないが、線の始末はきれいだった。


 それを裏返して眺め、また元の場所へ戻した。


 店主は顔を上げて私を一目見、それからまたうつむいて銀の板を叩き続けた。


 私は腕輪を元の位置へ戻した。


 腕輪が木の板の上で少し転がり、ごく軽いぶつかる音を立てて、止まった。


 路地の奥の曲がり角に、数人の人だかりができていた。


 私が歩いていくと、人垣の隙間から中を覗いた。


 路地の奥の壁には、新しく描かれた壁画があった。


 一本の老木で、幹は横に伸びて壁の右側から生え、枝が左へと広がり、壁の上半分をすっかり埋めていた。


 梢のあたりには白い花がいくつか描かれ、花びらの縁がほんのり淡いピンク色に染まり、灰色の壁の上でひときわ清らかに見えた。


 絵の具はまだ乾いておらず、色が重なった場所が何箇所か見え、その縁にごく細い濃い色の水の跡が走っていた。


 一人の女の子が壁の根元にしゃがみ、地面のパレットを片づけていた。


 足元にバケツが置かれ、水は筆を洗って濁った灰色になり、中に赤と青の絵の具の筋が何本か浮かんでいた。


 彼女はそれらを帆布のバッグにしまい、立ち上がってファスナーを閉め、バッグを肩に掛け、振り返って歩き去った。


 出ていくとき、人だかりとすれ違い、誰かが彼女に何か声をかけ、彼女は笑って何か返し、それから路地を抜けて、角を曲がり、姿を消した。


 あの絵はまだ壁に残り、まだ乾ききっていなかった。


 絵の具が午前の光の中で、かすかに光っていた。


 私は人だかりの外側にしばらく立ち、それから向きを変えて戻った。


 ユーナは私の隣を歩き、追いついてからも何も言わず、ただ手首の新しい腕輪を半回転させ、あの二つのターコイズが手首の内側へ戻るようにしていた。


 路地の入り口を出ると、雲龍雪山(うんりゅうせつざん)がまた視界の果てに現れた。


 山頂の雲はすでに晴れ、積雪の輪郭が正午の光の下でくっきりとしていた。


 稜線には一片の雲もなく、霧もなく、山はただ清々しくそこに立っていた。


 昼食は大きな料理屋にはしなかった。


 私たちは古城の北門近くの横道で、あの屋台を見つけた。


 一台の三輪車に鉄板の台が立てられ、その上に白い磁器の丼が何列かと、きちんと揃えられた竹の箸が並んでいた。


 傍らに深い鍋が据えられ、鍋では茶色いスープが煮立ち、水面に香りの葉が何枚か浮き、湯気が鍋の縁に沿って立ち上っていた。


 屋台の主は四十がらみの女で、洗い晒しの青い布の前掛けをしめ、灰白色の涼粉を薄切りにしているところだった。


 包丁さばきは速く、一切れ一切れの厚みはほぼ揃い、切った涼粉は皿に並べられ、しっとりとした光を帯びていた。


 鶏豆涼粉(ジードウ・リャンフェン)。


 屋台の上に赤いプラスチックの札が掛かり、白いペンキでこの四文字が書かれていた。


 字は少し色褪せていたが、まだ読めた。


 私たちは一人前ずつ頼んだ。


 女将は涼粉を細切りにして丼に盛り、台の下からいくつかのホーロー盆を取り出した。


 中には色とりどりの調味料が入っている。


 彼女は小さなスプーンで、一つの丼に順番に味を加えていった。


 赤茶色のタレから始まり、酢、ニンニク水、花椒油、ラー油、そして最後に刻んだ青ネギと砕いたピーナッツをひとつかみ振りかけた。


 手際は速く、無駄な動きは一つもなかった。


 三つの涼粉が運ばれてきたとき、丼の縁には赤い油が一周付き、午後の光の下でつやつやと光っていた。


 私は涼粉を一切れ箸でつまんで口へ運んだ。


 食感は思っていたより柔らかかった。


 あの弾力のある柔らかさではなく、口に入れるとすぐ溶けてしまいそうな、そんな柔らかさだった。


 箸でつまむと抵抗を感じるが、口の中では舌先で軽く押すだけで、ほろりと崩れた。


 涼粉そのものには味がなく、わずかな豆の香りと、ひんやりとした触感があるだけだった。


 だがタレが絡むと、涼粉はまるで別の顔に変わった。


 先に酸味が来て、それから唐辛子の香りとわずかな痺れが混ざり合い、舌の両側から湧き上がり、最後はニンニクの辛みとピーナッツの油の風味で締めくくられた。


 私はもう一切れつまんだ。


 今度はタレを多めに絡め、赤いタレで涼粉の表面をすっかり覆った。


 ふと、口の中に一つの言葉が浮かんだ。


 紅龍国で最近流行っているらしい言葉だ。


 このタレなら、靴の底に付けても美味しい。


 私はその言葉を口には出さなかった。


 ただ、丼の中の厚い赤い油の層を眺め、なるほど少しは道理があると思った。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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