244. 再会の和室
床は畳。
乾いた稲藁の清らかな香りを放つ、縁に濃い色の畳縁を織り込んだ、あの畳。
踏むと、とても特殊な柔らかさと硬さのあいだの弾力がある。
異世界の城で床に敷かれた獣の皮のカーペットとは、まったく別の体験だ。
部屋の採光は主に背後にある障子と右側の木枠の紙窓による。
午後の陽射しが紙窓を通して柔らかくなり、部屋全体をあたたかな、淡いミルクイエローの色調に染めている。
ローテーブルが一脚、和室の中央に据えられている。
ローテーブルは濃い色の無垢材。
表面には年月が残した細かな引っ掻き傷があるが、よく拭き清められ、木目が光のなかでかすかに輝いている。
卓の上には青磁の茶筒がひとつ、同じ素材の急須がひとつ、そして二つ、いや、三つの茶碗。
三つの茶碗。
誰かが、三人分の客の茶器をあらかじめ用意していた。
私の視線は茶碗から離れ、ローテーブルの後方へと降りた。
そこに、一人の老人が、畳の上に正座している。
いや、正確には、正座しようとしている。
彼の身体はかすかに震えている。
どうやらこの姿勢を保つこと自体が、すでに大量の精力を消耗する作業になっているらしい。
両手は膝の上に突っ張り、小指の関節は力が入りすぎてかすかに白い。
広い額には薄く汗が浮かび、午後の陽射しのなかでかすかに光っている。
「沖田のおじさま」
私は口を開いた。
花の国の言葉で。
声は大きくない。
「今ではずいぶんご趣味がよろしいようで。高級品までたしなんでいらっしゃる」
私の視線はローテーブルから少し離れた、細長いブリキの茶筒の上に落ちた。
その茶筒はおよそ手のひらほどの長さ、幅半分ほどの広さ。
ブリキの表面には赤い文字がいくつか印刷されている。
湖城龍井。
缶の塗装にはかすかな摩耗の跡があり、角のブリキにはわずかな打ち傷がある。
いろんな場所へ連れて行かれた証拠だ。
湖城龍井。
私の前世の記憶のなかでは、この茶は紅龍国でとても有名だ。
産地は湖の周辺で、乱反射する湖水に育まれたあの斜面。
だが花の国では、この輸入茶は「飲めるということは、すなわちコネがある」というレベル。
買えないほど高いからではない。
流通経路が限られ、目利きが少なく、それに、本当にいい一番採りの龍井茶は、花の国の茶葉店では「値段がつけられないほど希少」なのだ。
沖田が飲んでいるこの缶、ブリキの摩耗の度合いからすると、すでに開封してしばらく経っている。
七八十歳の老人が、いい茶を一缶、あれほど長く飲んでいる、これは、彼がとてもゆっくりと飲み、とても大切にし、あるいは、彼の日常生活のなかで、落ち着いて座ってゆっくりと茶を一杯、飲める時間が、そもそもあまり多くないということ。
だが緑茶は、本当は、新鮮なうちに飲み切らなければ。
「やはり、あんたたちでしたか」
沖田の声は、数分前、廊下で聞いたあの「通しなさい」に比べて、何かが増していた。
「諦め」か「受け入れ」か、なんとも言い表せないものが。
身体の震えは、どうやら私たちの出現でいくらか和らいだ。
生理的な好転ではない。
心理的なもの。
まるで彼はこれまでずっと、もう一つの靴が落ちる音を待っていた。
そして今、靴がようやく落ちた。
落ち方は彼の望むものではなかったかもしれないが、少なくとも、もう待たなくていい。
彼は振り返って私たちを見ようとはしなかった。
視線は自分の前のあの茶碗の上に落ちている。
茶碗は空で、底には数枚の開き切った茶葉があり、午後の陽射しのなかでひどく瑞々しい緑を見せている。
「あんたたちと初めて会ったときは」
彼はようやく頭をかすかにこちらへ向け、横目で私を一瞥した。
「あまりいい思い出じゃなかったな」
この言葉が、私の記憶のなかの、これまで丁寧に整理したことのなかった区域に、引き金を引いた。
一年前。
あのとき私はまだ、二つの世界の時空の対応関係を完全に整えてはいなかった。
だが佐藤健のアパートを「空間のアンカー」として、花の国への旅をすでに一度成し遂げていた。
そのなかの需要のひとつが、身分証だった。
花の国のような現代社会では、合法的な身分書類がなければ、多くのことができない。
ホテルに泊まるのは、まだ最も基本的なこと。
もっと大きな問題は、もしここで長期的に活動し、物資を購入し、さらには何か安定した供給チェーンを築くなら、私とユーナには「この社会のなかで合法的に存在できる」身分が必要だった。
この件は、自分一人でも部分的にはできるが、十分に安定しない。
花の国の戸籍システムは飾りではない。
どこからともなく「十八歳になったばかり」の身分を捏造し、システム照合を通過させるには、誰かが「システムの外側」のあのルールのなかで口を利ける必要がある。
沖田。
その「誰か」だった。
当時、私が彼に会いに行ったときは、魔力を使って彼の闇に潜んだ四人の手下を探り当てて即死させただけでなく、同時に彼に、私たちの世界の、隷属の首輪を嵌めて、彼の行動を制限した。
今でもまだ、沖田の首筋には、あの黒い漆塗りの首輪が嵌まったままだ。
