153. 悪夢の始まり
家に帰ってから、私とユーナは銀行で起きたことをジンさんに全部話した。
できるだけ落ち着いて話した。重要な部分だけを選んで、言葉は抑えた。
それでも話しながら、あのとき胸に押し込んだ何かがまだ消えていないのを感じた。
どこかにくすぶったまま、完全には散っていない。
ユーナは私の隣に座って、指が無意識にカップの縁をつまんでいた。
何も言わず、ただ私が細かい部分を語るとき、ときどき小さく「うん」と相槌を打って、証言代わりにしていた。
ジンさんはソファの向かいに座って、最初は静かに聞いていた。表情はまだ落ち着いていた。
でも私がその経理の男がパスポートを投げ捨てた話をした瞬間——
彼女はソファから跳ね上がった。
その動作はあまりにも素早くて、私とユーナは二人同時にぽかんとした。
「なんだって?」ジンさんはその場に立って、目を丸くして、信じられないという顔をしていた。「あの人があんたたちにそんな態度を取ったのかい?」
彼女の声は大きくはなかった。でもその気迫に、リビングの空気がぎゅっと締まった気がした。
私とユーナは顔を見合わせた。
「ええ」私は頷いた。
ジンさんは深く息を吸って、それをどすんと吐き出した。
それから体を向き直して、声のトーンはすでに私たちへの相談ではなくなっていた——
「行くよ。あたしがあいつと話をつけてやる」
私はその場に立って、ユーナを見た。
ユーナは口の端をほんの少し持ち上げた。
意味深な弧。
目には期待の色と、野次馬根性が少し滲んでいた。
その頃、銀行の中では。
あの経理の男は自分の椅子に座っていた。
フェイクレザー張りの、背もたれの高い、肘掛けの広い椅子。
座ると、なんとなく貫禄があるように見える——少なくとも本人はそう思っていた。
彼は椅子の背に寄りかかって、指でデスクの表面をぱたぱたと叩いていた。
唇の端に、ゆったりとした笑みが浮かんでいた。
今日は、悪くない一日だったと感じていた。
あの二人の外国人の小娘を追い出したのも、大ごとにならずに済んだ。
静かに、きれいに。
むしろうまく処理できたとさえ思っていた。
十二か三歳くらいに見えた二人の女の子。服は悪くなかったが、差し出されたパスポートを見れば——花の国。
その瞬間、彼の中で答えは出た。
このあたりは昔からの住民ばかりで、外来人口もそもそも少ない。
外国人が口座開設に訪れるなんて、なおさら珍しい。
それにあの年頃の子供に、いったいいくらのカネがある?
仮に手続きしたとしても、年間の管理コストが採算に合わない。
相手にする気など、端から湧かなかった。
「外から来た人間は、自分の立場をわきまえなきゃな」彼は誰にともなく独り言を言った。
低く、断定的に、まるで誰も異論を挟まない常識を確認するように。「偉そうにしてもらっても困る」
あの白髪の女の子がパスポートを床から拾い上げたときの顔を思い返した。
泣かず、騒がず、ただ無言でかがんで、パスポートをしまって、振り返らずに出て行った。
彼はそれを当たり前だと思っていた。
自分の認識の中で、それは「空気を読む」ということだった。
窓の外に午後の陽光が差し込んでいた。
彼は目を細め、ぼんやりとホールを眺めてから机の茶碗を手に取り、一口啜った。
それから、彼の頭の中は自然と、彼をいちばん安心させる事実へと流れていった。
この支店の預金プレッシャーは、近くの他の窓口と比べて格段に小さい。
理由は少し切ない話だ——このあたりは古いマンションの古い住民ばかりで、収入も高くなく、預金額も上がらない。
本部が目標を設定するときも、そのあたりは考慮に入れていた。
でも彼のノルマは、もうとっくに達成済みだった。
それは彼の腕のよさとは関係なく、ある一組の老夫婦のおかげだった。
近くの古いマンションに住む、見るからに普通の定年退職者の夫婦。
毎日買い物をして散歩をして、近所の顔なじみと世間話をして、何の変哲もない暮らしをしている。
ただ、二人がこの支店に預けている総額は、本店から課せられた預金ノルマの 10 倍に相当する額だった。
彼はその老夫婦の経緯を大まかに把握していた。
二人は若い頃この辺りで初めて仕事に就き、貯金をしてこの地に一戸建てを購入した。
