151. 帰ってきた食卓、橙の炎
夕方があっという間にやってきた。
この一日は、思っていたよりずっと早く過ぎてしまった。
個室での時間から、ユーナの前世の家から、そして今まで——何かが起きたような気もするし、それでいて、すべてがまばたき一つの間に過ぎ去ったような気もする。
夕飯は家で食べることになった。
これは別に誰かが決めたことじゃない。
ジンさんとホンさんが、外で食べる気になれなかっただけのことだ。
地球で買い物をするという行為は、私にとって相変わらず不思議な進化を遂げていると思える。
スマホで数回タップすれば、一、二時間以内に食材が玄関まで届く。
出かける必要も、値切る必要も、あれこれ選ぶ必要もない。
すべてを代わりにやってくれる。
その流れを眺めていると、感慨なのか何なのか、よくわからないものが胸の奥で動いた。
エリクソン領では、野菜を一籠買うだけで市場まで出向かなければならなかった。
雨の日は道が滑って、露店の売り声がうるさくて、値段を比べながら歩くのは日常茶飯事だ。
二つの世界の差は、そういう一番身近なところに表れることもあるんだな。
料理をすることになったのは、当然私だった。
説明するまでもない。
前世の三十年間、私はずっと自炊をしていた。子供の頃から福利院で暮らしていたから、そこの食事の質は期待できないので、できるだけ自分で作っていた。【福利院:児童養護施設。中国語圏での孤児院に相当。】
異世界に来て、クローディアの公爵邸には料理人がいるけれど、それでも時々台所に入って何かを作る。
あの習慣は直らない。
ユーナも台所には入るけれど、彼女は横に立っているだけで邪魔をするタイプだ。
悪気があるわけじゃない。
本当に手つきが不思議なんだ。
一度エリクソン領で、彼女が野菜を切るのを手伝って、大根を三角形に切り終えてから、真剣な顔でそれを眺めていたあのことがあった。
だから彼女は、自分から進んでホンさんとジンさんを散歩に連れ出した。
「換気が必要だから」って言って、私が台所で静かに料理を終えられるように、邪魔が入らないようにしてくれたんだ。
実は私は知っている。
彼女がそうしたのには、もう一つの理由がある。あの二人の老人と、もう少しだけ二人で過ごしたかったんだ。
今日、正体がばれたとき、たくさんのことを話した。でも、まだ消化しきれていない感情もたくさんあるし、ゆっくり話せていないこともたくさんある。
彼女にはその時間が必要で、ホンさんとジンさんにも必要なはずだ。
台所は割と古い造りだった。
作業台は十分に広くて、包丁の並びも揃っている。
調味料の位置は昔のままで、コンロは古いタイプで、点火するときは少し回してから押さなきゃいけない。
私は勝手知った手つきで冷蔵庫を開けて、届いた食材を取り出して、今日作る料理をざっと頭の中で組み立てた。
白切鶏は作らない。昼間にレストランで食べたばかりだ。
老火湯の一鍋を作った。【老火湯:広東式のスープ。弱火で数時間じっくり煮込む。 】
弱火でじっくり煮込むタイプで、とうもろこしと人参と豚骨を使って、枸杞をひとつまみ加えて、鍋に蓋をして、味が出るのを任せた。【枸杞:クコの実。中国料理のスープ等によく使われる。 】
時野菜を二品炒めた。
生姜とニンニクを香りが出るまで炒めて、塩と生抽で味を整える。
シンプルだけど、火加減のコントロールが大事だ。一度水気が出ると、味が抜けてしまう。
最後に清蒸魚を一尾作った。
葱の千切りと生姜の薄切りを並べて、蒸し器に入れる。蒸し上がったら、熱々の油をジュッと回しかけて、生抽を回しかける。【生抽:薄口醤油。中国料理で使われる調味料。 】
そのジュッという音がした瞬間に、魚の生臭さは消えて、香りが立つ。
これだけの料理を並べても、複雑なものじゃない。
でも一品一品に、少しずつ気を使うところがある。
私は台所に立って、鍋を見ながら、あるとても穏やかで、とても心地よいものが心の中で揺れているのを感じていた。
この感覚は久しぶりだ——エリクソン領で忙しくしていたあの充実感でもないし、花の国で各種手続きを処理していたあの張り詰めた集中でもない。
とても日常的で、とても家庭的な穏やかさだ。
