203. 焦土の先、そして二つの世界
翌朝、陽がまだ昇りきらぬうちに、五台の馬車は御者の手綱に促され、温泉町の城門をあとにした。
早朝の温泉街は、静まり返っていた。
薄い朝霧がまだ晴れず、街全体をぼんやりとした白い膜の中に包み込んでいる。
石畳の通りの両側では、露天商たちがようやく店を開き始め、野菜籠や工具箱が触れ合ってがちゃがちゃと乾いた音を立てていた。
ホテルの入り口の石段では、誰かが昨夜の落ち葉を掃いていて、箒の先が石畳を擦る、柔らかなざわざわという音が響いている。
五台の馬車は青石の敷石を踏み、車輪が低くごろごろと鳴る音を響かせながら、一路、城門へと向かった。
門衛はあくびを一つし、半ば閉じかけた眠たげな目で通行証を確認してから、手をぶらりと振って馬車隊を通した。
城門の外には、エリクソン公国の秋の平原が広がっていた。
すでに秋も深まりつつある季節だったが、道の両側の楓や白樺は美しく黄葉し、朝の冷たい風が吹くたびに、数枚の葉が馬車の屋根の上へと舞い落ちた。
遠くの山麓には、収穫期の終わりに差し掛かった大規模な麦畑が広がり、黄金色が朝の光のなかでことさら暖かく、どっしりと輝いている。
お頭は先頭の馬車に座り、窓の外に広がるこの景色を眺めながら、黙って唇をきつく結んだ。
ここへ来るときにも、一度同じ道を通ったはずだった。
だが、あのときは任務を全うしようとする緊張感で胸がいっぱいで、ひたすら西北へと馬を急がせており、道中の景色を楽しむ余裕など微塵もなかった。
そして今、同じ道を逆に戻ろうとしているのに、まるでまったく別の世界を歩いているように思えた。
彼らは分かっていたからだ。
エリクソン公国の境界は、ブレンの関門の先で終わる。
そしてその関門の向こう側には、もはや安全などどこにもない、混沌の世界が広がっている。
正午、五台の馬車はブレンの関門を抜けた。
関門の城塞は高く、分厚く、城壁にはつい先頃の戦闘の痕が生々しく残っていた。
何枚もの石レンガが何かに叩き割られ、その亀裂のなかには、まだ黒焦げた金属の破片が食い込んでいる。
城壁の外側には、超高温で灼かれたような焦げ痕が広がり、その形は奇妙で、普通の炎で残せるものとは思えなかった。
哨戒の兵士が城壁の上に立ち、鋭い視線を馬車隊の上へと走らせた。
その表情の張り詰めた警戒ぶりは、温泉町の城門であくびをしていたあの門衛とは、まるで別人だった。
馬車がエリクソン公国の領地を離れると、一面の黒焦げた平原が彼らの眼前に姿を現した。
彼らの記憶のなかでは、このあたり一帯は豊かな麦畑で、今頃は一面の黄金色の海になっているはずだった。
ここへ来るときに通りかかったあの麦畑の穂は、すでに首を垂れ始め、ずっしりと重く、あと二、三週間もすれば収穫できるはずだったのだ。
だが、それらはすべて、見る影もなく真っ黒に焦げ付いていた。
明らかに、意図的に火を放たれたのだ。
普通の失火ではない。普通の火災なら、これほど均一に燃え広がりはしない。
広大な農地が、同時に炭と化すはずもなく、大地そのものが乾き割れて黒ずむはずもない。
これは誰かが明確な悪意を持って放った火だった。端から中心まで燃え広がった痕跡すらほとんどない。
まるで一面の麦畑が、何かの瞬間にすべて同時に引火し、何の遮りもないまま一瞬で一掃されたかのようだった。
空気にはまだ焼け焦げた穀物の匂いが残り、風に乗って漂ってくる。
それは鼻を刺すような、それでいて胸を締め付けられるような、奇妙な甘さを帯びていた。
「どうやら、ここまで戦火が届いていたらしいな……」
