293. 斗南花市
彩雲城の夜は叻沙城とまるで違っていた。
あのふらつくような熱気はなく、夜風は涼しくて清らかで、街灯が古い通りを暖かい黄色に照らし、時折いくつかの店がまだ開いていて、お茶を売ったり、生花を売ったり、手作りの銀細工を売ったりしていた。
私たちは特に目的もなく、ただ歩いた。
「彩雲城」で、ユーナが私のそばを歩きながら、頭上の深い藍色の夜空を見上げた。
「思っていたよりいいわね」
「ええ」私は言った。
「前世の私はずっと来たいと思っていたのに、この世でようやく来られたの」
「何か悔いはある?」
私は考えた。
「あるわ」と私は言った。
「来るのが遅すぎたこと。でも、来られたのなら、来なかったよりはましだわ」
ユーナは小さく笑った。
「その通りね」彼女は言った。
「せっかく来たんだし」
前方の母がふいに足を止め、路傍にしゃがんで、小さな白い花をつけた植物に顔を近づけて何秒かじっと見つめ、それから顔を上げ、とても真面目な表情で尋ねた。
「この植物、毒はあるのかしら?」
「……それは路傍の植栽ですよ、母さん。たぶん毒はありません」
「たぶん?」
「毒はありません」
「よろしい」と彼女は思わせぶりに立ち上がり、手を払った。
「ただ、あの猛毒の紫血藤に少しだけ似ているように見えたもので」
私とユーナは顔を見合わせた。
「母さん、それはただの植栽の花ですよ」
「知っているわ」彼女は言った。
「ただ、癖で確認してしまっただけ」
翌日の朝。
彩雲城の朝は叻沙城とはまるで別物だった。
叻沙城の朝は熱気から始まる。
太陽がまだすっかり昇らぬうちに、空気はもうベタベタと肌にまとわりついていた。
一方で彩雲城の朝は涼しい。
薄い上着を羽織るほどで、布団から這い出したその瞬間に思わず肩をすくめるほどだ。
ユーナのすくみ方が一番ひどかった。
「寒い……」彼女は布団を顎までくるみ、目と寝ぐせのついたピンクの長い髪だけを出して、こもった声で言った。
「ゆうべはまだずいぶん暖かかったじゃない」
「昼夜の温度差が大きいのよ」私はスーツケースから薄い上着を三枚引っ張り出しながら言った。
「夜は涼しくて、昼は暖かい。普通のことだわ」
「叻沙城には、こんな温度差はなかったわ」
「叻沙城には過橋米線もなかったわ」
ユーナは一秒だけ黙って、それから布団を顎の下から少し下ろし、顔全体を出した。
「……起きる」彼女は言った。
母はもう洗面所で身づくろいをしていた。
半ば開いたドア越しに、鏡の前で銀白色の長い髪を結い上げている姿が見えた。
彼女は旅のとき、髪をまとめるのを習慣にしている。
視界の邪魔にならないからだと言っていた。
その動作は何年も繰り返しているうちにすっかり物になっていて、指が髪の間をくぐるときに、年輪を感じさせる熟練がにじんでいた。
私は携帯を見た。
朝の七時を少し回ったところだ。
斗南花市が一番にぎわうのは明け方の四時で、今から行くのはもう遅い。
だがフロントの者は昨夜、朝の七時八時でも卸しの終わり際が十分に見られると言っていた。
明け方に売り切れなかった花は値下げされて処分され、花市全体が片付け前の最後の宴へと入るのだそうだ。
「花市、まだ行く?」私は尋ねた。
ユーナはベッドから飛び降り、カーペットの上に立って素足で二歩歩き、椅子に置いた服を拾いに腰をかがめた。
彼女のピンクの髪が肩から滑り落ち、顔の半分を隠した。
「行く」彼女は顔を上げもしないで言った。
「せっかく来たんだし」
母が洗面所から顔を出し、口元に歯磨き粉の泡をちょっとだけ残したままで言った。
「花市って、たくさん植物があるの?」
「ええ」私は言った。
「紅龍国で一番植物が多い場所のひとつだと思います」
「じゃあ行くわ」彼女はそう言うと、顔を引っ込めた。
斗南花市は彩雲城の南にあって、旧市街から車でおよそ二十分だ。
