234. 試験の終わり、そして父の指令
その後の数時間、このもともと静かな春の午後は、即席の補習教室へと変わった。
私は食卓を一番光のいい位置に移動し、チャーリーに宿題帳を開いて卓の上に広げさせ、彼女が前回間違えた問題から始めた。
答えを直接教えはしない。まず「この問題は何を聞いていると思う?」と訊いた。
チャーリーは問題を三十秒ほど見つめ、それから言った。
「……この数が、どんな性質か、ってこと?」
「そう。じゃあ、この数の性質は、どうやって判断するの」
「それは……分数の形にできるかどうかで……」
「近いわ。もう一度考えてみて。いつ分数で書けて、いつ書けないか」
チャーリーは眉を寄せ、頭の中で明らかに長いこと探し回っていた。
この年齢の子どもを教えるときに難しい点がひとつある。頭が悪いからではない。
答えを与えられるやり方に慣れすぎていて、自分で導き出す過程に適応できていないのだ。
チャーリーはまさにその典型で、彼女の学び方は一貫して、一度聞く、覚える、使う。
だが数学は暗記問題ではない。公式を覚えたあとに、なぜその公式が正しいのかを分かっていなければ、変形した問題のなかで正しい道を見つけることはできない。
「分数で書けるのが有理数で、書けないのが無理数」
チャーリーがとうとう言った。語気はやや自信なさげだった。
「でしょ?」
「方向は合ってる。でも、まだ正確じゃないわ」
私は彼女の鉛筆を取り上げ、宿題帳の余白にいくつかの例を書き出した。
「たとえばこれ、あんたが判断してみて」
チャーリーは真面目な顔でうつむいて見て、それから導出を始めた。
隣では、ニーナが自分のノートを、彼女自身が印をつけたあの証明問題のページまで開き、卓の上に広げた。いつものあの、細くて軽い声で訊いた。
「この問題、二通りの方法でやったんです。結論は同じなんですが、途中の論理が違います。どちらがより厳密か、見てもらえますか」
私は彼女のノートを受け取り、その二つの解き方を見た。
ニーナの数学のノートは、とてもきちんと書かれている。ひとつひとつの導出段階がインデントで層を分けられ、修正の跡は少なく、論理の筋道がはっきりしている。
彼女の他の科目のノートと同じだ。一目で分かる。この子は試験のためだけに勉強しているんじゃない。本当に理解したいからやっている。
「二つ目のほうが厳密」
私は言った。
「ひとつ目の結論も正しいけど、途中の一段階で、あんたが暗黙に成立していると思い込んでいる前提がある。実際にはその前提は、単独で証明される必要があるわ」
ニーナは聞いてうつむき、自分のノートを見つめ、それから極めてかすかな、ほとんど幻聴かと思うほどの声で「ああ」と言い、鉛筆を手に取って横に注釈を入れた。
そうして、午後の陽射しは斜めから水平へと変わり、暖かな橙から淡い金色へと変わっていった。
ユーナの小説はついに次の章へと進んだが、彼女は折に触れて本の上から視線を上げ、こちらの進捗をちらりと窺っている。
おそらく「今日の補習はいつ終わるのか、夕飯を一緒にどうか」といつ切り出すかのタイミングを計っているのだろう。
チャーリーが三問目を正解したとき、彼女は有頂天になってノートの上に勢いよく丸を描き、卓をひとつ叩いた。
「合ってた! これ、合ってた!」
ニーナは卓を叩く音に驚かされ、ノートをほんの少し下げ、それから再び持ち上げた。表情には「私はとっくに正解してるから、そこまで興奮しなくても」という微妙さが滲んでいる。
「まあまあ……」
チャーリーはニーナの表情に気づき、気まずそうに頭を掻いた。
「続き、次!」
あの午後の補習は、夕飯時まで続いた。
最終的な成果は、チャーリーが期末試験範囲の基礎問題を全パターン一通り洗い、誤答率を許容範囲まで下げた。
ニーナは彼女の証明問題二問の論理を修正し、さらにもう一問、彼女自身もどこかおかしい気はするがうまく言い表せないという追加問題を持ち出して、私に検証させた。
期末試験の結果は、私が後に知ったときには、すでに掲示板に貼り出されたあとだった。
チャーリーは、かろうじて合格。落第はなし。補習も必要なし。
彼女の成績表を目にしたとき、当の本人はちょうど掲示板の前に立っていて、手は横の煉瓦の壁に凭れかけ、長く息をひとつ吐き出し、何か重いものを下ろしたかのようだった。
それから振り返って、私も見ていたことに気づき、表情がまず一瞬こわばり、すぐに誇りなのか安堵なのか判別しがたい笑みに変わった。
「受かったわ」
彼女が言った。当然の権利のように堂々とした口調で、まるでそれがとても大したことであるかのように。
「受かったわね」
