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304. 山

 二台の車が行き違うとき、窓と窓が向かい合い、向こうの車両の中の人影が見えた。


 スマホを見下ろしている者がいれば、カップ麺を食べている者もいて、窓に張り付いて外を覗いている子供もいた。


 そしてその車は過ぎ去り、私たちの車は再び動き出し、ゆっくりと加速しながら夜の闇へと入っていった。


 二度目の停車は、およそ四十分後だった。


 今度はトンネルの中だった。


 窓の外は真っ暗なトンネルの壁で、壁面には数メートルおきにぼんやりとした黄色の点検灯がともり、コンクリートのざらついた肌を照らし出していた。


 車が止まると、トンネルの静けさと車内の静けさが重なり、二倍以上の静寂となった。


 エアコンの送風音だけが、ただ一つ絶え間なく続く音だった。


 前方から母の小さなあくびが聞こえ、ユーナが身を翻し、顔を私の方へ向けた。


 彼女は目を開けず、ただ手を伸ばして私の指先にそっと触れ、また引っ込めると、体にかけた薄い毛布をきゅっと包み直して、そのまま眠りに戻った。


 私は座席の調節ボタンを押し、シートを完全に倒した。


 革の表面は柔らかく、清涼感のある洗香がかすかに漂っていた。


 横になると、体全体の重みが座席のあちこちに均しく分散し、肩からくるぶしまで、疲れを支えられているような緩んだ感覚があった。


 車内天井の読書灯は暗光モードで幽かな青白い光を放ち、夜の非常灯のようだった。


 両手を重ねて腹の上に置き、動車(高速列車)が微かな震えとともに再び動き出し、トンネルを抜けて夜空の下の闇へと滑っていくのを感じていた。


 三度目の停車のとき、私は眠っていた。


 どれほど眠ったかは分からない。三十分かもしれないし、もっと長かったかもしれない。


 目が覚めたのは、動車が再び動き出したときの、背中をシートにわずかに押し付けるような感覚を覚えたからだった。


 目を開けると、車内の明かりはすでに夜間モードに切り替わり、足元の灯りと各席の頭上の読書灯だけが柔らかな光を放っていた。


 窓の外の景色は鬱蒼とした山林からまばらな平原へと変わり、遠くの街の灯りが時折見えて、まるで誰かが地平線に砕けたダイヤモンドを一掴み撒いたようだった。


 乗務員が最後に通りかかり、親切にあと十分で着くと知らせ、シートの背もたれを起こす手伝いが必要かと尋ねてきた。


 ユーナが寝床から起き上がり、目をこすった。


 ピンクの長い髪は寝ぐせで少し乱れ、片側の髪が押しつぶされて何本か跳ねていた。


 私は手を伸ばして彼女の跳ねた髪をそっと押さえた。


 彼女が顔を傾けて私を見た。寝ぼけ眼で、口元に押し付けられた赤い跡がほんのりとあった。


 彼女は何も言わず、寄ってきて私の肩に一度すり寄り、それから立ち上がって服と箱を片づけに行った。


 動車が減速し始めると、窓の外の灯りが密集してきた。


 街の輪郭が夜の闇のなかから浮かび上がった。


 まばらな高層ビルの窓灯りから始まり、やがて一面の住宅地の灯りとなり、そしてまっすぐな大通りが現れ、街灯が二本の平行な光の帯となってプラットホームの端まで続いていた。


 雪月城(せつげつじょう)駅に着いた。


 雪月城駅を出ると、夜風が迎面のから吹き付けてきて、風花城とはまるで違う空気を帯びていた。


 より乾き、より冷たく、遠くの松林の匂いがほんのり混じっていた。


 駅前広場は風花城のものよりずっと広く、タクシーが専用レーンに列をなして待ち、車の灯りが夜の闇のなかで暖かい黄色の線となっていた。


 私たちは二台目の車に乗った。


 運転手は短い髪の中年の女性で、地元の訛りが混じる話し方をしていたが、ホテル名を確認するとそれ以上は口を利かず、運転に専念した。


 車は夜の市街を抜けていった。


 通りは風花城より広く、両側の建物も新しかったが、それでも白(ぺー)族や納西(ナシ)族の様式である青い瓦と白い壁の要素は残っていて、新旧の混ざり具合がちょうどよかった。


 街灯が車窓の外を一つずつ流れ去り、車内の人の顔を照らしては暗くしていった。


 私はシートにもたれて、体中に「今日はずいぶん歩いた」という疲れがゆっくりと広がっていくのを感じた。


 足の裏からじわじわと上がり、太ももと腰の奥へと沈んでいった。


 ホテルは古城の端の、静かな通りにあった。


 車が止まると、私は車窓越しに、それほど高くはないがとても凝った造りの建物を見た。


 外装には木と石がふんだんに使われ、暖かい黄色の灯りがロビーのガラス扉から漏れていた。


 入口の看板には紅龍国の文字と英語が並んでホテル名を記し、その下に小さな字で「遠くに蒼嶺を望み、近くに雪峰を観る」とあった。


 ロビーは広くはなかったが、配置がとても丁寧だった。


 フロントは一枚岩の青石を磨いたもので、表面は滑らか、木目は天然のまま、灯りの下で柔らかな光沢を放っていた。


 私が予約の旨を伝えると、フロントの娘はパソコンを何度か叩き、それから顔を上げて、ほんのりとした笑みを浮かべた。


「お客様、お部屋は豪華ツインルームから雪山ビューのスイートルームへ無料アップグレードとなっております。六階で、窓からは雪月城の雪山の方角が望めます。明日お天気が良ければ、朝、お部屋から日照金山(にっしょうきんざん)がご覧になれます」


