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156. 氷の鎖

 私は指を鳴らした。


 その音は大きくはない。


 澄んだ乾いた音が、ブリキの倉庫のなかで一つ弾けて、すぐに散った。


 だが、すぐ後に現れたものが、倉庫全体の気温を一瞬で二度ほど引き下げたかのようだった。


 寒気が先に来た。


 皮膚の表面から直接筋肉の奥へ食い込むような冷たさ。


 それから光——白く、氷青色の内光を放つ鎖が、私の指先から、一秒ごとに目で追える速度で、四方向へと射出された。


 鎖の形状は一環が一環に連なり、氷結晶の質感を持っていた。


 光がその上で砕けた角を折り返し、影のなかにぶつかって、鋭い、金属が凍てついたあとに砕けるような音を立てた。


 四つ。


 四人が、暗がりから直接引きずり出された。


 足が地面につかないまま、鎖に腰を鉤づられ、光のなかへ引き込まれ、一列に並べられた。


 彼らの表情は想像通りだった。


 動揺。


 本物の動揺。


 映画に出てくるような悲鳴ではなく、筋肉の反応が脳の判断に追いつかない状態だ。


 手にはまだ刃物が握られていた。


 だが刃は振り下ろされていない。


 あの鎖が彼らの刀より一拍分以上早かったからだ。


 彼らが反応を始める暇すら与えられず、引きずられてきたのである。


 一人が山刀で鎖に一太刀浴びせた。


 本気で振り下ろした一撃だった。


 だが刃が当たって弾かれ、何も起きなかった。


 鎖には一本の傷もついていない。


「部下を何人か、お届けします」


 私は少しだけ首を傾げ、彼を見た。


 先ほど取引相手かと尋ねたときと変わらない、平坦な声で。


 あの横にも縦にも目立つ男の顔が、この瞬間に一連の色変わりを経ていった。


 冗談が過ぎたという冷めから、何事だという驚愕へ、そして最後には静まり返った。


 長くグレーゾーンに身を置いてきた人間だけが持つ、自分の認識範囲を超えたものに対する直感的な畏怖である。


 彼は理解した。


 目の前にいる、腰の高さまでしかない小娘は、普通の人間ではない。


 いや、人間ではない。


 彼は俯き、あの箱を開けた。


 ――――――――――――――――


 中身は数丁の小銃だった。


 旧式で、型番は私には馴染みがない。


 だが沖田が歩み寄り、一丁を手に取って、ひととおり弄り、ボルトを引いて引き金を引いてみて、問題がない様子を見て、元に戻し、頷いた。


 沖田が頷いたということは、問題がないということだ。


 私が沖田の判断を信頼しているのは、彼の人柄がいいからではない。


 彼自身これまでにそういう品物で痛い目を見てきたからだ。


 不良品を紛れ込ませるようなことはしない。


 もともとは新型が欲しかったのだが、規制が厳しく、沖田から旧式に切り替えてもよいかと相談されていた。


 少し考えて、了承した。


 型番はこちらにとって重要ではない。


 持ち帰った上で分解・研究を行うのが目的であり、そのまま実戦運用するものではない。


 あの男は結局、最後まで口を開かなかった。


 だが最初のあの威勢は、もう七、八割方抜けていた。


 彼はそこに立っていたが、入ってきたときより半頭分ほど低く見えた。


 本当に背が縮んだわけではない。


 自身の拠り所となっていた根拠を失った時、自然と見せる態度の変化に過ぎない。


 最終的に価格が決まった。


 当初の予定より一回り安く収まった。


 魔法を目の前で披露してしまった以上、隠すことももうできなかった。


 私は右手を挙げ、手首の収納手環に軽く触れた。


 あの箱が消えた。


 縮みながら消えるのでもなく、誰かに運び出されるのでもない。


 そこにあったものが、ただ消えただけだ。


 一筋の残像も残さずに。


 男はその場に立ち尽くし、床の上の空気を見つめて、長いこと黙っていた。


 それから我に返り、さきほどの尊大な面構えとはまるで違う笑顔を張り付けた。


 親切で気さくで、少し媚びの混じった笑顔で私たちを倉庫の入り口まで送ってくれた。


「またのご利用を」を何度か繰り返し、腰を折る角度は入ってきたときより数度高かった。


 ――――――――――――――――


 ブレン関門は、このとき雪が降っていた。


 その雪は時節外れだった。


 初秋の関門地帯は、まだ雪が降る気温まで下がっていない。


 だが北側の山風が前日から吹き込み始めていて、得体の知れない寒気を運んできていた。


 何かが前触れとしてやってきたような、そんな寒さだった。


 関門を守る兵士が要塞の外壁に立ち、山の麓に広がる陣営の火を見下ろしていた。


 あの火は数ヶ月前から現れ始めたものだった。


 最初は数十箇所、それが次第に増え、やがて山道の両側に敷き詰められ、果てが見えないほど伸びていた。


 指揮室に立っていた男の名はプロソー。


 ブレン関門の守将で、エリクソン公爵領に二十三年仕えていた。


