196. 朝食のテーブル、そして二着目の白シャツ
目を細めてしばらく見つめるうちに、意識は混沌のなかから次第に明瞭さを取り戻していった。
秋休みのあいだ、家で早起きして働く日々が続いたおかげで、私はかなり健康的な体内時計を身につけていた。
かつての私は昼まで布団にしがみついているようなぐうたら人間だったのに、今では、この異世界のたいていの貴族たちがまだ夢のなかにいるような時刻に、自然と目が覚めるようになっていた。
もし前世の自分がこのことを知っていたら、きっと呆れ果てて苦笑いするだろう。
いつもなら、目が覚めて最初にすることといえば、蛸のように私の身体に絡みついているユーナを、べりべりと引き剥がすことだ。
彼女の寝相の悪さはまさに一級品で、寝入るときにどんなに行ぎよく真っ直ぐに横たわっていようとも、次の朝には必ず、あらゆる想像を絶する姿勢で私の身体のうえにぶら下がっている。
まるで、人にべったりとくっつく猫のように。
だが 、今日は違った。
彼女は昨日、私に門の外へ放り出され、正座させられたのだった。
寝返りを打ち、腕が無意識に身体の脇を探った。
指先に触れたのは、敷布の平らな感触だけだった。
がらんとしていて、あの温かな小さな身体はどこにもなかった。
うん、そうだ。
私が自分の手で、彼女を放り出したんだ。
昨夜の出来事が頭のなかで巻き戻され、耳の付け根が思わず熱くなった。
あの馬鹿……まさか本当にこっそり入り込んでくるなんて……しかも、そのうえ……ちっ。
私は勢いよく頭を振り、その危険な考えを頭のなかから追い出し、寝返りを打って起き上がった。
ユーナがいないとなれば、自分で服を着るしかなかった。
正直なところ、自分で服を着るくらいのことは、今の私にはさほどの難題ではなくなっていた。
何しろこの身体で十三年も生きてきたのだ。
だが、自分で服を着るたびに、いつも決まって思い出すのは、そばに立ったユーナが襟を直し、腰の帯を結んでくれていた、あの光景だった。
彼女はいつも首を少し傾げ、口元はかすかに上がり、ピンクの長い髪が肩口に垂れ、あの琥珀色の目には、隠しきれないほどの喜びが宿っていた。
「…………」
私は勢いよく自分の両頬をぱんぱんと叩いた。
何を考えてるんだ! さっさと服を着ろ!
今日は農業区へ社会実習に行くのだから、服装はなるべく簡素なものでなければならない。
私は簡素な白いシャツと、黒い木綿の長ズボンを、収納の腕輪のなかから取り出し、ぱさりと広げてベッドのうえに置いた。
これは花の国で、世界展開している手頃なファストファッションブランドの店から買い込んだ一着だった。
この異世界では、この手際のよい裁断と肌触りのよい生地が、人々の目を十分に惹きつけた。
もちろん、チャーリーにもこの服を一着渡して、作らせてもいた。
彼女の作った複製品は本家よりもさらに細かく、ボタンの縫い目まできちんと揃っていた。
今では、あの軽快な現代風の衣服は、すでにエリクソン領のなかで広く流行し、ますます多くの人に追い求められるようになっていた。
聞くところによれば、アムニット市の若い娘たちはシャツのボタンの留め方まで真似し始め、あの「気取りすぎず、それでいて清潔感のある」スタイルを「トレンド」と呼んでいるらしい。
……お願いだから、ただの普通の白シャツなんだけど。
着替えを終えると、私は部屋の扉を押して、中庭へと出た。
朝の光の中の庭は、ことさらに静かだった。
山茶花の花びらにはまだ露の粒が掛かり、陽の光を浴びて細かな煌めきを散らしている。
そして——昨夜、私が正座させたあのピンク色の頭は、門柱にぐっくりと凭れかかり、かすかな寝息を立てていた。
やっぱり、眠ってしまったのだ。
一晩中、正座し続けたユーナは、今、門柱のそばで小さく丸まっていた。
首にはまだ「私は痴女」と書かれたあの木の札が掛かっている。
朝の風が彼女の額前の乱れ髪をそよがせ、まったく無防備な寝顔をさらしていた。
口元には、どことなく、うっすらと笑みのようなものまで浮かんでいる。
「……この馬鹿」
私はしゃがみ込み、彼女の顔を見つめた。
眠っているあいだは、ちゃんと大人しいのに。
昨夜みたいに——私の視線は、思わずあの木の札へと引き寄せられ、すぐに慌てて逸らした。
ごほん。
手を伸ばして、木の札を彼女の首から外し、腕輪のなかへと収めた。
それから、そっと彼女の頬を指でつついてみた。
「ん……クローディア……やめてよ……」
彼女ははっきりしない声でそう呟いたが、目を覚まさなかった。
私は溜息を吐き、いっそ魔力で彼女を全身ごと地面から抱え上げ、まるで小麦粉の袋でも担ぐみたいに、部屋のなかへと引き摺り込んだ。
彼女をベッドに寝かせてから、私は腕輪のなかから、自分が着ているのと同じ型と色の衣服をもう一着取り出した。
白いシャツ、黒い木綿の長ズボン。
それを枕元に置き、それから指で彼女の額をぴんと弾いた。