まるで、ずっと鍵がかかっていたはずの部屋のドアに、誰かが鍵を差し込んで、そっと回したみたいに、ドアが開いたんだ。
およそ一時間が過ぎた頃、向こうの方から物音が聞こえてきた。
廊下の足音と低い話し声だ。
そして鍵を回す音がして、ドアが開いた。
私は台所の扉のところに立って、外を覗いた。
ホンさんとジンさんが先に立っていて、ユーナがその後ろについてくる。
彼女の手には小さな紙袋が下がっていて、中が膨らんでいる。何が入っているのかはわからない。
三人の表情は、出かける前とは少し違っていた。
ずっと隠していた何かを話したあとにしか出てこない、あの「解放感」が少しだけ加わっていた。
ジンさんが中に入ってきて、食卓に並べられた料理を見て、最初はぽかんとして、それから顔全体に、とても優しくて、隠しきれない喜びが広がった。
「ロン……クローディア、あんたが作ったのかい?」
「ああ、ただの家常菜だけど。早く座って」【家常菜:家庭の日常料理——レストランのような派手な料理ではなく、家で普段から食べるシンプルなおかずのこと。】
彼女は食卓に近づいて座ると、その鍋のスープを覗き込んで、中の香りを吸ってから言った。
「このスープ……とうもろこしと人参と豚骨のスープね」
「ああ」
「覚えてたんだね」
彼女は言葉を続けなかったけど、私にはわかった。
ずっと昔、彼女の家で飲んだスープのことだ。
あの頃はジンさんが作ってくれた。このスープは骨にいいから、もっと飲みなさいって言ってくれた。
それ以来、私はその味を覚えていて、自分でも作れるようになったんだ。
私は何も言わず、彼女に一杯分をよそった。
スープの色はほんのり黄色で、透き通っていて、表面に油の粒が少し浮いている。
湯気がもくもくと立ち上っている。
ユーナが横に座って、最初にあの清蒸魚をじっと見て、それから箸を伸ばそうとして——【清蒸魚:魚の蒸し料理——下処理した魚を生姜とネギと一緒に蒸し、仕上げに熱した油と醤油をかける広東の家庭料理。魚の鮮度が一番大事。】
「手を洗いなさい」
私とホンさんが、ほとんど同時に口を開いた。
ユーナの箸が空中で止まって、それから彼女は顔を上げて、私とホンさんを一度ずつ見て、まあいいかっていう顔をして、箸を置いて、洗面所に向かって立ち上がった。
ホンさんは椅子に座ったまま、その様子を見て、口元を少し動かしてから、うつむいてスープを一口飲んだ。何も言わなかった。
あの夕飯は、とても静かなものだった。
特別な話はなくて、時折ジンさんが「この魚、蒸し加減がいいね」って言って、ホンさんが「スープが美味しい」って言って、ユーナが「ご飯、もう一杯」って言って、それだけで、食卓の料理をきれいに食べ終わった。
窓は少しだけ開いていて、下の通りの音がかすかに聞こえてくる。
夜風がカーテンを少し持ち上げては、また降ろす。
この夕飯のことは、後でずっと考えていた。
なぜこんなに印象に残っているのか、自分でもよくわからない。
たぶん、それがあまりにも普通だからだ。
普通すぎて、ある種の答えみたいになっている。
何年も前から戻りたいって言っていた場所っていうのは、実はこういう食卓のことで、こういう熱々のスープのことで、こうやって一緒にいるあの静かな時間のことなんだって。
夕飯のあと、ジンさんが皿を下げて、早めに休むように言った。
エイの部屋はもう準備してあるって。
ベッドには新しいシーツを敷き替えて、掛け布団も今日干したばかりのものだって。
ユーナがそのドアを開けたとき、彼女は入り口でぽかんと立ち止まった。
部屋の造りは、彼女が出て行ったときと同じままだった。
机の位置、タンスの向き、壁にかけてあった鞄掛けのフック、そして窓際の小さな置物もまだそこにあって、ただ表面に薄っすらと埃が積もっているだけだった。
誰かが拭いた跡があって、丁寧に拭かれていた。
彼女はそこに立ったまま、すぐには入っていかない。
私は彼女の後ろに立って、急かさなかった。
彼女はうつむいて、肩を少し動かして、それから息を吸って、中に入っていった。
彼女は部屋の中を一周して、指先で机の端をそっと撫でて、それからタンスの取っ手にも触れて、これが夢じゃない現実なんだっていうことを、触覚で確認しているみたいだった。
