199. キャベツと人参、そして小さな憧れ
私とユーナは煮込みスープとパンを手に、畦のそばまで来ると、まだきれいな干し草の山を見つけて腰を下ろした。
秋の陽射しはたしかに容赦なかったが、畦のそばには丈の低い木が数本、ぱらぱらと手のひらほどの陰を落としていて、ないよりはましだった。
私は手にした具だくさんのスープに目を落とした。
素朴な陶器の器に盛られ、その表面には焼きムラによる不揃いな釉薬の跡まで残っていて、どことなく前世の田舎の薪窯で煮炊きしたような風合いがあった。
スープはあたたかな琥珀色を呈し、表面には油の粒がほんの少し浮き、立ち昇る湯気のあいだから、人参とキャベツのほのかな甘い香りが漂ってくる。
器のなかは一目瞭然だった。
小さく刻まれた人参、大きく手で裂いたキャベツの葉、そしてほんのわずかの挽き肉が、スープのなかに散らばっている。
見た目は荒削りだが、その飾り気のない香りに、私は思わず唾を呑み込んだ。
この味は……前世で祖母が大きな鉄鍋で作ってくれたスープに、本当によく似ている。
私は小さなパンをひとつ割り、スープに浸して口に運んだ。
パンの外はさくさく、中はふんわり。
スープをたっぷり吸い込んで、濃い野菜の旨味が広がる。
思いのほか、美味しかった。
「うん、なかなかいいね」
私はもごもごと口ご喝と言った。
「うんうん!」
ユーナも隣で満足げに頬をぱんぱんに膨らませていた。
まるで食料をため込むハムスターのようだった。
そのとき、リリィと呼ばれたあの茶色い髪の小さな女の子が、スープの器と小さなパンを片手に、私のそばへとやってきて、遠慮もなくどっかりと私の隣に座り込んだ。
彼女が座るとき、短い二本の足が畦の縁にぶら下がり、地面に届かないから、前後にぷらぷらと揺れ続けた。
まるで川辺に座って釣りをする小さな蛙のようだった。
私はこの小さな存在に気づいて、彼女のほうへと顔を向けた。
見れば、その目は私への好奇心でいっぱいだった。
あの純粋な好奇心。
まるで子猫が毛糸玉を見つけたときのように、ただ近づきたくて、知りたくてたまらない、そんな目だ。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お名前なんていうの?」
彼女はとても可愛らしい表情で、笑いながらそう尋ねた。
一本だけ抜けた前歯のせいで、その笑顔はますます無邪気で、愛嬌たっぷりに見えた。
「ケイシー・コエーリョっていうの」
「ユーナ・フランキーよ」
彼女は私たちの名前を聞くと、何度もそれを繰り返し呟いた。
「ケイシーお姉ちゃん……ユーナお姉ちゃん……」。
その真剣な様子は、まるで私たちの名前を一文字ずつ、心のなかに刻み込もうとしているかのようだった。
「じゃあ、あなたのお名前は?」
ユーナが首を傾げて尋ねた。その声は、自然と幾分明るく、柔らかくなっていた。
「リリィ・ローズ! 今年でなんと、八歳だよ!」
リリィは誇らしげにそう言って、小さな胸を張った。
その「私はもう立派なお姉さんなんだから」と言わんばかりの表情が、どうにも微笑ましくて仕方がなかった。
八歳か……前世の八歳なら、私はまだ小学校二年生で、九九の暗記に頭を悩ませていた頃だ。
それなのに、目の前のこの小さな子は、もう器を手に田んぼのあいだを走り回り、両親を手伝って来客に食事を届けている。
「へえ、もう立派なお姉さんんだね。将来の夢はあるの、リリィ?」
ユーナはとても優しい声で尋ねた。
ユーナは小さい頃から家で一番上の子だった。
実の弟妹はいなかったが、従妹や従弟には事欠かなかった。
だから聞くところによれば、彼女は小さい頃から、お祝い事や何かの集まりのたびに、弟や妹の面倒を見る役を任されてきたらしい。
決して楽ではなかったが、喜んで小さな子たちと遊んでいたという。
それはたぶん、長子としての本能なのだろう。
「もちろん、クローディア様みたいな、すっごくすごい大人になることだよ!」
リリィは頭を高く上げ、自信満々にそう言った。
そのとき私は、ちょうどスープを一口含んだところだった。
その言葉を聞いて、思わず慌てて器のなかに吐き戻した。
なぜなら、このまま飲み込んでいたら、たぶん次の瞬間には盛大に噴き出していたという予感が、はっきりとあったからだ。
クローディア様って!? 私のこと!?
この八歳の小娘が、よりにもよって私の目の前で、私のようになりたいと言ったのか!?
