237. 土下座の佐藤、そして公爵夫人の名乗り
片方の腕は部屋の隅に弾き飛ばされ、丸い頭部はローテーブルの下に転がり込み、胴体部分は私の靴底に踏まれて三つに割れ、断面はぎざぎざで、内部の中空の樹脂の骨格が剥き出しになっている。
それはフィギュアだった。
二人の人物が寄り添ったフィギュアで、砕けた胴体部分をよく見ると、一人は桃色の短髪の人物だと識別できる。
もう一人は白金色の長髪。
二人の姿勢はひどく親密で、おそらく顔と顔をぴったりと寄せ合い、身体を近づけた構図だろう。
これは。
クローディアとユーナのフィギュアだ。
クローディアとユーナのぴったんこバージョン。
私はそこに立ち、うつむいて一面の破片を見つめていた。
転送が生み出した残余の輝きが、まだ空気中に消散している。
それから、横からこんな声が聞こえた。
「うわあ」
佐藤健の声だ。
私は振り返った。
佐藤健は部屋の反対側に立っている。
彼のアパート。
六畳の部屋、畳の床、壁側にローテーブル、その上にノートパソコン一台と雑多なものの山。
彼の身長はさほど高くなく、百七十センチほど。
黒縁の眼鏡をかけていて、髪はやや乱れ、アニメキャラクターがプリントされたTシャツと短パンを履いている。
このときの彼の表情は。なんというか。
もし彼が一枚のスタンプ画像だとしたら、その画像には「脳が絶賛フリーズ中」と書かれているだろう。
口は半開き、目は大きく見開かれ、視線は私と一面に砕けたフィギュアとのあいだを高速で行き来している。
処理能力を超えたコンピュータが、この二つの入力信号のあいだを絶え間なく飛び移っているが、有効な出力を生成できない。そんなふうに。
私がまだ何も言わないうちに。
ドンと背後から轟音が響いた。
攻撃魔法の轟音ではない。
空間転送が二度目に成形された、あの轟音。
二、三秒後、ユーナとヘレナの転送門が、まったく同じ位置で開いた。
それから。
二人が落ちてきた。
ユーナが一番に着地した。
彼女の反応は私より速い。
転送の残留無重力感がまだ完全に消えないうちに、すでに両脚で着地を安定させ、膝をわずかに曲げ、身体を前に傾けてバランスを保っている。
しっかりと立ち、視線で周囲の環境を一巡りした。
六畳の部屋、畳、ローテーブル、パソコン、一面に散らばるフィギュアの破片。
それから視線が私を捉えた。
「これは……」
「踏み砕いたの」
私は言った。
「ごめん」
「何を踏み砕いたの」
私は地面に目を落とし、すぐに視線を逸らした。
「あまり……大事じゃないもの」
ユーナはうつむいて見た。
それから彼女の顔が赤くなった。
その程度は、耳の先から首の根元まで広がるあの赤さだった。
「これって」
彼女が地面の破片を指さした。声が突然高く、細くなった。
「これ、私たちじゃない!? 誰がこんなものを作ったの!?」
「おそらく……佐藤健の仕業よ」
私が言った。
佐藤健はこのとき、ようやく処理能力超過から立ち直った。口を開き、最初に発せられた言葉は。
「ぼくの……ぼくの……」
声が震えていた。
それから彼の視線は、砕けたフィギュアから離れ、部屋の中央に立つヘレナへと向かった。
ヘレナの着地の仕方は、娘とはまったく異なっていた。
安定着地はない。膝の緩衝はない。環境の評価はない。
彼女が落ちてきたときのありさまは、まるで一塊の岩が地面に落ちたかのようだった。
両脚は畳の上に叩きつけられ、力の大きさは、佐藤健の部屋の床構造が抗議の音を立てたのではないかと私が疑ったほどだ。
だが彼女自身の立ち姿は依然としてまっすぐ。地面に打ち込まれた鉄の杭のように、少しも揺るがない。
濃い青の礼服の上の銀の刺繍が、転送の残余の光の中であっという間に光った。
背後の金色の丸い光面が部屋の天井の蛍光灯の光を反射し、背後に金色の暈を一周作り出している。
低く垂れた、現実とは思えないほど太陽のようだった。
金色の長髪が簪から数房滑り落ち、頬の両側に垂れ、柔らかな灯りの下で絹のような光沢を放っている。
彼女の目。あの優しい杏の目。
今、この瞬間、とても冷静な、ほとんど感情の色を排した視点で、この六畳の部屋を吟味している。
それから、彼女の視線が佐藤健のうえに落ちた。
佐藤健は腰が抜けた。
比喩ではない。文字通りの、膝が折れて身体が下へ落ち、どすんと尻餅をついた。
「お、お、おまえは」
ヘレナは彼を一秒見つめ、それからかすかに顎を上げた。
視線を下から上へと走査する。目には穏やかだが、絶対に挑戦を許さないあの余裕が滲んでいる。