それから彼女はタンスを開けて、しばらく探して、その中から、きれいに畳まれたパジャマを一着取り出した。
それを胸に抱えて、顔を埋めて、何も言わなかった。
そのパジャマは新品だった。
予備のやつで、元々のやつは十数年も誰も着ていないから、とっくにダメになっていた。
でもデザインは同じで、色も同じで、畳み方までジンさんの癖と同じだった。
左を右に、二回折って、きれいに押さえるやつだ。
彼女はそこにしばらく立っていて、それから顔を上げた。
目尻が赤いけど、彼女は笑っていた。
嗚咽を堪えた、本物の笑顔だった。
私は手環から取り替えのパジャマを取り出した。
淡い青のシルクのタンクトップタイプのやつだ。
着替えて、ベッドに入った。
ユーナも着替えて、ベッドに入ってきて、私の隣に並んで寝た。
二人とも、すぐには何も言わなかった。
天井の電気は消してあって、窓の外から街灯の橙色の光が少しだけ差し込んでいて、部屋全体をとても柔らかい色に染めている。
しばらくして、私は横を向いて、彼女を見た。
「ユーナ、今日は楽しかった?」
彼女は声を聞いて、こっちを向いた。
彼女の目は、あの橙色の光の中で、少しだけ輝いて見えた。
彼女は一本の指を伸ばして、指先に小さな火の玉を灯した。
橙色で、ポスターが揺れていて、外の街灯の色とほとんど同じだ。
彼女はその指を高く掲げて、火の玉をじっと見つめて、数秒してから言った。
「うん、もちろん楽しかったよ」
彼女は言葉を少し止めて、口元を少しだけ上げて、「今日は、私が目覚めた日なんだよね」
その火の玉が彼女の指先で一つ揺れて、それから消えて、空気の中に散っていった。
部屋の中がまたしばらく静かになった。
それから私が口を開いた。
声は、自分が思っているよりずっと小さかった。
「ユーナ、やっぱり……ここに残って、ご両親と一緒にいたらどうかな」
ユーナはすぐには答えなかった。
彼女は体を起こして、ベッドの上に座って、うつむいて、私をちらりと見た。
その表情は少し変で、私が本気で言っているのかどうかを判断しようとしているみたいだった。
「どうしてそんなこと言うの。まさかクローディアが私のこともういらないとか言わないでしょうね?」
「違うよ」私は言った。
「ただ、ご両親とずっと会えなかったんだから、やっぱりここに残って……」
「いや、嫌だ」
彼女はきっぱりと遮った。迷いはなかった。
口調は穏やかだけど、内容は確固たるものだった。
駄々をこねているわけじゃない。本当に考え抜いた上での答えだった。
「パパとママと一緒にいられるのは嬉しいけど、今の私にはアムニット市で私の生活があるから、それも諦めたくないの」
彼女はこの言葉を言い終えて、少しだけ間を置いて、それから付け加えた。
「それに、クローディアがそこにいるんだもん」
最後のこの言葉は、とても小さな声で言ったけど、ちゃんと言った。
私は返事をすることができなかった。
喉の奥に何かが詰まっていて、動けなかった。
それから私は考えて、本当の心配事を口にした。
「でも、ここにはご両親がいるのに……」私は言った。
「こっちには、世話をする人がいないでしょう」
ユーナは私をちらりと見た。
私が遠回しに何を言おうとしているのか、だいたいわかったんだろう。
彼女はため息をついたけど、苛立った様子はなくて、真剣な表情で言った。
「パパとママのことなら、説得するつもりだよ。一緒にエリクソン領に来て暮らそうって」
私はぽかんとした。
「一緒に来る?」
「うん。クローディアもそう思ってたんじゃない?」
私は何も言わなかった。
でも心の中では、確かにそう思っていた。
福利院:児童養護施設。中国語圏での孤児院に相当。
老火湯:広東式のスープ。弱火で数時間じっくり煮込む。
枸杞:クコの実。中国料理のスープ等によく使われる。
生抽:薄口醤油。中国料理で使われる調味料。
清蒸魚:魚の蒸し料理——下処理した魚を生姜とネギと一緒に蒸し、仕上げに熱した油と醤油をかける広東の家庭料理。魚の鮮度が一番大事。
家常菜:家庭の日常料理——レストランのような派手な料理ではなく、家で普段から食べるシンプルなおかずのこと。




