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253. 午前三時のコンビニ

 三、四人が、横の小路から歩み出て、私たちの前方、約三メートルの位置に立ち塞がった。


 こいつらの服装には、とても特徴がある。


 だぶだぶのスウェットパンツ、横向きに被った帽子、首には太い金属の鎖、手首には図柄のタトゥー。


 この街のある特定地域の、特定集団の、標準的ないでたちだ。


 先頭の男は、年の頃、三十に届かない。


 体型はごつく、顔には一本の細長い傷跡が、左眉の付け根から頬骨のあたりまで走っている。


 彼は道の真ん中に立ち、私たちの行く手をきっちりと塞いだ。


 彼はしばらく、私達三人をじろじろと見た。


 視線が最も長く留まったのは母。


 母の金色の長髪、長身、普通の旅行者に偽装しても隠しきれないあの貴さは、あまりに目立ちすぎる。


 それから彼は口を開いた。


 口から吐き出されたのは、翻訳の魔導具が処理してくれた内容。


 大意はこう。


「おいおい、嬢ちゃん三人、夜中にぶらぶら、何してんだよ。一晩、いくらだ」


 彼は言い終えると、後ろの数人の方を振り返って、ひひっと笑った。


 それは、明確な悪意を帯びた、己を利口だと思い込んでいる笑い声だった。


 残りの男たちの視線は、それぞれに失礼だった。


 連中は私達をこの地域で客を取る女たちと勘違いしている。


 私は魔力で母に低く伝えた。


「母上。あいつらは明らかに、私達をそういう商売の人間と見なしています」


 母はかすかに首を傾げた。


 彼女の目が、橙黄色の街灯の下で、冷静な光沢を浮かべている。


「ここの警察は、彼らを相手にするか」


 彼女は魔力で問い返した。


「まず、相手にしません」


 彼女は一拍おいた。


「ならば、手を出してもいいか」


 私は彼女に視線をひとつ返した。ご随意に。


 それから。


 あの顔中傷だらけの男が、母の肩に手を伸ばした、その一瞬。


 彼は、飛んだ。


 押し出されたのではない。


 投げ飛ばされたのだ。


 その動作は速すぎて、ほとんど目で追えなかった。


 母はただ横に一歩かわし、あの伸びてきた手を避けた。


 それから彼の慣性に沿って、とても標準的な格闘技の背負い投げで、この体格が彼女より二回りは逞しい男を、ほとんど教科書のように優雅な姿勢で、正面からアスファルトの地面に、叩きつけた。


 顔面から、着地。


 通り中に、あの鈍い衝撃音が響いた。


 その男は地面の上で、二秒近く呆然としてから、ようやく事態を把握した。


 口から甘腥い血の混じった息を一吹き、噴き出し、二、三片の砕けた歯の破片が地面に細かな音を立てた。


 一秒の沈黙のあと。


 彼は地面からもがきながら起き上がり、口のなかの破片を絶えず吐き出している。


 その顔には、憤怒、驚愕、そして彼自身がまだ意識していない、ほんの少しの恐怖が、書かれていた。


「このクソ……!」


 彼は罵り、それから顔を上げ、悪意に満ちた声で背後に向かって叫んだ。


「おい、兄弟ども、やっちまえ!」


 声が落ちると同時に、背後にいた数人の動きは二つに分かれた。


 一方は、銃を取り出した。


 小銃ではない。


 拳銃。


 腰のベルトに突っ込んであったものを引き抜く手つきは、とても手慣れている。


 これが初めてではない証拠だ。


 もう一方は、短い棍棒を取り出した。


 警棒のようなものもあれば、工事現場からくすねてきた鉄パイプもある。


 近くのテントから顔を覗かせて野次馬をしていた人々は、銃を見た瞬間に、さっと頭を引っ込めた。


 テントのジッパーの音が、あちこちで響く。


 彼らはこの通りで、十分に長く生きてきた。


 次の場面は、見物に適さないことを知っている。


 母はあの数丁の、自分に照準を合わせた拳銃をちらりと見た。


 動かなかった。


 彼女の表情は変わらなかった。


 武器が自分に向けられたときに当然、起こるべき本能的なストレス反応、人体のアドレナリン反応、固まるか震えるか後退するか、は、彼女の身体には、まったく存在しなかった。


