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168. 鉄の騎兵、そして門が開く

城門の前。私と母は分厚い鉄製の城門の内側に立ち、出撃前の最終確認を行っていた。


朝日が城壁の隙間から斜めに差し込み、足元の石畳に何筋もの光を落としている。


空気には硝煙の匂いが漂っていた。


そして、城壁の外にいるあの怪物たちから放たれる、どうにも名状しがたい腐敗臭のようなものが、かすかに混じっている。


ユーナが私の傍らに立ち、甲冑を整えてくれていた。


甲冑は標準装備——軽量の板金鎧で、胸甲、篭手、脛当て、いずれも魔力の循環を妨げない重さに抑えられている。


ユーナの手は慣れたものだった。


留め金、革帯、固定金具を一つずつ順に確かめ、一つも見落とさなかった。


私はすでに、グリンマンランク帝国の剣を手環から取り出していた。


この剣は……なんというか。


取り出すたびに、どうにも言葉にできない感覚が胸に湧く。


刀身は細身だが、それでも標準的な騎兵剣よりいくぶん短い。


刃の色は鈍い暗銀色で、まるで深海の底にしか存在しない金属のように見える。


そして今、刀身の周りに渦巻く黒い気配は、いつもより濃かった。


その漂う気配は煙でも霧でもなかった。


ゆっくりと流動していて、まるで生きているかのように——意思を感じ取っているかのように、動いている。


戦場を察したのかもしれない。


あるいは、この剣にはもともと何らかの意志が宿っていて、こういう時にこそ、より昂ぶるのかもしれない。


「クローディア、ほんとに行くの?」


ユーナは最後の篭手の留め具を締め終え、ため息まじりに話した。


彼女が顔を上げて私を見る。


その目には隠しきれない心配が滲んでいたが、それでもまず口から出たのは、この言葉だった——まるで目の前で起きていることが、まだ信じられないかのように。


彼女が砲台へ冷却補助に行っているほんのわずかな間に、クローディアは甲冑を着込み、城を出ようとしていたのだ。


「うん」


私は頷いてから、手を伸ばしてユーナの小さな頬をつまんだ。


彼女の肌は柔らかく、両の頬はほんのり冷たかった——おそらく早朝の城壁の上は風が強かったせいだ。


「そんな不細工な苦い顔しないで。ほら、笑って」


私はそう言いながら、二本の指で彼女の口角をぐいっと持ち上げ、無理やり笑顔を作らせた。


「もう、ふざけないで」


彼女は私の手をぽんと払いのけた。


だが目元だけが少し和らぎ、先ほどの切ない表情は跡形もなく消えていた。


「戦闘準備、ちゃんとね。早く行って、早く帰ってくるのよ」


言い終えると、彼女は一歩下がり、城門の脇に立って両腕を胸の前で組んだ。


真面目に監督しているという表情に切り替わっている。


でも、私は気づいていた。


彼女の指が、袖口のところで、そっと握り締められたのを。


「もう、娘ったら。母さんの前で、堂々といちゃついちゃって」


母の声が横からさらりと流れてきた。


まるで「今日はいい天気ね」とでも言うような軽さだった。


私は顔全体が熱くなった。


「母さんこそ、からかわないでよ」


必死に平静を保とうとしたが、声にはもう、抑えきれない羞恥が透けていた。


母はまったく……心のなかで、思わず天を仰いだ。


「はいはい、もうからかわないわ」


ヘレナは笑った。


「さあ、その剣の力をちゃんと見せて。話に聞いただけだったから」


彼女の視線が、私の手にあるグリンマンランク帝国の剣に落ちる。


渦巻く黒い気配が、彼女の瞳の中に淡い光を映していた。


私は呼吸を整え、頷き、体内の魔力を動かし始めた。


魔力は丹田から立ち昇り、腕を伝って下り、掌へと流れ込み、最後に柄へと注がれ、刀身全体へと広がっていく。


それは妙な感覚だった。


通常の魔力の奔流とはまるで異なる——遥か昔の何かが、眠りから覚めつつあるような。


剣が震えた。


震動ではない。共鳴だ。


誰かが遠くで弦をひとつ弾き、この剣がその弦のもう一方の端であるかのような震え方だった。


瞬間、刀身の周囲の黒い気配が激しくうねり、幾筋にも裂けて四方へと散っていった。


それらの黒気は石畳の上に降り立ち、一つひとつが急速に凝縮し、収縮し、かたちを成していく。


一つの輪郭が浮かび上がった。


二つめ。


三つめ。


二十。


彼らは、騎兵だった。


全身を暗黒色の板金鎧で覆い尽くしている——磨き上げられて光るような普通の騎士甲冑ではない。


ずっしりとした、製法そのものがすでに失われた古代の板金鎧で、露出しうる肌の隅々までも覆っていた。


胸甲には細かい銘文が刻まれている。