沖田は馬鹿ではない。
「四人が同時に突然死」という現象そのものが、武器で残されたどんな傷痕よりも恐怖を呼ぶことを、彼はよく知っている。
刀や銃で人を殺せば、少なくとも敵が誰か、どんな手段かは分かる。
だが「突然死」は、相手が、完全に未知の、何の前触れもなく、無防備なまま、あなたの核心戦力を一筆で抹消できることを意味する。
この恐怖は、勇気とは無関係。
生物としての本能の次元における、「不可知の脅威」への制圧的な恐怖。
この恐怖を利用して、沖田に協力させることに成功した。
二冊の、どう見ても完全に合法的なパスポートを用意させた。
花の国で身分証を処理できる人間にとって、これは不可能ではない。
だが、決して簡単でもない。
彼は「上下に関係を回し、莫大な借りを作って」ようやくこの件を片づけたのだ。
パスポートのほかに、もうひとつ、もっとぶっ飛んだ需要があった。
現役の銃器。
拳銃はまだいい。
花の国の地下武器市場は管理が厳しいが、手がまったくないわけではない。
だが私たちが求めていたのは拳銃ではなかった。
小銃だった。
短機関銃だった。
本当に「首が飛ぶ」代物。
沖田にとっては、これは彼のリスク一覧に核兵器クラスの項目をもうひとつ追加するに等しい。
だが最後は、彼はやった。
彼の強硬な人脈網と組織内の圧倒的な財力で、それらを期限内に私たちの手に届けた。
ここまで考えて、私は目の前の畳の上に正座し、身体がかすかに震える老人を見つめ、心のなかに突然、とても複雑なものが湧き上がった。
後ろめたさではない。
後ろめたさはあまりに軽すぎる感情で、今のこの状態を言い表すには足りない。
もっと正確な言い方をするなら、私は彼を認めている。
私にあれほど「お世話」をされたあとでも、彼は組織を維持し、花の国の地下社会のなかで重みを保ち、そして私の三人組の再訪時に、「逃げず、喚かず、待たず」という体面を保った。
この心理の質は、異世界に置けば、公爵領の一人のそれなりの官吏には十分だ。
「沖田のおっちゃん」
私は口調を、十三歳の子どもが年長者に向かうときの、適度な親しみ、だがわざとらしいおもねりにはならないように整えた。
「彼女は私の母です。どうか、母の分のパスポートもお願いできますか」
言い終えて、あらかじめ用意してあった封筒をひとつ、ローテーブルの上に置き、沖田の方向へと押し出した。
封筒のなかには、ヘレナの個人情報と、花の国の自動証明写真機で撮影した、パスポート規格に合った証明写真が入っている。
ヘレナは私の背後に立ち、沈黙を保っている。
彼女は今、あの淡いクリーム色の長袖シャツと濃い色のワイドパンツを着て、金色の長髪を後ろで低いポニーテールにし、精霊の耳を幻化魔法で人の耳の形に収めている。
沖田の和室のなかでは、彼女は一人の気品に溢れた西欧のどこかの国から来た中年の女性旅行者にしか見えない。
彼女の、あの平静すぎるほど平静で、ほとんど冷たいとすら言える目を、無視するならば。
沖田の視線は封筒からヘレナの上へと移った。
ほんの一瞬。
それから彼は視線を戻し、手を伸ばして封筒を取り、指一本で封を開け、なかの資料を取り出して、とても真剣に一通り目を通した。
「ふふ」
彼はとても軽い笑い声を発した。
もし笑いと呼べるならば。
「お嬢さん、今日はこの年の瀬の老いぼれに会いに来たのは、そのためだったか」
これは探りだ。
彼はよく分かっている。
今日の私たちが来たのは、パスポート一枚を作るためだけではない。
パスポートは口実。
本当の目的は、まだこの先にある。
そして彼はこの「俺が先に話を言ってやるから、どう返すか見てやろう」という方法で、私の限界を探ろうとしている。
「沖田のおっちゃんは、やはりお賢い」
私は見抜かれた恥ずかしさなど微塵もなかった。
最初から隠すつもりもなかったから。
「もう少しお願いしたいことがあります」
私は収納の腕輪から、麻袋をひとつ、取り出した。
麻袋は大きくないが、畳の上に落ちる音は、重く鈍い「ドスン」。
金属どうしがぶつかり合い、宝石どうしが押し合う、あの音。
私は麻袋の口を開き、なかのものをローテーブルの上に一部広げた。
金貨。
宝石。
それらはアルフレッドが私に託した、花の国と紅龍国で物資を購入するための資金。
一部はエリクソン領地の金山から算出された、純度の極めて高い金塊と金貨。
もう一部はヘレナがこの何年かの冒険者人生で収集してきた様々なカット済みの宝石。
ルビー、サファイア、そして数粒の、親指の先ほどのサイズの、透明度の極めて高いダイヤモンド。
花の国の貴金属買取市場では、これらの品の現金化能力はとても高い。
ただし前提として、信頼できる人間が、「公式ルートを通さず、記録を残さず」に両替を完遂してくれることが条件だ。
「どうか沖田さん、いくらか使えるお金を用意してください。花の国幣と、紅龍幣と、青龍幣です」
私は麻袋の口をもう一度、きゅっと閉めた。
「割合は、五対四対一でお願いしますね」