 彼女はただうつむいて、袖口のボタンを右手で摘まみ、袖をかすかに一折り、たくし上げた。


 私は身体を横にして、ユーナをそっと半歩後ろに下がらせた。


「私の後ろに」


「はい」


 これは、私たちに保護が必要だからではない。


 これは、これから母が動く範囲のために、彼女に十分な広さの間合いを、あらかじめ確保する必要があるから。


 あの数人が突っ込んできた。


 一番に銃を持った男が、母から約二メートルの距離で、引金を引いた。


 銃が、鳴った。


 だが弾丸は、誰にも当たらなかった。


 銃声が鳴った、まさにその一瞬、母の身体は、もうその場にいなかった。


 彼女は右に一歩、移動し、弾道をかわし、それから流れるように、あの銃を握った手首を掴み、下へと押し下げ、外へと極めた。


 骨の音が、思わず歯が浮くような周波数で伝わってきた。


 あの銃が地面に落ちた。


 その男は手首を押さえて、短い悲鳴をあげた。


 だが母は止まらなかった。


 二人目の棍棒を振りかざした男が、すでに棍棒を叩きつけようとしていた。


 彼女は身体をかわし、肘で相手のこめかみに反撃した。


 全力ではない。


 ただ人を一時的にバランスを失わせるだけの力。


 相手はよろけて横の男にぶつかり、二人一緒に、その場にしゃがみ込んだ。


 三人目が、迷った。


 彼の銃はまだ構えられていたが、頭のなかの算盤が、すでに振り出しに戻され始めていた。


 なぜなら、彼の目の前のこの金色の長髪の女の、最初から最後まで、その動作は、普通の人間の反応ではなかった。


 普通の人間は、銃を前にしたとき、逡巡があり、恐怖があり、本能的に後退する。


 ところがこの女は。


 彼女は銃声のあと、反応する速度が彼の見てきたどんな人間よりも速い。


 より深い層で、すでに骨の髄まで刻み込まれた反応。


 彼の手が、かすかに震え始めた。


 母は顔を上げ、あの目で、彼を見た。


 その眼差しを、私は横からとてもはっきりと見ていた。


 脅迫でもなければ、憤怒でもない。


 その男は銃をしまい、それから振り返って、早足で去っていった。


 とても速く、一切の迷いもなかった。


 地面に倒れた数人のうち、誰かがもがいて這い上がろうとした。


 母がうつむいて彼を一目見た。


 その人は即座に這い上がるのを諦め、再び地面に張りついた。


 先頭の、あの顔中傷だらけの男は、すでに道端に退き、壁に凭れて、帽子を低くし、視線を泳がせ、母とのあらゆる視線の接触を完全に回避している。


 通りに、静寂が戻った。


 相変わらずあの数灯の橙黄色の街灯。


 相変わらず遠くの都市の灯りが夜空を濃い青に染めている。


 相変わらず風に乗って漂う、さまざまな匂いが混ざった夜風。


 ただ地面の上に、何人かの、姿勢の異なる人間と、落ちた拳銃が一丁、増えただけ。


 母は袖口を整え、振り返って、私に言った。


「行ける」


 私は彼女を見て、それから地面に数人を見た。


 全員、怪我はあるが死んでいない。


 命に別状はない。


 せいぜい骨折と打撲。


 頷いた。


「行きましょう」


 私たちは市街地の方角へと、歩き続けた。


 背後に、追いかけてくる足音は、一切ない。


 母は先頭を歩き、歩みは安定し、背筋はまっすぐ。


 金色の長髪が夜風のなかでかすかに揺れている。


 さっきと、何も変わらない。


 あの区画を抜けると、通りはいくぶんきれいになった。


 街灯が連続し始める。


 歩道からテントが消える。


 たまにタクシーが路肩を通り過ぎていく。


 道端のコンビニが灯りを点け、ショーウィンドウのなかの商品が静かに並んでいる。


 私の携帯が示している現地時間午前三時十七分。


 空はまだ暗い。


 だが暗闇の縁、東の空はすでに、かすかに一筋の濃い青と橙赤のあいだの移行を滲ませ始めている。


 夜明け前の、最後の一段の色。


「腹が減った」


 母が不意に言った。


「……今、追い剥ぎに遭ったばかりですが」


 私が言った。


「分かっている」


 彼女は言った。


「それから連中が、私にやられた。それから私の腹が、減った」


 この因果関係は、本当に、極めて明晰だった。


「……コンビニを探しましょう」


 私はこの論理を追うのを諦め、携帯をポケットにしまい、顔を上げて近くのコンビニの看板を探した。


 ユーナは横で、もう顔を上げてあたりを見回し始めている。


 その表情には、コンビニにどんな美味しいものがあるか、何かが期待されているらしい。


 私はため息をつき、彼女たち二人を引き連れて、道端のあのコンビニのガラス扉を押し開けた。


 冷気が扉の隙間から溢れ出て、顔にぴたりと涼しい。


 店内の灯りは明るく均等で、棚には整然と食品、飲料、菓子が陳列されている。


 花の国のコンビニに比べれば、配置には少し違いがあり、ブランドもまったく見覚えがない。


 だが、あの現代のコンビニの空気だけは、全世界共通だ。


 レジの後ろで、眼鏡をかけた若い店員が携帯をいじっていた。


 来店を知らせるチャイムを聞いて、彼は顔を上げ、私達三人を一目見て、それから携帯の画面を裏返しにカウンターの上に伏せ、真面目に仕事をしているという職業的姿勢取った。


 私はうつむいて冷蔵ケースのなかの食べ物を見た。


 この世界の、午前三時のコンビニ。


 やはり、私達のような人間のための場所だ。

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