私は確認した。
「六十二点。でも受かったわ」
「その数字、言わないで!」
「分かったわ」
ニーナの成績は、ユーナに次ぐ優秀さだった。
この件でチャーリーはしばらくニーナを睨みつけ、ニーナはうつむいて本を胸に抱え、何も言わなかった。ただ口元に極小さな弧が浮かび、あっという間に押し消された。
ユーナは一番当然の結果だった。
彼女は私が花の国の教科書の練習問題をやらせていたときから、すでに私の予想よりまる二章分も先に進んでいた。
数字に対する感覚が生まれつき鋭い。ある意味、火属性魔力のなかに存在するエネルギー密度への本能的な感知と関係しているのかもしらなかった。
この推測を裏づけたことはない。ただの直感だ。
私自身については。
「上位十名、掲示」
ユーナが私の名前を読み上げたとき、こちらをちらりと見て、それからごく自然に身を寄せ、そっと頭を私の肩に預けた。
「あんたも入ってる」
彼女が言った。
「出題者だからね。入ってなきゃおかしいでしょ」
「出題者も受けるの」
「学生がどこで引っかかるか知りたいなら、自分で一度解くのが一番いいのよ」
「……」
ユーナはしばらく黙り、それから言った。
「やっぱり特別な理由があったんだ」
学年が終わった。
つまり、一番長い休暇が始まったのだ。
四ヶ月。合わせてまる四ヶ月の休暇。春の終わり、夏のすべてを越え、秋の始まりに学院が再開するまで続く。
私はこの数字を頭のなかで何度か転がしてみた。
前世で会社員だった頃、年間の法定休暇を合わせて四十日もあれば上出来だった。出張や案件の追い込みが重なれば、その四十日のうち半分は削られる。
そして今、四ヶ月。
理屈の上では、この四ヶ月間、完全に寝そべっていてもいい。
もちろん、それは理屈の上での話にすぎない。
父であるアルフレッド公爵は、私が公爵邸に戻って三日目に私を書斎へと呼び出した。
彼は書机の後ろに座り、私が入ってくるのを見ると軽く顎を上げ、向かいの椅子を指した。
「座れ」
私は座った。無駄口はない。彼が口を開くのを待つ。
父の慣れた話し方は私と似ていて、回り道をせず、言いたいことをはっきり言う。
これは彼のなかで私が最も敬服する美点だ。前世の上司には、話を途中まで言って、残りの半分はお前が自分で察しろというタイプがかなりの数いたからだ。
この手の話し方は、今では見るだけで遠回りしたくなる。
「休暇の件だ」
彼は言った。
「ひとつ、任務を任せたい」
「どんな任務ですか」
「花の国と紅龍国へ行き、引き続き持ち帰れるものを探してこい」
彼は一拍おいた。
「ただし今回は、物資を持ち帰るだけではない。お前の母も、あの世界へ連れていく」
私は顔を上げ、彼を真剣に見つめた。
彼の表情は、決定はすでに下された、今はお前に通知している、というあの静かなものだった。
「……母は、この件を知っているんですか」
私が訊いた。
「とうに知っている」
彼は言った。
「彼女が自分から言い出した」
これには、少し面食らった。
実は両親に前世の正体とあの世界の存在を告白してから、ずっと考えていたのだ。両親を連れて見に行くべきかどうか。
私の記憶のなかのあの世界のすべて。この世界より何年も進んだ建築、街路、技術。
父に見せることができれば、私のあの提案や構想を彼が理解するのに役立つに違いない。
母に見せることができれば、彼女が持ち帰れる情報は私の想像以上かもしれない。
だが私はずっと、この話を自分から切り出すべきかどうか迷っていた。なにしろ、それは別の次元の現実なのだから。
両親を連れていくには一定のリスクと不確定要素を負う必要があるし、このこと自体にもっと準備が必要かどうか、確信が持てなかった。
母には、どうやらそんな迷いは一切なかったらしい。
「彼女は言っていた」
父が一言付け加えた。口調には、彼が普段あまり見せないほんの少しの諦めが滲んでいた。
「自分の目で、あの世界を見てみたい、と」
母がこの言葉を言ったときの表情が想像できた。あの「余計なことはいい、ささと出発しろ」という顔だ。
「ならば、連れていきましょう」
私が言った。
父は頷き、それから手元の小さな木箱をこちらに押し出した。
私はうつむいて見て、蓋を開けた。
なかには収納用の指輪がひとつ。普通の収納の腕輪とは違い、指輪の様式だ。リングの部分は銀色。
中央には淡い緑の半透明の宝石が嵌められていて、なかには流れるように細かな光の文様が動いている。
「なかは黄金と宝石だ」
父が言った。
「あの世界で通用する交換の手段は知っているだろう。金属の価値も鉱石の価値も、こことは違う。だが総じて、持っていくだけの価値は十分にある」