「起きて、ユーナ」
「ん……あと五分……」
「それ以上寝てると、今日の朝ごはん、なくなっちゃうよ」
この一言の破壊力は、どんな魔法よりも強かった。
ユーナの目が、ばっと勢いよく見開かれた。
琥珀色の瞳にはまだいくぶんの寝ぼけが残っていたが、身体のほうはもう、条件反射でがばりと起き上がっていた。
「起きた起きた!」
彼女は慌てて枕元の服を掴み取り、それからようやく自分が中庭ではなく寝室にいることに気づいて、はたと固まった。
「い、いつ、私を運び込んだの……?」
「さっき」
私は彼女に背を向けて、入り口へと歩いた。
「三分であなたも着替えて出てきて。私は先にリビングで待ってるから」
「は、はい!」
背後から、ばたばたとした着替えの衣擦れの音が聞こえてくる。私の口元は思わずほんの少しだけ緩んだが、すぐに表情を引き締めて、扉を押し開けた。
食卓のうえには、とうに今日の私たちの部屋の朝食が並べられていた。
これはユーアホテル自慢の、部屋まで届ける給仕サービスだった。
我がホテルの看板とも呼べるサービスの一つで、これだけでもう、数多くの上客の目を引きつけていた。
何しろ、自分の泊まっている部屋で、そのままレストランから届けられた極上の料理を味わえるのだ。
これほど満足のいくことはない。
ましてや、体を動かすのも億劫な貴族の旦那方にとっては、どんな魔法よりもありがたい極楽に違いなかった。
それだけではない。
保温用の魔導カバーの保護のおかげで、料理の温度はできたてとほとんど変わらず、客をさらに歓ばせていた。
透明なあの魔導カバーが皿のうえに覆いかぶさり、空気の対流を断ち切って、熱を中にしっかりと閉じ込めている。
原理は前世の保温容器と似ているが、その効果は十倍以上だ。
そしてまさにこの魔導器の知的所有権があるからこそ、他社が給仕サービスを真似しようにも、私たちと競争できるだけの力は、どこにも持てなかった。
何しろこの魔導器は、私のユーアホテルのほかには、ユーナのローナホテルだけに使用権がある。
ユーナのホテルなら、まあ、身内のものだ。
共有して当然だった。
私は保温用の魔導カバーを外した。
パンケーキの甘い香りが、ふわりと立ち昇った。
パンケーキはきつね色にこんがりと焼かれ、表面には琥珀色の蜂蜜が一層かけられ、横には新鮮な赤い木の実がいくつかと、クリームの小皿が添えられていた。
湯気の立つティーカップのなかには、東方から輸入された茶葉が淹れられていた。
長距離の輸送を経て、その品質はもう新鮮な頃には及ばなかったが、それでもこの世界では得がたい贅沢品だった。
私はナイフとフォークを手に取り、パンケーキをひとかけら切り取って口に運んだ。
外はさくさく、中はふんわりとした歯触りに蜂蜜の甘さが絡み合い、少しだけ気分がましになった。
そのとき、ユーナも部屋から出てきた。
彼女はもう、私とまったく同じ白シャツと黒の長ズボンに着替え終えていた。
ピンクの長い髪は手際よく一つに束ねられていた。
どうやら、今日は農作業に行くということを、ちゃんと覚えていたらしい。
ただ、歩くときにほんの少しだけ不自然な仕草があった。
おそらく、一晩中正座していたせいだろう。
彼女は私の正面に座り、ナイフとフォークを手に取ったが、その動作は明らかに慎重で、ちらちらと私の顔色を窺うような視線が何度も飛んできた。
まるで、私がまだ怒っていないかどうかを、慎重に探っているかのようだった。
私は気づかないふりをして、自分のパンケーキを食べ続けた。
「クローディア……あの……」
彼女はとうとう我慢できずに口を開いた。
その声は、蚊の羽音のようにか細かった。
「ん?」
「昨夜のこと……私……ごめんなさい……」
私はナイフとフォークを置き、深く俯いた彼女の頭を見つめた。
ピンクのポニーテールが肩のうえに掛かり、白い襟足がほんの少し覗いている。
そのうえには、昨夜正座したときに襟に押されてついた、淡い赤い痕がまだ残っていた。
「……悪かったと思ってるの?」
「うんうん!」
彼女は勢いよく頷いた。
「次からは、もうしないって約束できる?」
「しません!」
私は彼女のあの確信に満ちた様子を見つめながら、心の中でそっと呆れ交じりのため息をついた。
この誓約の消費期限は、おそらく前世の私が立てた「明日こそ絶対に早起きする」という誓約と、だいたい同じくらいだろう。
「はいはい」
私はフォークでパンケーキをひとかけらに切り、彼女の口元へと差し出した。
「まずは食べなさい。今日は一日、農作業なんだから。ちゃんとお腹に入れておかないと、もたないよ」
ユーナの目が、ぱっと輝いた。
まるで干し魚を見つけた猫のようだった。
彼女はがぶりとパンケーキに食いつき、頬をぱんぱんに膨らませたまま、もごもごと不明瞭な声で言った。
「クローディア、大好き。」
「おとなしく食べる」
「もぐもぐ!」




