171. 五十年の真実、そして一石二鳥
「それに、ハーランド帝国は異種族を皆殺しにすると、ずっと宣言してきたはずよね? 半精霊ですら強制収容所送りだったって記憶してるけど」
私はそう言いながら、体内で新たな魔法障壁を構築し始めていた。
「それがどうして今さら、私を見逃そうなんて言うの?」
ハインツは私の言葉を聞いて、表情がほんの少しだけ変わった。
それから彼は冷たく鼻で笑った。
その声はとても軽く、まるで鼻腔から押し出されたようなもので、どこか見下した響きと、どこか……疲れのようなものが混じっていた。
「はは、本当なら話すべきことじゃないんだがね」
彼は風に乱れた額の金髪を手で梳き上げた。
その仕草は気ままで、どこか投げやりだった。
「だが、君はもうすぐ死ぬ。今ここで話したところで、問題はあるまい」
「いわゆる反異種族の民族浄化というのは、我が帝国が内部問題を解決するための政治宣伝にすぎない」
その瞬間、風がぴたりと止んだ。
いや、風が止んだのではない。
私の知覚が彼の言葉にすべて奪われ、風の流れさえ意識の外へ追いやられたのだ。
私は彼の目を見つめ、そのなかに嘘の痕跡がないか探った。
だが、そこにあったのは、ただひどく落ち着いた静けさだけだった。
自国の国民を政治の道具として扱う男が、こんな話を口にするときの表情が、平然としている。
「内部問題?」私は問い返した。
彼は頷いた。
「ハーランド・インゲリア王国戦争を知っているか?」
私がその言葉を聞いたとき、まず一瞬、頭が止まった。
ハーランド・インゲリア王国戦争。
一族の蔵書室で、かつて私は大陸戦争史の編年書を手に取ったことがある。
そのなかで、この半世紀に及んだ戦争について、ごく簡略に触れられていた。
だが当時の私は、魔法技術に関する記述を探すために流し読みしていただけで、政治史の部分にはさほど注意を払っていなかった。
しかし今、そのぼんやりとした記憶の断片が、ハインツの言葉のなかで徐々に形をなしていく。
ハーランド・インゲリア王国戦争。
ハーランド帝国がインゲリア王国の大陸領土に対して仕掛けた、大規模な侵略戦争だ。
戦争はまるまる五十年続いた。
前後して二代の皇帝が代替わりし、最終的にインゲリア王国の崩壊というかたちで幕を閉じた。
彼らは完全に大陸から追い出され、海を隔てた群島へと退き、王国からインゲリア諸島国へと名を改めた。
五十年。
私の前世では、五十年あれば一国が廃墟から立ち直れる時間だ。
だが、魔法文明の発展が遅いこの世界において、五十年とはいったい何を意味するのか。
まるまる一世代の人間が、生まれてから老いるまで、戦争の影の下で生きるということだ。
無数の農地が焼かれ、無数の村が屠られ、無数の男たちが二度と帰らなかったということだ。
そしてハーランド帝国自身も、無事では済まなかった。
ハインツは続けた。
その口調は、歴史の教授が教室であまり複雑ではない数学の問題を解説するかのようだった。
「長年の戦費で、帝国の国庫は底を突いた」
軍費を維持するために、先々代のハーランド皇帝——つまりエイドリアンとハインツの父、ヴァレンシオ・フォン・ハーランドは——帝国内の商人たちに、帝国領地の使用権の、ほぼ半分を担保として差し出した。
帝国領地の使用権の半分。
私はこの数字を、必死に咀嚼しようとした。
それはつまり、帝国で最も豊かな港湾、最も肥沃な農地、最も重要な鉱山の、半分の実質的な収益権が、皇室の手にはなく、商人たちの帳簿の上にあるということだ。
これはとてつもない博打だった。
ヴァレンシオが賭けたのは、戦争の勝利が十分な領土と賠償金をもたらし、それによって借金を完済できるという未来だった。
だが五十年が過ぎてみれば、勝ったことだけは確かだった。
代償は、国庫の空洞化と民の疲弊だった。
インゲリアはたしかに追い出した。
だが残されたのは、荒廃した北部領土と、天文学的な額の請求書だけだった。
そして今、融資の返済期限が迫っている。
帝国の金庫には、銅貨一枚もない。
ハインツがここまで話すと、その口元はかすかに上がりさえした。
まるで自分とは関係ない冗談を語っているかのように。
エイドリアン・フォン・ハーランド——今の皇帝であり、ハインツの実兄——は、ほぼどうにもならない袋小路に立たされていた。
商人たちを皆殺しにする? ハインツはあっさりとその選択肢を否定した。
それは毒を飲んで喉の渇きを癒すようなものだ。
帝国の貿易の生命線は彼らが握っている。
彼らを根絶やしにすれば、今後いったい誰が帝国と取引をするのか。
商人がいなければ税収もない。
税収がなければ、帝国は基本的な運営すら維持できない。