私たちが着いたとき、花市はもうピークを過ぎていたが、それでも凄まじいほどににぎわっていた。
入り口の外には軽トラックがずらりと停まり、荷台にはまだ降ろしきれていない花が詰め込まれていた。
薔薇、百合、カーネーション、カスミソウ……。
花の色は雑多で、まるで誰かが虹全体を揉み砕いてトラックに詰め込んだかのように、山のように積み重なっていた。
花市のホールに入った瞬間の第一印象は「大きい」だった。
思っていたよりもずっと大きい。
ホール全体が巨大な屋内広場のようで、無数の露店に区切られ、どの露店にも山のような花が積み上げられていた。
花は束にされ、古新聞かビニールシートでいい加減に包まれて、簡易の鉄棚の上に積まれている。
花屋にありがちな、あの気取った陳列の気配はまるでなかった。
ここは消費者に花を売る場所ではない。
ここは花が消費者へ向かう最初の駅であり、サプライチェーンの源であり、まだ包装される前の、飾り気のない生花の原風景なのだ。
第二の印象は香りだった。
特定の花の香りではなく、何千という花の香りが混ざり合った末に生まれた、極めて濃厚で、ほとんど実体化しかけているような複合の香りだ。
香りの濃度は高くて少し目眩がするほどだが、安物の香水のような刺激臭でもなく、自然の花の香りが極限まで積み重なった末の、飽和した感覚だった。
ユーナは入り口に立ち止まり、まばたきをして、ひと息吸い込んだ。
「……いい匂い」彼女は言った。
その声には、圧倒されてちょっとぼんやりしたような色があった。
「匂いが強すぎて、ちょっと本物じゃないみたい」
「紅龍国で一番大きな生花の集散地ですよ」と私は言った。
「冗談じゃありません」
母はもう中ほどまで足を進め、百合を売る露店の前に立って、腰をかがめ、幾束もの白い百合を真剣に眺めていた。
彼女の表情はとても集中していて、まるで何か有毒な植物を検分しているかのようだったが、今度は本当にそれを愛でていた。
「この花はね」彼女は身を起こし、振り返って私に言った。
「エリクソンなら、同じ品質の花は、ここでの三から五倍の値段がするわ。それに、季節ごとに買えるわけでもないの」
「輸送のせいですか?」
「輸送も、鮮度保持も、それに栽培の難しさも」母は言った。
「精霊の庭ならこんなレベルの百合が育つかもしれないが、普通の家では無理よ。でもここでは」
彼女は目の前の花の山を指差した。
「こんなふうに、ただ地べたに積んであるの」
私は彼女を見つめ、ふと胸に一つの考えが浮かんだ。
ひょっとすると母の目に、この世界で一番不思議な場所は、携帯でもなく、汽車でもなく、あのごうごうと鳴る現代の機械でもなく、この花たちなのではないか。
この地べたに積まれ、やがて各都市へ配られていく、安すぎるほどに本物らしくない生花こそが、彼女にとってこの世界の最もまざまざとした豊かさの実感なのだ。
私たちは花を買わなかった。
旅程はまだ終わっていないから、百合の一束を抱えて汽車に乗るわけにはいかない。
だがそれでも、乾燥花を売る小さな露店の前で、乾燥花のしおりを三袋買った。
薔薇とラベンダーと金木犀で、小さくてバッグの横ポケットに入るほどで、場所を取らない。
ユーナはそのラベンダーの乾燥花の袋を鼻の前に持ってきて匂いをかぎ、それからもう一袋の金木犀の乾燥花を私に差し出した。
「あげる」と彼女は言った。
その口調も表情もなんでもないようにそっけないが、差し出す動作だけは少し素早かった。
私はその金木犀を受け取り、ポケットにしまった。
「ありがとう」
「ん」
母は傍らに立って、私たちのそのやり取りを見ていた。
何も言わずに。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!