その後転勤でここを離れ、数十年間あちこちを転々とし、定年退職を機に再びこの場所へ戻ってきた。
当時の不動産価格は今ほどではなかったが、彼らが選んだそのマンションは立地がよく、緑も多く、老後を過ごすには申し分なく、だから戻ってきた。
彼らと一緒に戻ってきたのが、あの桁外れの預金残高だった。
初めてその数字を見た支店長ですら、しばらく固まったと聞いている。
その金は、秤の皿にどっしり乗った石のように、彼の日常を別格なものにしていた。
窓口に並んでいるおじさん、おばさんに愛想笑いをする必要もない。
毎月末にノルマが足りないと焦る必要もない。
何もしない客に延々付き合う必要も、ない。
必要なことは一つだけ。
あの老夫婦に気持ちよくいてもらう。
彼らが不満を持たないようにする。
あの預金を他の銀行に移されないようにする。
それさえできれば、彼の椅子は磐石だった。
あと数年積み上げれば、支店長の椅子だって夢ではない。
茶碗をデスクに戻して、目を細めて、窓の外の光を眺めた。
先週あの老人が来たとき、投資信託を少し検討しているから意見を聞かせてくれと言っていた。
彼はすでに三つのプランを用意していた。
老夫婦が次に来たとき、準備万端のセールストークを一気に披露する。
誠実を装い、顧客のことを真剣に考えているように聞こえる言葉を並べて、自分を「良い経理」として演出する。
デスクの上のボールペンをもてあそびながら、口元の笑みをさらに深めた。
この日々、悪くない。
彼がそうやって白昼夢に浸っていたちょうどそのとき、ホールの入り口のガラスドアが押し開かれた。
私が先頭に立ち、ユーナが右斜め後ろ、そしてむかっ腹を立てたジンさんが、私たちの誰よりも速い足取りで、一番前を歩いていた。
ドアが開いた瞬間、冷気が顔に当たって、外の熱気を敷居の外側に切り離した。
私はホール全体に目をやって、視線を習慣的にいくつかの要所に落とした——警備員の位置、窓口スタッフの配置、そして——
あの経理の男の個室。
すりガラスの仕切りとブラインドが半開きになっていて、その隙間から彼が椅子に座って、背もたれに寄りかかっているのが見えた。
何かを楽しんでいるような様子だった。
私は視線を元に戻して、ジンさんの後ろをついて歩いた。
あの経理の男はすぐに私たちを認識した。
正確には、先にジンさんを見た。
そしてその顔の表情が、笑ってしまいそうなくらいの速さで切り替わった——気だるい無表情から、満面の笑みへ。
まるでスイッチを押した機械みたいに。
彼は椅子から立ち上がり、軽い足取りでこちらへ向かってきた。
その愛想の良さは、先ほど私が想像した、椅子に寄りかかって一人で何か言っていた姿と、まるで別人のようだった。
「あら、ジンさん、今日はどうしたんですか、急に」歩きながら笑って、声に職業的な熱っぽさがある。
「先日ご提案した投資信託、ご検討いただけましたか?」
そして彼の視線が、避けようのない形で私とユーナに落ちた。
私は彼の目が変わるのを見た。
その一瞬、顔の笑みは消えなかった。でも笑みの中身が変わった。
あのにこやかさと愛想の良さが、何かに内側から引っ張られたように固まって、宙吊りになって、一枚の貼り付いた表情になった。
彼は私たちのことを思い出した。
白い髪の女の子。ピンクの髪の女の子。
午後に追い出したあの二人だ。
私は彼と、二秒ほど目を合わせた。
何も言わなかった。ただ静かに彼を見ていた。
彼の笑みは、もう持ちこたえられなくなって、口の端で固まったまま、次第に険しい色へと変わっていった。
「あんたたち、またなんで来たんだ」
声が低くなった。露骨な苛立ちが滲んでいた。
「業務は扱えないって言っただろう。さっさと出て行け」
ホールの数人の客が顔を上げて、こちらの様子をそっと窺い始めた。
私は動かなかった。
ユーナも動かなかった。
彼は二秒待って、私たちがまったく動じないのを見て、眉間にしわを寄せて、左手を振った。
「警備員、この二名のお客様をご退場いただいてくれ」
隅から濃い色の制服を着た二人の警備員が出てきて、足並みを揃えて、こちらに近づいてきた。
私はその場に立って、彼らの迫ってくる足音を感じながら、妙なほど心が凪いでいた。
たぶん、わかっていたから。
今度は、このままで終わらない。