 私は彼女からカードキーを受け取った。


 それは二枚で、一枚が603、もう一枚が605だった。


 603と605のあいだには、一枚の壁が挟まっていた。


 私は605を母に渡した。


 彼女は受け取って部屋番号を一目見、何も言わずカードキーをコートのポケットにしまい、エレベーターの方へと向き直った。


 エレベーターは六階に着いた。


 廊下は濃い灰色の絨毯が敷かれ、踏んでもほとんど音がしなかった。


 605のドアが先に開き、母が中へ入り、ドアが閉まる前にこちらへ手を振って、それを挨拶代わりにした。


 ドアが閉まり、錠の舌がカチリと音を立てて錠穴に収まった。


 部屋のドアを開けると、玄関の人感センサーの灯りが自動で点いた。


 私は中へ入り、玄関の仕切りを抜けて、そしてあの窓を見た。


 壁一面が床から天井までの大きな窓で、カーテンは開けられたままだった。


 窓の外は雪月城の夜景で、城区のまばらな灯りが夜の闇のなかで広がり、揉み砕かれた星空が大地に逆さまに被せられたようだった。


 そして、そのすべての背後。


 城区の端、灯りの果ての方に、巨大な濃い色の輪郭が地平線から立ち上がっていた。


 その頂には月光の下で銀白色に光るものが一面を覆っていた。


 雪だ。


 雪月城の名の由来となった雪山。


 私は窓の前に立ち、その銀白色が山頂で静かに月光を反射しているのを見ていた。


 ユーナが私の隣へ来て、無言で、しばらく私と並んで立っていた。


 それから彼女は手を伸ばし、窓ガラスに一度線を引いた。


 指先がひんやりとしたガラスの表面を滑り、かすかな跡を残した。


 彼女は手を引っ込め、指先に付いた細かなほこりを見て、それからズボンで指をこすった。


「明日の朝、見られる? あなたの言ってた日照金山」


「フロントが見えるって」


 彼女はうなずき、部屋の奥へと向き直った。


 部屋は広く、真ん中に大きなベッドが置かれ、シーツは真っ白、枕はふっくらとしていた。


 ベッドの足元には木製の貴妃榻(きひとう:カウチソファ)が置かれ、クッションは薄い灰色だった。


 隅には独立したウォークインクローゼットがあり、浴室は反対側で、半開きのドア越しに大きな浴槽が見え、白い磁器の表面が灯りの下で光っていた。


 ベッドサイドテーブルには小さな花束が置かれ、それは薄紫色で白い陶器の花瓶に挿してあった。


 花瓶の傍には、手書きのウェルカムカードが一枚置いてあった。


 浴室から出たとき、髪はまだ濡れていて、私はタオルで髪の先を拭きながら、窓際の貴妃榻へ行って腰を下ろした。


 窓の外のその銀白色はまだそこにあり、動かず、変わらず、ただ静かに、あるべき場所に留まっていた。


 私はタオルを膝に掛け、体を貴妃榻の柔らかな座布団に沈め込み、今日の疲れが肩のあたりからゆっくりと、少しずつ下へ沈んでいくのを感じた。


 ユーナが浴室から出てきたときには寝間着に着替えていて、薄い水色の綿の半袖とショートパンツで、髪もまだ濡れて肩に広がり、寝間着の肩のあたりに濃いしみを滲ませていた。


 彼女はベッドの脇へ行って腰を下ろし、顔を傾けて私を見た。


 視線が私の上に二、三秒留まると、彼女は立ち上がって近づき、貴妃榻の肘掛けに腰を下ろし、私の脇に寄りかかった。


 彼女は何も言わず、ただ手を伸ばして私の手からその半分濡れたタオルを受け取り、それから私の背にかかっていた濡れた髪をまとめ上げ、タオルで髪の先の水分をそっと押さえた。


 彼女の動作はとても軽く、指先が時折私の後首をかすめ、風呂上がりのような温かい触感を帯びていた。


「今日は山を登って疲れたでしょ」と彼女が言った。


「うん」


 彼女はもうしばらく髪を拭いてくれてから、タオルを畳んで貴妃榻の肘掛けに置いた。


 彼女は立ち上がらず、ただ肘掛けの上でより楽な座り方に変え、それから頭を私の肩に預けた。


 窓の外の雪山は月光の下で銀白色の光を放っていた。


 彼女の髪の先が私の腕に触れ、シャンプーの残り香がかすかにした。


 風が窓の隙間から一筋忍び込み、カーテンの端を揺らした。


日照金山(にっしょうきんざん / Rì zhào jīn shān)

雲南省の玉龍雪山や梅里雪山などで見られる極めて幻想的な自然現象です。明け方、太陽が昇るわずか十数分の間だけ、雪山頂の氷雪が太陽光を反射して「黄金色」に輝きます。一説には「見られた人には一生の幸運が訪れる」と言われており、物語の中での非常に美しいロマンチックな演出となっています。


貴妃榻(きひとう / Guī fēi tà)

唐代の楊貴妃が好んで使ったとされる中国の伝統的寝椅子(ローソファー)です。片側だけが高く傾斜した背もたれになっており、優雅に横たわったり寄りかかったりしてくつろぐために用いられます。二人が寄り添う場面の小道具として非常に情緒的な効果を生んでいます。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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