お頭と呼ばれたその男の顔には、昨夜のあの、どこか気の抜けた表情など微塵も残っていなかった。
その代わりに、ひどく厳しい、険しい顔つきになっている。
彼の手は無意識に膝の上の外套をぎゅっと握り締め、指の節がかすかに白くなっていた。
考えるまでもなかった。麦畑を焼いた張本人は、間違いなく、あの軍隊だった。
彼らが持ち運べない食料を敵の手に渡すぐらいなら。
当然、あの黄金の海に火を放ち、跡形もなく焼き尽くす。たとえ麦をすべて灰に変えても、敵に渡してなるものか。
それが戦争の理屈であり、冷徹で、そして実用的な思考だった。
だが、理屈と感情は別のものだ。
焼け落ちた農地、そして道端にときおり見かける餓死者の姿は、お頭に思わず自らの目を閉じさせるに十分な地獄だった。
道端の屍体は、たいていが一具か二具、ぽつんと寂しげに、荒れ果てた草のなかに横たわっていた。
衣服は破れ、骨と皮ばかりに痩せ細っている。
その姿勢はどれも同じではなかった。
ある者は顔を天に向け、両腕を伸ばしたまま、倒れた瞬間にもまだ何かに足掻いていたかのようだった。
ある者は横向きに膝を折り曲げて、まるで眠っているようだった。
しかし、誰も彼らを葬ろうとはせず、ただそのまま道端に放置され、通りがかる者が直視する勇気すら持てない、悲惨な景色の一部になっていた。
これらはすべて、彼がエリクソン公国のなかでは決して目にすることのなかった光景だった。
ここは、二つの世界だった。一枚の壁の隔たり、一つの関門の隔たり。
彼はこのすべてを救いたかった。
だが彼は、自分がただの商会の末端の商人に過ぎないことを痛いほど分かっていた。
馬車の上の穀物を、もし規定の量を超えて失うようなことがあれば、待っているのは冷酷な処罰だ。
彼はどうしても自らの利害を優先せざるを得ず、たとえ物乞いたちがすがりついてきても、車上の穀物を一粒たりとも分け与えることはできなかった。
この穀物は、彼らにあげたくてもあげられず、あげる勇気もなかった。
今やハーランド帝国内では、あらゆる大商会が手を組み、国内の情勢不安を見るや、市場に出回るありとあらゆる穀物を買い漁り始めていた。
今では彼の馬車の上の穀物でさえ、一袋の麦を現地で買い直すことは、彼にとっても極めて難しくなっている。
食料の値段は、彼の記憶にあるどんな飢饉の時よりも跳ね上がり、ある地域では金貨を積んでも穀物を買えなかった。
なぜなら、穀物を売る者たちが、金貨などまったく欲しがらなかったからだ。
彼らが欲しがっているのは、金という金属ではなく「命」であり、この戦火のなかで生き延びるための、たった一つの機会だった。
お頭はどうしようもなく、ただ重く頭を振り、部下たちに被災者たちを刺激しないよう遠ざけさせ、そして彼らにエリクソン公国の方角を教えさせた。
それが、彼らにとって唯一、生き延びる手がかりだった。
物乞いたちも、それは心得ていた。
彼らはこれ以上、物を乞うても無駄だと分かると、すぐに馬車の周りを離れ、彼が指さした方角へと、互いに寄り添いながら歩き去っていった。
一人の父親が娘を連れていた。
父親はぱんぱんに膨れた風呂敷を背負い、片手で娘の手を引き、とてもゆっくりと歩いていた。
一人の老人は、腰を折り曲げ、木の枝を杖代わりに突きながら、二歩歩くたびに立ち止まった。
彼が最終的にどこまで行けるのかは、誰にも分からなかった。
まだ若そうな顔ぶれが何人かいて、その足取りは速く、瞬く間に遠くの土煙のなかへと姿を消した。