「へえ? クローディアみたいにすごくなるのは、そんなに簡単なことじゃないんだよ」
ユーナはまるで面白い玩具を見つけたかのように、口元にいたずらっぽい弧を描き、そのまま深く掘り下げ始めた。
「どうして彼女みたいになりたいと思ったの?」
「それはもちろん、クローディア様はすごいからだよ!」
そう言いながら、彼女はスプーンで器のなかのスープをかき集め、なかのキャベツと人参をすくい上げて、まるで宝物を見せびらかすみたいに私の目の前に差し出した。
「これ、みんなクローディア様が私たちに持ってきてくれたお野菜なんだよ!」
彼女はとても誇らしげに言った。その目は、きらきらと輝いている。
「クローディア様ってすごいでしょ? 私たちが毎日こんなに美味しいお野菜を食べられるようになったのも、みんなクローディア様のおかげなんだよ!」
私は彼女が私の目の前に差し出した、あの数片の人参とキャベツの葉を見つめながら、一瞬、どんな顔をすればいいのか分からなくなった。
たしかにそれらの野菜の品種は、私が外国から導入し、花の国から持ち帰り、エリクソン領での栽培普及を決定したものだった。
でも私は……ただ普及計画を一本書き、いくつかの書類に署名し、予算を割り当て、精度を高めて花の国から収納の腕輪のなかへと詰め込んだだけだった。
本当に種を土に播き、水をやり、肥料を施し、草を取り、収穫したのは、エノのような農民たちなのだ。
それなのに、この小さな娘の認識のなかでは、「クローディア様が野菜を持ってきてくれた」という一事が、それだけで彼女にとっては、十分に憧れるに値することだった。
私はそれを聞いて、思わず笑みが零れ、手で彼女の頭を撫でてやった。
茶色の髪は柔らかく、まるで雛の綿毛のようだった。
「クローディア様が今のあなたの褒め言葉を聞いたら、きっと恥ずかしがっちゃうよ」
私はそっと言った。
「どうして恥ずかしがるの?」
彼女は不思議そうに私を見つめ、小首を傾げた。
まるで首をかしげる小鳥のようだった。
だが、このときの私はすでに魔力で姿を偽っていたから、彼女が私の正体に気づくはずはなかった。
「だって、あの人はそんなにすごいことをいっぱいしてるのに、褒められたら、むしろ誇らしい気持ちになるんじゃないの?」
彼女は元気いっぱいにまくし立てた。
「だって、私だっていいことをしてお父さんに褒められたら、すごく誇らしいし、すごく嬉しくなるんだよ!」
「あはは、リリィは本当にすごいね。こんなに小さいのに、もう両親を手伝ってるんだ」
私は彼女の小さな頭を撫で続けた。彼女は避けようともせず、それどころか、頭を私の掌のなかへと摺り寄せてきた。まるで甘える子猫のようだった。
「でもね、クローディア様は、そのことで誇らしい気持ちにはならないと思うよ」
私は続けた。
「なんで?」
リリィはやはり納得がいかないようで、小さな眉をひそめ、口を尖らせた。
「だって考えてみて。今、あなたの器のなかに入ってるキャベツと人参は、みんな誰が作ったの?」
「お父さん!」
彼女は即答し、その顔には思わず誇らしげな表情までもが浮かんだ。
小さな胸をぐいっと張り、「うちのお父さんはすごいでしょ」と言わんばかりだった。
その誇らしげな姿に、私の胸の奥がほんのり温かくなった。
そうだ、自分の父親が作った野菜を誇りに思う。
その素朴な感情が、どれだけ尊いものか。
「うん。その器のなかにあるのは、みんなあなたのお父さんが作ったお野菜だよね。みんなが楽しそうに食べてるのを見て、あなたもお父さんの娘として、一緒にそのお野菜を作ったんだから、みんながあなたの作った野菜を認めてくれてるのを見て、あなたもすごく誇らしい気持ちになったんじゃない?」
彼女は私の言葉を聞くと、当然のように、興奮気味に頷いた。
力が入りすぎて、頭のてっぺんの柔らかい髪までが、ふるふると揺れた。
「そういう誇らしい気持ちは、みんな、自分の頑張りが誰かに認められたことから生まれてるんじゃないかな」
私は一拍置いてから、言葉を続けた。
「でも、このお野菜は、クローディア様があなたたちのために作ったものじゃないんだよ。これは、あなたたちが自分たちの努力で作り出したものなんだ。あなたたちが自分の努力で、自分たちのお腹をいっぱいにしたんだよ」
リリィはここまで聞いて、その茶色の大きな瞳をぱちぱちと瞬かせた。
まるで何かを、少しだけ理解したかのように。
「おお! そういうことだったんだね、なるほどなるほど! ——ぜんっぜん分かんないけど!」
リリィはペラペラとそうまくし立て、小さな顔をくしゃりと歪めたが、結局のところ、やっぱり何も分からなかったのだった。
私とユーナはその様子を見て、仕方なさそうに笑い、また食事を続けた。
……まあ、八歳の子どもにこんな理屈を説くのは、たしかにまだ早すぎる。
でも大丈夫だ。「自分の努力が誰かに認められたことこそが、誇るに値するんだ」という一点だけが、彼女のなかに残っていれば。
彼女が大人になったら、自然とゆっくり理解していくだろう。
いつか、将来のどこかの日に、突然この会話を思い出して、はっと何かに気づくかもしれない。