債権者を殺したところで問題は消えず、むしろさらなる厄介ごとを招くだけだ。
この理屈は、前世のただの会社員ですら分かっていた。
ましてや一国の皇帝なら、なおさらだ。
だからこそ、彼らには別の金が必要だった。
莫大な金だ。
帝国の財政の穴を埋め尽くせるだけの。
そこでエイドリアンは、半精霊たちに目をつけた。
より正確に言えば、かつてインゲリア王国の国民だった半精霊の地主たちに。
ハーランド・インゲリア戦争のさなか、これらの半精霊たちは、当時からすれば極めて抜け目のない選択をした。
彼らは自らの祖国を裏切ったのだ。
ハーランド帝国の軍隊がインゲリア王国の領土に足を踏み入れたとき、半精霊の領主たちは抵抗どころか、積極的に侵略者へとオリーブの枝を差し出した。
彼らはハーランド軍を先導し、食料と水と宿を提供した。
戦争が最も膠着した局面では、彼らのおかげでハーランド軍は異国の地で補給線を維持できた。
その見返りとして、当時のハーランド皇帝は、彼らにその土地における合法的な所有権を認めた。
インゲリア王国が追い出されたあとも、半精霊たちはそのまま自らの荘園に座り、田畑と商店を経営し、ハーランド帝国内部の特殊で、裕福で、妬まれる存在となった。
彼らは戦争の両側から利益を得た。
インゲリア王国に納税するのは地主の本分だったが、戦時中はその税を免れた——祖国が自らのことで手一杯だったからだ。
ハーランド帝国に税金を払うのも問題ではなかった——特赦と財産権保護を得ていたからだ。
それと同時に、戦争による軍需が彼らに莫大な富をもたらした。
兵士には食料が必要で、士官には酒が必要で、後方には荷馬車が必要だった。
これらの物資を供給した業者の大半は、半精霊の領主たちだった。
五十年の戦争経済が、彼らの懐を肥え太らせた。
そして戦後、彼らは北部領土で最大の地主になった。
インゲリア人が残した肥沃な田畑、戦略的に重要な都市、そのほとんどが彼らの手に落ちていた。
エイドリアンは、目を血走らせた。
ハインツがこの言葉を口にしたとき、初めてそこに、なにか本当の感情らしきものが滲んだ。
怒りではなかった。嫉妬でもなかった。
それはほとんど、どうしようもないという諦めにも似た了解だった。
まるで「兄貴はそういう人間なんだ」とでも言うかのように。
かくして、民族浄化が始まった。
ただし、それは「我々が財産を没収したいから」という名目ではない。
エイドリアンはまず、帝国内部で計画的に世論を操作した。
「半精霊が帝国の土地を奪い取った」「戦時中に祖国を売った」「今も帝国内部で諜報活動をしている」——といった噂を組織的に流布させた。
続いて、教会を支配下に置くことで、それらの言説に宗教的な正統性という衣を着せた。
オリビア教は本来、種族を区別しない宗教だった。
この世界の教義においては、万物に霊があり、衆生は平等である。
だがエイドリアンは、現地の教会司教を拉致し、自派の人間を据えるという手段で、オリビア教をハーランド派へと塗り替えた——人間の宗教に。
ひとたび宗教が人種差別に神聖性を与えれば、あとは簡単だ。
半精霊は帝国の合法的な市民ではなく、人類の神聖性を冒涜した異端となる。
彼らを強制収容所に送るのは暴行ではなく浄化である。
彼らの財産を没収するのは略奪ではなく、不浄なるものを人類のもとへ返す行為である。
その過程は、よく整備された機械のように精緻だった。
世論操作 → 宗教による正当化 → 立法化 → 執行。
四段階だ。
皇帝が自らの手で行った工程は一つもない。
だが、工程の一つひとつの裏には、皇帝の思惑が潜んでいた。
北部にいた半精霊の小領主、小地主、さらにはごく普通の半精霊市民までもが、次々と財産を没収された。
彼らの土地、荘園、商店、金庫——そのすべてが帝国に接収された。
二代にわたって積み上げられた戦争の富が、一夜にして帝国の国庫へと流れ込んだ。
さらに都合のいいことに、この一連の操作は同時に、もう一つの政治的目標も達成していた。
帝国北部の分離運動だ。
インゲリア王国が追い出されたあとも、北部領土には復国主義の暗流が常に存在していた。
インゲリアの遺民とその子孫たちは、大陸への帰還という思いを決して諦めていなかった。
半精霊の領主たちはインゲリアとの歴史的な縁があったため、長らくこれら遺民の庇護者として機能していた。
半精霊領主たちが一掃されたことで、遺民たちは最後の保護者を失った。
資金と庇護者を失った分離運動は急速に萎み、今や北の小物どもは——ハインツの原話——すでに食い尽くされた。
一石二鳥。
私はその場に立ち尽くし、この話を最後まで聞いたあと、長いあいだ沈黙していた。