しかし、色が甲冑そのものと溶け合っていて、よく見なければほとんど読み取れない。


兜は顔全体を覆い、ただ両目の位置にだけ、細長い二筋の観察孔が開けられている。


その奥から、かすかな幽光が漏れていた。


彼らが跨る戦馬も、同じ装備だった。


馬の頭には面甲、首には頸甲が装着され、四肢と腹まですっぽり装甲に覆われている。


このフルアーマーの戦馬には、敵が狙える弱点など一切存在しなかった。


騎兵は一人ひとり、騎兵槍を手にしている。


見た目は、ただの騎兵槍だ——鉄の柄に、金属の穂先。どこにでもある規格品。


だが手に取れば違いが分かる。


普通の騎兵槍よりずっと重い。


その重みは武器の分厚さから来るのではない。


素材自体が重いのだ——通常の金属と比べ、密度が桁違いに高く、鍛冶の技も極限まで磨き上げられている。


つまり、この槍は、刺突に使えるだけではない。


一本の重い棍棒として、衝撃力だけで敵を打ち砕くこともできる。


これは私が想像で生み出した兵種ではない。


グリンマンランク帝国に、かつて実在した兵種だ——


鉄甲聖騎兵。


かつて迷宮で召喚した鉄甲聖騎兵たちと比べ、今の彼らは戦場の気配に強化されたように、さらに恐ろしさを増していた。


帝国最強の歩騎兼用兵種。


一騎で百を相手にする伝説級の存在。


帝国の史書に名を残しながらも、帝国滅亡ののち、訓練法も召喚法もすべて失われた。


今の人間が知っているのは、それが歴史上、確かに存在したということだけだ。


そして、私の目の前に立っているのが二十騎。


ヘレナが言葉を失った。


彼女は戦争学を修めた人間だ。史書を読み、古代の戦例を研究してきた。


鉄甲聖騎兵が何であるかは、もちろん知っている。


だが、知っているのと、目の当たりにするのとは、まるで別の話だ。


「これは……鉄甲聖騎兵、なの? クローディア」


母の声が、ずっと軽くなっていた。


「はい、母さん」


私は答えた。


「もしかして、ご存じでした?」


「知ってるわ」


彼女は頷いた。


「……やっと分かった。どうしてあなたが、あんなに自信満々だったのか」


母はそれまで、娘が才覚に恵まれすぎたゆえの、若さゆえの驕り——誰よりも強いという直感的な自信の類だろうと思っていた。


だが、二十騎の鉄甲騎兵が虚空から形を成すのを目の当たりにした瞬間、彼女の内にあった「娘は少し無謀かもしれない」という疑念は、一瞬で消え去った。


無謀ではない。


本物の、切り札だ。


しかも、自分が再評価しなければならないレベルの。


グリンマンランク帝国の剣に対する彼女の認識は、この瞬間に書き換えられた。


いささか脅威的な伝説の武器、という枠から、戦場の構図そのものを変えうる戦争の神器へと。


二十騎の鉄甲聖騎兵は、すでに私たちの周囲に姿を定着させ、命令を待っていた。


二十頭の甲冑馬が蹄を軽く掻き、低い金属の打ち合う音を響かせる。


まるで抑えきれない期待を滲ませるように。


私は騎兵たちを見回した。


鎧一式で五十キロ超。甲冑を着けた戦馬は一頭百五十キロ近い。


それが二十騎——動く鉄壁だ。


ただし、一つ問題があった。


私、馬に乗れない。


前世から今生まで、まともに乗馬を習ったことは一度もない。


ましてや戦闘状態で戦馬を御す経験など、あるわけがない。


今ここで跨って突撃したら、敵に当たるより先に、自分が落馬するのがオチだ。


だから私は、当然のごとく別の選択肢を取った。


騎兵の一人の馬に飛び乗り、そのまま彼の肩に攀じ登って、どっしりと腰を下ろした。


でっかい鉄の缶詰めが、背中に小さな鉄の缶詰めを載せている構図だ。


その分厚い鉄の肩に座れば、地上に立っているときより、ほぼ二人分高い視界が得られる。


私は手を伸ばして兜の縁を掴み、安定した支えを見つけた。


下の騎兵は微動だにしない。この程度の重さは、彼にとってまったく問題にならないらしい。


「母さん、出発するよ。早く乗って!」


まだ呆けたままの母に、私は声をかけた。


ヘレナは我に返り、別の騎兵の馬に飛び乗った。


横向きに鞍に座るその姿は、まるで戦場に向かうのではなく、晩餐会に出席するかのように優雅だった。


私は城門の隙間から、外をひと目覗いた。


悪魔兵士たちはもう、城壁のすぐ近くまで迫ってきている。


一番前の数体からは、かすかに足音まで聞こえるようになっていた。


軍靴のような整った音ではない。


引きずるような、重たい、何かが無理やり歩き続けているような音だ。

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