それから彼女は口を開いた。
声は低く落ち着いて、一音一音がクリスト伯爵家数百年の礼儀訓練の刻印を残している。あの発声の仕方は、話しているのではない。宣しているのだ。
「お初にお目にかかります」
翻訳の魔導器が彼女の言葉を花の国の言語へと変換した。
かすかな魔力共振の反響が一層乗り、声調は彼女の原音よりもやや高い。
だが、あの落ち着いた気迫だけは完全に保たれている。
「私はクリスト伯爵家長女にして、エリクソン公爵夫人。ヘレナ・フォン・クリスト」
佐藤健は床に座り込み、ローテーブルに背を預け、眼鏡は歪み、口は開いたまま。全身、コードを引き抜かれた機械のようだった。
ヘレナは続けた。
「娘に宿をお貸しいただき、感謝に堪えません。このご厚情、エリクソン公爵家は決して忘れません」
翻訳機は一言一言を忠実に変換した。そして佐藤健の顔色が白くなった。
恐怖の白さではない。情報量が大きすぎて、脳が強制的にシャットダウンされた白さだ。
彼の視線は、ヘレナの背後にある金色の暈、濃い青の礼服のうえの銀の盾の紋章、そして彼女の顔に浮かぶ「私は公爵夫人として、正式な外交対話をあなたと行っている」という表情、この三つのあいだを行ったり来たりしている。
それから彼は、ひとつのことをした。
額をどん、と畳に打ちつけた。
「佐藤健と申します! おもてなし、ありがたく! かたじけのうございます! 恐悦至極に存じます!」
この言葉には翻訳機は必要なかった。彼が口にしたのは、花の国の言葉のままだ。意味もだいたい聞き取れた。
基本的には「私はいち市井の者にすぎません。どうか私にそのご格式で接しないでください」という意味だ。
ヘレナはかすかに首を傾げた。どうやらこの場面を評価しているらしい。
それから彼女は腰を屈め、片手を差し伸べた。よく手入れの行き届いた長い指、きちんと切り揃えられた爪。佐藤健の肩をそっと支えた。
「どうかお立ちください」
彼女は言った。声は依然として落ち着いているが、口調だけはいくぶん柔らかくなった。
「ここに公爵も伯爵もおりません。遠路より訪れた客人がいるだけです。そのような大礼は不要です」
佐藤健は震えながら顔を上げ、眼鏡の奥からヘレナを一目ちらりと、そして私を見て、またユーナを見た。
ユーナはちょうど床にしゃがみ込んで、あの砕けたフィギュアの破片を調べているところだ。顔の赤みはまだ完全に消えていない。
それから彼は、再び額を畳に打ちつけた。
「私、今の状況があまりよく理解できていません!」
「……母上」
私はため息をつき、前に出て佐藤健の横にしゃがみ、花の国の言葉で彼に言った。
「佐藤、立って。この人は私の母。異世界から来たの。初めて花の国に来て、この世界のルールにあまり詳しくないわ。そんなに緊張しなくていいから」
佐藤健は顔を畳から上げ、とても複雑な目で私を見た。
「あんたの母さん?」
彼の声が震えている。
「あんたの母さんが、こんな姿なの? 見た目、あんたより一回りくらいしか違わないじゃないか! 本当は姉なんんじゃないのか!?」
精霊族の外見の維持能力。この話は花の国では、ほとんど説明したことがなかった。
「母の実際の年齢は……」
私は言葉を選んだ。
「見た目より、ずっと上よ。精霊族の成長周期は人類とは異なり、十八歳を過ぎると外見はほぼ変化しなくなり、比較的安定した状態で保たれるの。母の表面年齢は見たところ二十五、六歳だけど、実際の年齢は……」
「女性の年齢を議論してはいけません」
ヘレナが私の背後で、平静に言った。
「……はい」
佐藤健は床から這い上がり、歪んだ眼鏡を直し、それから改めて場面全体を点検した。
一面に砕けたフィギュアの破片。
床に座り込んで呆然とする当の本人。
部屋の中央に立ち、華麗な礼服を纏い、背後に金色の暈を帯びるヘレナ。床にしゃがんで顔を赤くするユーナ。
そしてすぐ横に立ち、表情は誰よりも落ち着いているが、内心ではこの旅の制御不能要素がさらに数項目増えたと高速計算している私。
「つまり」
彼は深く息を吸い、力を振り絞って自分の声を正常に戻そうとした。
「君たち、花の国に来たのは観光じゃないんだな」
「半分半分ね」
私は言った。
「母は初めてだから見せてあげるの。残りの半分は購買任務」
「購買?」
「父から渡されたリスト」
私は言った。
「二十数項目。三段階の優先度。主に技術系と物資系。種子、工具、技術図面の類よ」
佐藤健の口元が引きつった。