 それなりに経験を積んできた。


 だが今回、窓から下を眺めて一巡考え、その結論を飲み込んで顔には出さなかった。


 ——正面から持ちこたえるのは無理だ。


「今すぐ公爵様へ急報を」


 彼は副官に向き直り、声は表情より安定していた。


「敵軍が動き出した」


 副官が頷いて出ていく。


 石畳の上を踏む足音が次第に遠ざかった。


 窓の外、あの火がゆっくりと動き始めた。


 風に押されて流れる松明の海のように、山道の方へ、一歩ずつ、上へと迫ってくる。


 プロソーは両手を背中に組み、そこに立って、見つめていた。


 心のなかでそっと計算した。


 連合軍側、ハインツのグリーン領三万五千、シヴァ公爵二万、それにヴァロー子爵の海軍が別方向から圧力をかける。


 全体の局面は、もはや関門の地形に拠って守りを固める程度で解決できるものではない。


 だが彼はその窓から離れなかった。


 まだ見ていた。


 ――――――――――――――――


 アムニット城、公爵邸。


 急報が届いたのは午後のことだった。


 伝令は馬で二本の脚を使い果たし、書斎に入ってきたときは礼もせず、封筒を差し出したまま、そこに立って肩で息をしていた。


 父が受け取り、展開し、読み終え、およそ三呼吸のあいだ沈黙してから、手紙を机に置き、指で紙の角を押さえ、私を呼ぶよう命じた。


 私が書斎に入ったとき、アルフレッドは机の奥に座っていた。


 手元にあの手紙、脇に関門の地形図が広げられ、図の上にはインクで数箇所が記されていた。


 いくつかの印は新しく、墨がまだ乾ききっていない。


 彼は書類のコピーを私に差し出した。


 先に口を開かず、ただ私を見ていた。


 受け取って、頭から眺めた。


 グリーン公爵、ハインツ・フォン・ハーランド。


 この名前が情報に出た瞬間、私の心にはすでに基本的な判断ができていた。


 皇帝エイドリアンは自ら手を下さない。


 だが彼は弟を差し向けてくる。


 掲げる旗印は「虐げられたエリクソン人族の解放」。


 この理屈を持ち出す狙いは、異種族であるアルフレッド公爵が人族代理人を立てて統治するという正当性を根底から覆すことにある。


 皇帝のこの手は、老獪だった。


 自らの手を汚さず、諸侯の力を借り、大義名分をきれいに整える。


 攻めれば攻め、引けば知らぬ存ぜぬで通せる。


 私は書類を置き、顔を上げた。


「父上、これは本気で受け止める必要があります」


「わかっている」


 彼の声に慌てはなかった。


 ただ、盤面が確かに悪くなっているのを冷静に見つめるような、そういう穏やかさだった。


「どう見る?」


 私は地形図を手元に引き寄せ、しばらく見下ろして、ブレン関門の位置で指を止めた。


「ブレン関は天険です。ですが天険は三倍の兵力差を止めきれません——相手が人命で埋めてくるなら、時間が経てば守る側が先に持ちません」


 指を別の場所に移した。


「問題は関門だけではありません。側面です。ヴァロー子爵の海軍が回り込んで港から上陸すれば、我々の意表を突く位置で突破口を開かれます」


 父が私を一瞥した。


 その眼差しは知っているものだった。


 疑っているのではなく、ただ私の話があなたの考えと同じかどうか確かめたいだけだ。


「うむ」


 彼は頷いた。


「ゆえに今度は、一家総出になるかもしれん」


 私は地図を元の位置に戻し、深く息を吸った。


「御意のままに」


 そう言ったとき、所作は正確だった。


 膝を折り、頭を下げ、両手を腰の前で組む。


 だが脳のなかで回っていたのはその動作そのものではない。


 この戦が始まれば、アムニットの魔法学院は休講になり、徴募令が下り、領地全体が静寂から別の状態へと変わる。


 誰もが感じ取れる、頭上にぶら下がる重圧——そういう状態へ。


「すまない、娘よ」


 父の声で顔を上げた。


 彼は机の奥に座り、白髪を後ろへ撫でつけている。


 顔に浮かんでいるのは公爵として議事にあたるときの端正な表情ではなく、別のものだった。


「このような小さな子を巻き込んでしまって」


 一拍置いて。


「これは本来、私が望んだことではない」


 この言葉が刺さってきたとき、私は一瞬呆然とした。


 それから込み上げてきたのは、とても複雑な何かだった。


「父上」


「うん?」


 私はそこに立ったまま、すぐには口を開かなかった。


 一つ、言いたいことがあった。


 ずっと前から考えていた。


 ただ、いい機会がなかった。


 怖いからではない。


 毎回口を開こうとするたびに、もし私が言ったら、二人はどう思うだろう、というところで止まって、その息を飲み込んできたからだ。


 だが今日、この「このような小さな子」という一言が、その扉を少し押し開けた。


「父上」


 私は息を整えた。


「母上が戻られたら……お話ししたいことがあります」

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