なにしろ、指し示されたエリクソン公国こそが、彼らが生き延びるための、ただ一つの希望だったのだから。
馬車はさらに前方へと進み続けた。
先ほどの悲惨な光景は減るどころか増えるばかりで、餓死者もますます増え、しかも屍体の年齢はますます幼くなり、ますます老いていった。
弱い立場の者たちほど、最も過酷な条件の下では、最も簡単に消え去ってしまう。
生き延びた者たちは、大きな鍋の周りに集まり、何かをぐつぐつと煮込んでいた。
鍋のなかの液体は白く濁り、判別のつかない塊が、沸騰のなかで浮き沈みを繰り返している。
焚き火の周りに座り込む数人は、ただ黙って鍋を見つめ、誰も口をきかなかった。
一番小さな子どもでさえ、ただ腹を押さえて座ったきりで、その目はガラス玉のように虚ろだった。
しかし、お頭が岩陰の奥に投げ捨てられた骨に気づいたとき、彼は胸が引き裂かれるような嫌悪感とともに、彼らが煮込んでいたものが何かをはっきりと理解した。
あれは人骨だった。
動物のものではない。
人間の骨の形は、一度でも見たことのある者なら、決して見間違えたりはしない。
彼は即座に御者に速度を上げさせ、車隊をあの焚き火のそばから一気に通過させた。
馬車のなかは、水を打ったように静まり返った。
普段一番口数の多いあの男でさえ、今は青ざめた顔で、きつく唇を結んでいた。
たった一ヶ月で、人間を、ここまで獣に変えてしまうものなのか。
実のところ、彼が知らなかったのは、戦争が勃発したその当初から、ハーランド帝国皇帝とハインツ公爵は、領地内に臨時増税を命じていたことだった。
何しろ魔人は、普通の兵士に比べて、はるかに多くの食料を消費する。
聖水によって改造された魔人兵士たちは、その体内に歪んだ魔力を抱え込み、その歪みを維持する代償の一つが、彼らが食料に対して持つ底知れぬ貪欲さだった。
普通の兵士が一日に消費する食料を、魔人はわずか数時間で使い果たしてしまう。
しかも彼らは、食料の質に対する要求はむしろ低く、人間よりも家畜に近かった。
戦争は、より多くの悪魔の力に染まった者を必要とし、当然ながら、より多くの食料をも必要とした。
秋の税の総額は、もともと収穫の三割に過ぎなかったのに、相次ぐ臨時増税のせいで、秋の課税額はたちまち、その年の収穫量の八割に迫った。
元の二割の収穫さえ手元に残れば、耐え忍んで冬を越せたかもしれない。
だが、地元の血を啜る貴族たちが、自分たちの肥える機会を、自ら手放すはずがなかった。
そこで、税率は八割から、さらに滑稽な「十一割」へとはね上がった。
これはつまり、どれほど汗水垂らして働こうとも、この馬鹿げた税を払える者など最初から一人もいないことを意味していた。
ほとんどすべての農民が、この狂った税率の前に真っ直ぐに押し潰され、彼らは自分の田畑を失い、故郷を離れ、一縷の命の綱を求めて彷徨い出した。
あの貴族たちは今頃、安全な屋敷のなかで、もうすぐ小山に届きそうな土地の権利書の束を見て、笑い転げていることだろう。自分たちは大儲けした、と。
だが彼らは、一度も考えなかったのだ。その権利書に書かれているのは良田であり、そして良田は、それを耕す人間がいて初めて価値を持つということを。
あの権利書を握り締める貴族たちが掴んでいるのは、富などではない。
ただの紙屑の束だった。
農民のいない土地など、どれほど肥沃であろうと荒地に過ぎず、そして荒地は、乱世にあっては、冬の薪にすらならない。
だが、そのことに彼らが気づくのは、次の年が訪れてからのことだ。
己の果てなき貪欲こそが、自分自身を滅ぼすのだと。




